【オリックス】大下誠一郎インタビュー ド派手デビューの舞台裏「死んでもいいけぇ、バットに当てよう」

昨年9月15日、背番号102のユニホームでプロ初打席本塁打を放ち喜ぶ大下
昨年9月15日、背番号102のユニホームでプロ初打席本塁打を放ち喜ぶ大下

 2年連続最下位に沈んだオリックスで一筋の光を放ったのが、9月15日の楽天戦(ほっと神戸)で育成ドラフト入団選手史上初のプロ初打席初本塁打を記録した大下誠一郎外野手(23)だ。支配下昇格から即1軍登録、スタメン出場で決勝アーチ。大器の片りんを感じさせたド派手デビューの舞台裏を明かした。(取材・構成=宮崎 尚行)

 ガムをかみながら、一見ふてぶてしい表情。だが大下の足は震えていた。同点に追いついた直後の2回1死一、三塁で迎えたプロ初打席。初球から3連続ボールで一時は優位に立てたが、見逃し、空振りで再び重圧に襲われた。

 「徐々にボールが見えてきた感じやったのに(カウント)3―2になって、また緊張して」

 6球目、真ん中低めの138キロ直球に気持ちをぶつけた。

 「(続けて)もう1球チェンジアップが来ると思っていた。コーチャーを見るとエンドランのサイン。死んでもいいけぇ、バットに当てようと思い切っていきました」

 狙い球とは違ったものの、体が自然に反応した。左翼に打球が飛んだことは分かったが、無我夢中で全力疾走し、二塁直前で歓声に気づいた。両腕を頭上で回しながら体全体で喜びを表現。何度も跳びはねてホームにかえってきた。

 「打球が低くて入ったっち(入ったとは)思わんくて。(スタンドが)ワーッてなって、セカンドの人(渡辺佳)が『入った』って言ったんです。それでウワーッて思って。でも何が何だか」

 支配下昇格の吉報は突然届いた。前日にファームの福良GMの部屋に呼ばれた。

 「GMに『お前、心当たりはあるか』と。『ありません』と答えたら『本当にないのか』と。『本当にないです』と答えたんです。『じゃあ、お前を支配下にする』と。何かやらかしたかとビビってました」

 急いで寮に戻り、楽天投手陣のデータをメモした。夜、布団に入っても寝つけず、何度も起きてバットを振った。球場でも足が地についていない感覚だった。

 「緊張で(試合前の)飯も食えんくて。山岡(泰輔)さんが気遣ってくれて『行くぞ』って手を引っ張られて行ったけど…全部吐いたんです」

 お立ち台では愛きょうある北九州弁を披露し、一気にファンの心をつかんだ。打席の登場曲に選んだ「男の勲章」を歌う嶋大輔さんからは、ツイッターでエールとともに食事の誘いを受けた。そして父にも少しだけ恩返しできた気がした。「お前やったら絶対、通用するから大丈夫」と励まし続けてくれた一雅さんは、大下が大学3年時に脳内出血で倒れ、現在も車いす生活を送っている。

 「親父(おやじ)にも『こっからが勝負やけぇ、もっと頑張れ』と。もっともっと上を目指していかないかんと思います。今年が勝負。サードのレギュラーを取る。それだけです」

 育成出身という初心を忘れず、大下は“男の勲章”を積み上げていく。

 ◆育成出身初のプロ初打席初本塁打 9月14日に支配下登録された大下は翌日に1軍登録され「8番・三塁」で先発。背番号40のユニホーム製作が間に合わず、山岡打撃投手の102のユニホームを借りて出場し、2回1死一、三塁から決勝弾となる3ランを左翼席に放った。

 ◆大下 誠一郎(おおした・せいいちろう)1997年11月3日、福岡県生まれ。23歳。中学時代は小倉ボーイズで投手を務め、世界大会優勝。白鴎大足利高で野手に転向し、2年春に甲子園出場。高校通算29本塁打。白鴎大ではリーグ通算10本塁打。2019年の育成ドラフト6位で入団。20年は32試合、打率2割1分6厘、2本塁打、9打点。171センチ、89キロ。右投右打。独身。推定年俸840万円。

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