7日最終回の悲劇の大河「麒麟がくる」が残したもの…史上初の年またぎ放送、波瀾万丈の14か月

スポーツ報知
14か月に及んだ「麒麟がくる」の旅をまもなく終える主演の長谷川博己。さわやかさの中に狂気もはらむ全く新しい明智光秀を演じ切った

 準ヒロイン女優の突然の逮捕による撮り直しに新型コロナ禍での3か月に渡る撮影中断。ある意味、主人公の明智光秀の生涯よりも波瀾万丈だったNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜・午後8時)が7日、起伏に富んだ1年2か月の放送を終える。

 同作は俳優・長谷川博己(43)を主演に据えた大河59作目。第29作「太平記」(1991年)を手掛けた池端俊策氏(75)のオリジナル脚本だった。

 「戦国時代最大のミステリー」と言われる本能寺の変の張本人である光秀を大河初の主役に据え、その謎めいた半生を描いてきた作品。ここまでの43話をかぶりつきでリアルタイム視聴してきた私にとっても「まだ見たい、見続けたい」という思いばかりがあふれる魅力的な物語だったが、同作の1年2か月の日々は最初から波乱含みだった。

 初回から当初予定の1月5日から2週遅れの19日スタート。準ヒロインの織田信長の正室・帰蝶役で出演予定だった沢尻エリカ(34)が19年11月に麻薬取締法違反で逮捕され、急きょ代役に川口春奈(25)を起用。沢尻の登場シーン10話分がすでに撮影済みだったため、序盤の大幅な撮り直しを余儀なくされたためだった。

 それでも「麒麟」は頑張った。初回に世帯別平均視聴率19・1%を記録。前作「いだてん~東京オリムピック噺」の初回15・5%を3・6ポイント上回るロケットスタート。近年では16年の「真田丸」初回の19・9%に次ぐ高い数字をたたき出した(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 思い出す笑顔がある。昨年1月、東京・渋谷の同局で開かれた木田幸紀放送総局長(当時)の定例会見。NHKの製作・編成の最高責任者は会見の3日前に放送された初回の手応えについて聞かれると、「大変いいスタートが切れたなと思っています」と満面の笑み。「放送開始が2週間遅れたにも関わらず、こんなにたくさんの方に見ていただいた。制作者、出演者、みんなホッとしているし、ありがたいなと思っているのではないかと思います」と正直に続けていた。

 その言葉通り、初回の同時間帯のライバル番組との横並び視聴率もテレビ朝日系「ポツンと一軒家」(日曜・午後7時58分)16・1%、日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」(日曜・午後7時58分)15・6%などを抑え、トップ。この数字を受けての局内の明るい雰囲気に、私は「NHKの空気を一変させた『麒麟がくる』の好発進…制作トップが1年ぶりに見せた心からの笑顔」と題したコラムを執筆。大きな反響があったことを昨日のことのように覚えている。

 しかし、王道大河として作品のクオリティーには文句なしの「麒麟がくる」を新型コロナウイルスという強大過ぎる敵が襲った。

 感染拡大防止のため、収録休止を余儀なくされたNHKは昨年4月7日の緊急事態宣言発令を受け、休止期間を延長。収録再開の見通しが立たないまま、撮影済みのストックがなくなってしまったため、同月15日、ついに放送休止を発表。6月7日放送の第21話まで放送し、翌週から4か月の放送休止に。撮影も4月1日から一時中止し、6月30日に約3か月ぶりに再開。結局、放送は6月7日の第21話で一時休止。8月30日の第22話からこちらも約3か月ぶりの再開となった。

 全44話の放送回は短縮せず、次回作の吉沢亮(27)が渋沢栄一を演じる「青天を衝(つ)け」の開始を2月14日まで遅らせ、2月7日までの放送に。大河ドラマの越年放送は93年7月~94年3月「炎立つ」以来27年ぶりだったが、1月スタート作品(1~12月の暦年制)の年またぎ放送は史上初だった。

 その間、来年には三谷幸喜氏(59)が「真田丸」以来の脚本を手がけ、小栗旬(38)が主演する「鎌倉殿の13人」、2023年にはグループ活動を休止した「嵐」の松本潤(37)が徳川家康を演じる「どうする家康」と2年先の放送の作品名まで発表されてしまう異例の展開となった。

 そもそも昨年7月24日開幕予定だった東京五輪期間5週間分の放送休止を予定していたため、例年より5話少ない設定だったが、新型コロナ余波で東京五輪は7月23日開幕と1年延期が決定。放送枠が空き、ここで5回分の不足も解消。例年通りの放送回を確保するという思惑まであったというが、すべては夢物語となった。

