胸に響いた渡辺直人の言葉「将来、どうなりたいの?」…元日本ハム捕手・黒羽根利規氏インタビュー(下) 

スポーツ報知
打撃でも非凡な才能を見せた黒羽根(カメラ・頓所 美代子)

 昨季まで日本ハムでプレーした黒羽根利規氏(33)が、第2の人生を歩み始めた。昨季限りで現役を引退し、BC栃木のバッテリーコーチに就任。15年にわたる現役生活の中での経験や苦労話、指導者として歩み出す今後に向けての目標などを3回に分けてお届けする。第3回は指導者転身を決意させた周囲の助言や、理想の指導者像について。(取材・小島 和之)

 昨年12月に12球団トライアウトを受けたが、NPBからのオファーはなくBC栃木で指導者に転身する道を選んだ。悩む日々の中で助言をくれたのは、現役生活中から親身になって相談を受けてくれた渡辺直人(現楽天1軍打撃コーチ)だった。

 「1番影響を受けたのは(渡辺)直人さん。直人さんの言葉ひとつひとつが結構自分の中で響いた。『とりあえず、お前将来どうなりたいの?』と言われて、『指導者としてやりたいです』と話をした。社会人チームからもオファーが来ていましたが、『そっちの方が安定するかもしれないけど、独立リーグに行って1、2年苦労して勉強するのもいいんじゃないか』と言われ、栃木にいって勉強しようという気持ちになった。嫁も『家族のことは私が何とかするから』と言ってくれました」

 BC栃木は、2月中旬頃からシーズンへ向けた活動を本格化させていく予定。本格的な指導開始はまだ先となるが、理想とする指導者像は固まっている。

 「必要とされる指導者になりたい。必要というのはいろいろな(意味での)必要がある。選手から必要とされるコーチ、監督やほかのコーチから必要とされるコーチもそう。黒羽根がいればちょっと安心する、いてほしいと思われるコーチ。選手とコーチは立場は違うけど、同じ目線で同じ話を共有できたらいいのかな、と」

 現役時代には、一方的に自身の理論を押しつけるような指導方法や、自身が意識して取り組んでいることを確認せずに頭ごなしに指導される経験もしたという。

 自分自身が違和感を抱いたからこそ、押しつける指導ではなく、選手に寄り添い、ともに最適解を見つけ出す手助けが出来る指導者になりたいと思い描く。

 「独立の選手は特にそうだと思うけど、結局どうしてプロ(NPBの選手)になれていないのかというのは、何か原因があるから。それは自分で気づかないと直せない。自分で気づいて覚えさせないと長続きしないし、上から頭ごなしに言っても1、2回で忘れて3日坊主で終わってしまうはずなんです」

 選手との距離感を見極める―。これは捕手としてプロ生活を送ってきた経験ともリンクする。具体例として挙げたのは、米レンジャーズへの移籍が決まった有原航平投手とのやりとりだ。

 「(17年途中に)横浜から日本ハムに来た時、後輩と話すときは距離感を大事にしていた。特にピッチャーとのやりとりではそうです。コーチやスコアラーからは『有原に内角を投げさせてください』と言われていたけど、有原からすれば『いきなり来たばかりの人になんでそんなことを言われなきゃいけないんだ』と思うはず。まずは距離感を詰めて、野球の話をできるようになった段階でちょっとジャブを打ってみる。ブルペンで『結構、内角は投げる?』と言ってみたり。また何かのタイミングでジャブを打ってというやりとりをずっとして、一昨年くらいから内角のツーシームを投げ始めて、簡単に勝てるようになってきた」

 最初から答えを伝えるのではなく、なぜそれが必要なのか―と選手自身が理解して動き出す方向に導いていく。捕手として取り組んでいたことが、指導者として歩み出そうしている現在にも生かされている。

 「有原との距離感の詰め方を考えてやっていたりとか、ピッチャーの性格に応じて話し方を変えたりしていた。練習にしても、最初からこうしろと言ったら、それがその人のゴールになってしまう。それでは、言われたことをやっておけばいいという感じになってしまう。そういうことはなくしたい。例えば成瀬さん(BC栃木投手兼コーチ)は、『1から10まで教えることはできるけど、俺は1から3までしか教えたくない。4から10までは自分で考えてやれ』と言っていました」

 指導者としての目標は、1人でも多くの選手をNPBの舞台に送り出すこと。選手の個性に応じて、自身の指導スタイルも柔軟に適応させていくつもりだ。

 「1人でも多くNPBに進む選手を出して、NPBで活躍できるような選手を生み出せれば。その場その場で考え方は変わってくると思うし、柔軟な考え方も大事。変化していかないと選手にも失礼だと思うので」

 熱い思いを胸に秘め、第2の野球人生の幕が上がる。(おわり)

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