◆プロボクシング ▽東洋太平洋バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 ○井上拓真(9回負傷判定)栗原慶太●(14日、東京・後楽園ホール)
東洋太平洋バンタム級タイトルマッチは挑戦者で元WBC世界同級暫定王者・井上拓真(25)=大橋=が、王者・栗原慶太(28)=一力=に9回負傷判定で勝利。2019年11月にWBC王者ウバーリ(フランス)に敗れて以来、1年2か月ぶりとなる再起戦を飾った。WBA&IBF世界同級統一王者で兄の尚弥(27)=大橋=とともに世界4団体のバンタム級制覇の夢に向け、新たなスタートラインに立った。栗原は2度目の防衛に失敗。戦績は井上が14勝(3KO)1敗、栗原が15勝(13KO)6敗。
「REBORN(生まれ変わる)」―。黒のTシャツの胸に書かれた文字が、新王者の率直な思いだった。「1年2か月のブランクがあったけど、自分のボクシングをするというのがテーマで、少しはそれができたと思う」と拓真。序盤から自分の距離を保ちながら、左フック、右カウンターを的確に打ち込んでペースをつくった。初回、偶然のバッティングで栗原の左目上が切れて出血。それでも「相手のパンチが強いのは分かっていたし、無理して打ち合う必要もなかった」と冷静に打ち続けた。
9回。流血がひどくなりレフェリーが試合をストップ。ジャッジ1人がフルマークをつけるなど3―0で負傷判定勝ち。東洋太平洋2階級制覇で再び世界ロードに戻った。
弟の復活を誰よりも喜んだのが尚弥だ。「1年2か月ぶりの再起戦で栗原選手との対戦でしたので不安な気持ちもありましたが、結果はパーフェクトゲーム。拓真は拓真のボクシング。これが井上拓真の強さ」と“合格点”だ。自身の世界戦後、休む間もなく弟のサポートに徹した。スパーリングでは兄弟で本気の打ち合いをして鍛え上げた。
「倒すまでの流れをつかめばもっと伸びる」と尚弥。弟は「ナオだけ世界王者だとお父さん(真吾トレーナー)も納得がいかないと思うので」。2人は偶然にも同じ言葉で締めた。「兄弟での世界王者目指して頑張っていきます」。兄弟でバンタム級の世界4団体制覇の夢。マッチメイクを交渉する大橋秀行会長は、拳をつくった左腕をポンとたたいて笑顔を見せた。(谷口 隆俊)
◆緊急事態宣言再発令後初興行
今年最初の興行は、緊急事態宣言再発出後初めての試合となった。全試合を午後8時までに終えるため、前売り券の発売を中止し、試合開始時間を15分繰り上げた。感染予防策としてマスクの着用、手指の消毒を呼びかけたほか、声を出しての応援を禁じた。これまでは試合の合間に行っていたロープの消毒を各ラウンドごとに実施。メインイベントの勝利者インタビューは午後8時直前に終了した。