 最終盤の第40話以降、常に13%以上の好視聴率を記録するクオリティーながら様々な荒波に翻弄された「悲劇の大河」とも言える「麒麟がくる」への私の思いを正直に書く。

 今年に入ってからの急展開は本当にもったいなかった。吉田鋼太郎(62)演じた松永久秀の最期や存在感抜群だったユースケ・サンタマリア(49)演じた朝倉義景の最期も、もっとじっくり描いて欲しかった。何より光秀の生涯を描いた物語の最終回の表題が「本能寺の変」なのが納得いかなかった。「三日天下」に終わったとされる山崎の戦いも、それこそ数回かけて描いて欲しかったと思う。

 すべてはコロナ禍での撮影中断。特に密になる合戦シーンの撮影が不可能となり、セット撮影を多用せざるを得なくなったため、制作構想自体に狂いが生じたと言う事情も分かっている。

 それでも、まずは序盤、斎藤道三役の本木雅弘(55)の色気と殺気に魅せられ、織田信長役の染谷将太(28)の狂気や初の大河出演となった坂東玉三郎(70)演じた正親町天皇の唯一無二の高貴さに引きつけられ続けた私は、終盤、特にこの2か月の“駆け足”ぶりに一抹の寂しさを感じた。

 いや、この形こそが池端さん始め制作陣の当初からの狙いならば、自分の素人ぶりを恥じるしかないし、“駆け足”だったゆえに強烈なドライブ感、スピード感を感じたのもまた確かだ。

 それでも言わせてもらえるなら、やはり誠実さと気品、その裏に秘めた狂気を全身から発散させた長谷川の演技に魅了されただけに「まだ、もう少し、この世界に浸っていたい」という思いが強かった。

 しかし、何事にも終わりはある。この作品に関わり続けて1年8か月が経過した長谷川は同番組の公式ホームページで最終回への思いを、こうつづった。

 「光秀はなぜ本能寺に向かったのか? その心情の変化が細かく描かれていると思うので、そこに感情移入して見て下さるとうれしいです。約1年にわたり紡いできた物語。ラストシーンまでお楽しみ下さい」―。

 コロナ禍の中、座長としてこの1年の困難な撮影の中、誰よりも苦悩を抱えてきただろう俳優のエンディングに向けての言葉は私の心に染みいった。

 そして今、予告編で「長谷川・光秀」はこう叫んだ。「我が敵は織田信長と申す」―。

 はるか昔にも思える昨年3月放送の第8話。信長と光秀の尾張の海岸での出会いの瞬間から見続けてきたからこそ心が震えてしまう、その言葉。だからこそ、私は、ついに迎える光秀の最期をしっかりと見届けようと思う。ドラマよりもドラマチックだった舞台裏も含め、その1年2か月の物語の最後の瞬間を、そのはかないきらめきを―。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆「麒麟がくる」平均視聴率の推移

 ▽第1話 19・1%

 ▽第2話 17・9%

 ▽第3話 16・1%

 ▽第4話 13・5%

 ▽第5話 13・2%

 ▽第6話 13・8%

 ▽第7話 15・0%

 ▽第8話 13・7%

 ▽第9話 15・0%

 ▽第10話 16・5%

 ▽第11話 14・3%

 ▽第12話 14・6%

 ▽第13話 15・7%

 ▽第14話 15・4%

 ▽第15話 14・9%

 ▽第16話 16・2%

 ▽第17話 14・9%

 ▽第18話 15・1%

 ▽第19話 15・7%

 ▽第20話 15・3%

 ▽第21話 16・3%

 ▽第22話 14・6%(放送再開)

 ▽第23話 13・4%

 ▽第24話 13・1%

 ▽第25話 12・9%

 ▽第26話 13・0%

 ▽第27話 13・0%

 ▽第28話 12・5%

 ▽第29話 13・2%

 ▽第30話 11・9%

 ▽第31話 13・8%

 ▽第32話 13・3%

 ▽第33話 13・1%

 ▽第34話 13・6%

 ▽第35話 12・7%

 ▽第36話 12・3%

 ▽第36話 12・2%

 ▽第38話 11・5%

 ▽第38話 11・4%

 ▽第39話 11・4%

 ▽第40話 13・6%

 ▽第41話 13・4%

 ▽第42話 13・8%

 ▽第43話 13・9%

 ▽第44話(最終回) ?

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