立川志らく「私は十分楽しんだ」…「グッとラック!」わずか1年半での終了で思い出した番組スタート時の不安

司会を務める「グッとラック!」の3月いっぱいでの終了を発表した立川志らく
司会を務める「グッとラック!」の3月いっぱいでの終了を発表した立川志らく
朝の視聴率戦争の中、「グッとラック!」の1年半での終了を決めたTBS
朝の視聴率戦争の中、「グッとラック!」の1年半での終了を決めたTBS

 「もったいないな」―。心のどこかで予想していた結末ではあったが、一人の落語家の番組終了の弁を私は、そんな思いとともに見つめていた。

 それは29日朝のこと。落語家・立川志らく(57)が1年半にわたってMCを務めてきたTBS系「グッとラック!」(月~金曜・午前8時)の3月いっぱいでの終了を生放送で発表した。

 この日のエンディング。まず、「志らくさんから大事なお知らせ」というテロップが画面に映し出されると、志らくは「かねてから噂されておりました『グッとラック!』の去就でございますが、噂どおり3月いっぱいで終了ということになりました」と淡々とした表情で報告した。

 「番組というのは、始まれば必ず終わるものでございます。ただ、私はこの番組を引き受けた時に信条、信念があって『どんな時もふざけますよ』と。それによって視聴者からお叱りを受けることがあるけれども、ふざけた中に時たま、真実が転がっていることがある。どんなに真剣に語り合ったとしても、そこに見えない真実がある場合があるから、それを視聴者の皆さんに拾っていただこうと思っていました。それがお笑いだとか喜劇の価値であります。ふざけたところに真実があると…」と一気に話した志らく。

 「そのつもりでやってまいりましたが、22年間もやってまいりましたんで…。あっ、それは『とくダネ!』の小倉さんでございます」と、「グッとラック!」同様、3月26日で終了するライバル番組、フジテレビ系「情報プレゼンター とくダネ!」(月~金曜・午前8時)の司会を22年間務めてきたフリーアナウンサー・小倉智昭氏(73)の名前を出して、一笑い取った。

 そして、「1年半、太く短く、私は十分楽しんだつもりでござまいます。まあ、終わることも含めて楽しんでしまおうというのが落語家の了見。お笑い人の了見でございます。終わると言っても2か月ありますんで、いろいろなことができる。物事に忖度(そんたく)せずに、なるべくウソをつかずにやって、終わった時には『志らくロス』ということが広がるような番組作りをしていきたい」と笑顔で話した。

 約2分間、スッキリした表情で話し続けた志らくを見た時、私の記憶は1年半前のTBS本社の大会議室にタイムスリップしていた。

 2019年9月10日、東京・赤坂の同局で開かれた10月番組改編発表会見。目玉中の目玉として発表されたのが、「TOKIO」の国分太一(46)が4年半にわたってMCを務めてきた「ビビット」を終了させた上で同時間帯の新番組に据えた「グッどラック!」だった。

 さわやかな笑顔のジャニーズアイドルから同局系「ひるおび!」(月~金曜・前10時25分)でおなじみの毒舌コメンテーターとして炎上すれすれの発言連発で知られる落語家へのMC交代劇。ネット上では早くも「朝から説教くさいのは、どうなの?」「さわやかな朝とは真逆のキャラクターでは…」などの手厳しい意見も上がっていた。

 改編会見でも同番組への質問が集中。まさに「志らく祭」のような40分間となったことを、くっきりと覚えている。

 席上、瀬戸口克陽編成部長は「グッどラック!」について、「しっかりと朝からファミリーコア(Fコア、男女13~59歳)の皆さんに振り向いてもらえる番組作りをしたい」と明言。三島圭太編成部企画統括も「4年半ぶりにTBSの朝の顔が変わります。番組の売りは、志らくさんが時の最大関心事に対してどういうことを言うか。どう歯に衣(きぬ)着せず、うそのないコメントで切っていくか。思ったことを正直に言っていただくことで視聴者の関心を引く。この一点に尽きると思います」と期待を寄せていた。

 「今までがさわやかな国分さんだっただけに、志らくさんのあくの強い発言が時には炎上につながることもあるのでは?」と聞いた私に三島氏は「朝は視聴習慣というものが強く出る枠。朝起きて、そんなに強い意志でなく、チャンネルを選んでいるという方が多いというデータもあります」と分析した上で「まずは話題になることこそ大事。『おっ、こういうのが始まったんだ』と気にしていただけることが、まずはスタートと思っています」と答えた上で「今回、『グッどラック!』への質問が多いことこそありがたいこと。一番良くないのは好きでも嫌いでもないってこと。注目されているということは、すごく上に上がっていくチャンスがあると思っています」と続けていた。

 そう、とにかく世間の耳目を集め、話題になることこそ重要。一番悪いのは無視=視聴者の話題にも上らないこと。だからこそ、TBSは“毒舌MC”による「炎上」も一つの手段として、勝負に出た―。

 そう捉えた私は会見直後に「悪名は無名に勝る…毒舌・立川志らくはTBSの朝の顔になれるのか?」と題したコラムを執筆。この記事には多くの読者からの賛否両論が集まったことを覚えている。

 そして、1年半が過ぎ、「グッどラック!」は早すぎる終焉(しゅうえん)の時を迎える。

 もちろん、最大の理由は視聴率の低迷だろう。初回から2・9%と「ビビット」の最終回3・1%を下回るスタート。昨年12月16日には1・6%という最低記録もあった(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)。平均2~4%台に低迷する中、番組では、昨年10月の改編で月~金のメインコメンテーターに田村淳(47)、曜日別のコメンテーターに橋下徹氏(51)、「3時のヒロイン」福田麻貴(32)、フワちゃん(27)を加えるテコ入れも敢行した。

 しかし、4年連続で同時間帯トップを突っ走る“横綱”テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜・午前8時)や人気の「NiziU」とのコラボ企画など芸能情報に強い日本テレビ系「スッキリ」(月~金曜・午前8時)などの壁は最後まで厚かった。

 さらに昨年11月にはフリーの小林摩耶アナウンサー(41)の不可解な降板騒動まで勃発。マイナスイメージに拍車をかけた。

 当初からMC起用に疑問の声があった中で志らく起用に踏み切った編成面での責任は今後、問われるべきだろう。それでも、私は志らくを「朝の顔」に据えた「グッどラック!」が好きだった。落語家ならではの「一笑い」をどうしても付け加えてしまうコメントや世の中の出来事を斜めに見ながらも決してウソだけはつかず、本音だけを口にし続ける司会としての姿勢は潔かった。

 「テレビ番組の視聴習慣の定着には一定の時間がかかる。帯番組の定着には2年以上は見ないと―」と私に言ったのは、ある民放キー局の幹部だった。だから、今回の1年半での番組終了を、どうしても「もったいない」と思ってしまう。

 それでも、視聴率という魔物が跋扈(ばっこ)するテレビ界の現状の中、「グッどラック!」はピリオドを打ち、志らくは朝の顔から退場していく。

 「勝者には何もやるな」と言ったのは、アーネストヘミングウェイだ。では、視聴率戦争の「敗者」にはどんな言葉を贈るのか? 私は「ド直球コメント、面白かったですよ。師匠」と言う言葉こそ贈りたいと思う。(記者コラム・中村 健吾)

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