一山麻緒、日本新ペース25キロで失速…好記録で初優勝も「自分の力不足。悔しい」

ペースメーカーの川内優輝(右)に引っ張られ力走する一山麻緒(カメラ・豊田 秀一)
ペースメーカーの川内優輝(右)に引っ張られ力走する一山麻緒(カメラ・豊田 秀一)
今大会の一山と日本&世界記録のラップ比較
今大会の一山と日本&世界記録のラップ比較
一山のマラソン全成績
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◆大阪国際女子マラソン(31日、長居公園周回コース=42・195キロ)

 東京五輪代表の一山麻緒(23)=ワコール=が2時間21分11秒の好記録で初優勝した。コロナ禍により無観客、周回コースで争われた異例のレースで、2005年に野口みずきがマークした2時間19分12秒の日本記録更新を狙ったが届かずに悔し涙。半年後の五輪本番に向けて成長を誓った。同代表の前田穂南(24)=天満屋=は2時間23分30秒の自己新記録で2位だった。(晴れ、気温10・2度、湿度50%、西の風0・7メートル=スタート時)

 うつむく。腕を下ろす。一山は25キロ付近で顔をしかめた。「体よりも呼吸がきつくなり始めた」。体、足を懸命に動かして気持ちを切り替えようとしたが、落ちたペースは戻ることのないままフィニッシュ。おぼつかない足取りで永山忠幸監督(61)の肩を借りた。「日本記録だけのために練習をやってきたので悔しい。ただただ自分の力不足」。16年ぶりの日本記録更新には届かず、涙を流した。

 コロナ禍で、公道から公園内を約15周に変更されたコース。ほぼ平たんで走りやすく、19年ドーハ世陸代表の川内優輝(33)=あいおいニッセイ同和損保=ら男子3人がペースメーカー(PM)を担い記録更新が期待された。スタートから果敢に攻め、前田と2人で日本新ペースを刻んだが、13キロ付近で前田が遅れた。独走になった一山も「3回ぐらい(きつくなる)山があった」と25キロ付近で失速。PMからの「行ける、行ける!」というゲキで粘りは見せたが「実際に走ってみて『あぁ、きついな』と感じました」と“壁”は高かった。

 五輪延期を前向きに捉えて昨年はスピード強化に励み、トラック種目で自己新を連発。調整は順調だったが、昨年末にへんとうの腫れで5日間静養を余儀なくされるアクシデントに見舞われた。レース1か月前に走ることも許されない状況。「流動食しか食べられず、走り始めたのは12月31日。よく頑張ってくれた」と永山監督。大会直前に十分な走り込みができず、100%の力を発揮できなかった。

 開催が不透明な東京五輪に向け、一山は「やってくれると信じて、夏には最高の走りができるように最高の準備をする。もっともっと強くなれるように、まだまだ頑張ります」と意気込んだ。五輪前最後のフルマラソンで日本新は逃したが、ハイペースを体感したことは大きな経験。最後は一山らしい笑顔で次の一歩を踏み出した。(太田 涼)

 〈1〉一山麻緒(ワコール)2時間21分11秒=大会新〈2〉前田穂南(天満屋)2時間23分30秒〈3〉阿部有香里(しまむら)2時間24分41秒※従来の大会記録は03年に野口みずきが出した2時間21分18秒。今大会は男女混合レース扱いとなり、一山と野口の記録は大会記録として併記される。

 〇…日本記録保持者である野口みずきさんも、解説者としてレースを見守った。序盤は日本新ペースで進んだことから「手に汗握って、ハラハラしました」と笑うが、前田が13キロ付近で遅れ始め、トップの一山も1分59秒届かない結果に。「悔しいと思うけど、本当に頼もしい2人。これからすぐにでも(日本記録が)破られそうな予感がしています」と“後輩たち”の今後に期待を込めた。

 ◆ペースメーカー川内「本当に強い」

 川内が第1グループのペースメーカーを務め、安定した流れをつくった。レース後に書面を通じ、「一山選手が最後まで粘ってくれて、最後はペースを戻してくるような走りをしてくれた。ペースメーカーとして日本記録にはならなかったが、良かったなと思います」と振り返った。

 40キロ以上も一山を引っ張り、スタジアムに入る際にひっそりと先頭を譲り、フィニッシュした百戦錬磨の男。果敢に日本記録に挑んだ一山と前田について「本当に強い2人。私もまだまだ頑張らないといけないと思う。貴重な経験をさせてもらいました」。妻・侑子(35)も2時間40分22秒の16位でゴール。夫婦で大会を盛り上げた。

 〇…新型コロナウイルス感染予防策として、参加全選手に義務付けたPCR検査は、出場76人全員が陰性だった。自宅での観戦を呼びかけ、周回コースには高さ約2メートルの柵を設置し、沿道から応援できないような工夫がなされた。また、生活道路であることから完全封鎖は行わず、柵の設置もほとんどが1月30日に行われるなど、住民への配慮も見られた。

 ◆レース経過 1キロの入りは3分13秒と日本記録を上回るペースだったが、その後は3分18秒前後に落ち着いた。10キロ通過は33分0秒で、日本記録からは7秒遅れ。13キロすぎで前田が遅れ始めるも、一山は日本記録ペースを維持。ハーフは1時間9分35秒で日本記録とは16秒差に。快調にタイムを刻んでいた一山だったが、25キロ付近からスピードが少し落ちた。ペースメーカーから何度も声をかけられて粘り、残り1周を告げる鐘が鳴るとペースアップ。2時間21分11秒の好記録が誕生したが、日本記録には届かなかった。

 ◆一山 麻緒(いちやま・まお)1997年5月29日、鹿児島・出水(いずみ)市生まれ。23歳。小学5年生から陸上を始め、出水中央高3年時に全国高校総体1500メートルと3000メートルに出場。2016年にワコール入社。17年に世界クロカン代表に選出。20年名古屋ウィメンズマラソンで2時間20分29秒の国内最高記録をマークして優勝し、東京五輪代表に内定。157センチ、43キロ。

ペースメーカーの川内優輝(右)に引っ張られ力走する一山麻緒(カメラ・豊田 秀一)
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