コロナ禍の寄席の危機を救った 瀧川鯉八がトリを務めた新宿末広亭1月下席の熱気

新宿末広亭でトリを務めた瀧川鯉八(19年10月の真打ち昇進披露興行)
新宿末広亭でトリを務めた瀧川鯉八(19年10月の真打ち昇進披露興行)

 コロナ禍で活気を失っていた寄席演芸界に久々に明るい話題があった。新宿末広亭1月下席(21~30日)の夜の部。昨年に真打ちに昇進した瀧川鯉八の昇進後初のトリを務めた興行が大盛況となった。

 1月8日に緊急事態宣言が再発令され、通常の公演より1時間早い、午後8時に終了。座席数も全体の50%に制限されたが、そんな逆風もモノともせず連日“満員”の客入り。終盤の29日、30日では満員で“札止め”となった。

 例年ならば、各寄席が満員でごった返す正月初席(1~10日)、二之席(11~20日)も今年は、客入りが芳しくなかった。昨年から続くコロナ禍でメインとなる年配客の足が遠のき、各寄席は苦戦を強いられてきただけに、特筆すべき興行になった。

 鯉八は、独特の世界観を持つ新作落語が評価され、二ツ目時代に柳亭小痴楽、講談師・神田伯山ら11人でユニット「成金」を結成し活躍する一方、春風亭昇々、立川吉笑、浪曲師・玉川太福と4人組の創作話芸ユニット「ソーゾーシー」で活動するなど新進気鋭の若手真打ち。客層も若く真打ち昇進の披露目での動員も評価されて、昇進後“最速”となる1月下席のトリを務めたが、落語芸術協会関係者によると、実は鯉八の志願だったという。

 もちろん、席亭がトリに値すると評価しなければ実現しないが、若手の起用を模索している時に率先して手を挙げた形だ。興行前に鯉八は「若いお客さんを呼ぶのには、一番自分が適任じゃないかと思っていたので、力になりたいと思いました」とコメントしていた。

 実際、2日目と9日目に足を運んだが、若い女性が多く通常の寄席とは違う景色があった。2日目は閉塞感を打ち破ってくれるのではと期待する空気を感じたし、札止めギリギリで飛び込み立ち見となった9日目には、新しいスター誕生を期待する、客席に充満する強い熱気を感じた。

 寄席には、まるでラグビーのパスのように、出演者が次々とボールをつないでトリに向かって盛り上げていく流れがある。小痴楽も太福も、その流れを切らずにつないだ。また、通常寄席に出演できない立川流の吉笑も、その流れに乗る。そして若手だけでなく、ベテランの桂伸治や、代演の鯉八の師匠・瀧川鯉昇も若手に負けじと芸を見せる。寄席ならではの相乗効果もあった。

 直前に、落語協会の出演者にコロナ感染者が出た影響で、その時期、末広亭以外の寄席は休席となった。唯一、営業を続けた興行で、寄席の灯りを守ったことにもなった。鯉八は「寄席の救世主になりたいと思ったし、沈んでいるお客さんもいると思うで、みんなと一緒に誰かの救世主になりたい」と語っていた。不要不急とも言われるエンタメ界だが、そんな状況でも必要とされるものもあるはずだ。

 有言実行で文字通り寄席の救世主となった鯉八はこうも言っていた。「これを乗り越えた時に違う景色が見られると思うので、楽しみです」。本人だけでなく演芸界全体でも将来、ターニングポイントとして語り継がれる興行になったと思う。(記者コラム・高柳 義人)

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