Jリーグ唯一の道産子監督、J3八戸・葛野昌宏氏…急性大動脈解離にも負けず3年ぶり指揮

指揮官としてJリーグに臨むJ3八戸の葛野昌宏氏
指揮官としてJリーグに臨むJ3八戸の葛野昌宏氏

 Jリーグ全57クラブで唯一の道産子監督、J3ヴァンラーレ八戸の葛野昌宏監督(45)が、初のJ舞台に挑む。2018年のJFL時代に監督を務め、試合後に急性大動脈解離で緊急搬送されるもJ3昇格を果たしたが、S級ライセンスがなく退任。フロントを務めながらライセンスを取得し、3年ぶりに再登板する。目標のJ2切符奪取へ3月14日開幕のアウェー・岐阜戦から勝ちにこだわっていく。

 指揮官として臨む初のJ舞台。葛野監督の目指す方向性は明確だった。「育てるより勝たなきゃいけない。理想はあるが、それを追っても結果が出なきゃ仕方ない。まずは勝つことを目的に、その中で葛野流を作っていければ」。

 昨オフ、引退者も含め16人がチームを去った。「正直、プロじゃない部分もあるけれども、プロという感じ」と口にするよう、選手の半分は仕事をかけ持つ。人工芝の練習場はあるが凍って使えず、体育館での練習も余儀なくされる。J3というカテゴリーでもあり、毎年、選手の流出は避けて通れない。その状況を少しでも変えるべく、就任1年目でのJ2昇格を大前提に置き、戦う。

 生死をさまよった大病を乗り越えて来た。18年7月29日の青森戦後、会見中に体に強烈な痛みが走った。報道陣に担架で運ばれ緊急搬送。急性大動脈解離で12時間の手術を受けた。救急車で搬送中「自分と救急隊員らの姿を上から見てて。その時は痛みがなかったのだが『何で俺がこんな目に』と思った瞬間、また現実に戻って激痛が走った」と死をも覚悟した。約1か月入院し、80キロだった体重は10キロ落ちたが「昇格もかかっていたので」と9月9日の今治戦で現場復帰。「血圧を上げるのが一番駄目だから大声を出せない」という中、4位でのJ3昇格へ導いた。

 Jクラブの監督に必要なS級ライセンス取得のため、19年は強化部長を務めた。札幌出身ということもあり、同年8月にはJ1札幌で1週間、研修を受けた。試合前などのミーティングにも入った経験は、今に大きくつながっている。「前半0―1から追い付いたF東京戦で、ハーフタイムにミシャ(札幌ペトロヴィッチ監督の愛称)さんが何を言うんだろうと思っていたら、『我慢しろ』『チャンスはある』とかほとんどがメンタルのことだった。それって普段からの積み重ねがあるから出来ること。練習も全てなぜやっているのか分かるし、ボール回し1つもギリギリのところの判断力を養う、意味あるものだった。おこがましいが、自分も話すのは精神的なことなので『同じで良かったな』と。もちろん、真似はできないけど、すごく勉強になったし、良さは取り入れたい。オープンマインドなので」。そう言って笑顔を見せた。

 昨年12月にライセンスを取得し、迎えるJリーグでの指揮。勝利至上主義の上で、1つのポリシーは貫く。「1試合1試合をしっかり戦った上で、見ている人が次の試合を楽しみに思ってもらえるような姿勢は出していきたい。簡単に倒れないとかは当たり前。異議などは絶対に許さない。文句言う前に戻れと。うちは去年、18チーム中15位。弱いチームなんて1つもない。サッカーでの取り組み方は生き様だと思っているので。そこを示して、強いチームに勝っていきたい」。

 06年にJFL佐川印刷で引退後、コーチを務めた。「そろそろ社業に専念しよう」と考え始めた14年、登別大谷高の先輩で現青森山田高の黒田剛監督(50)から届いた年賀状に「青森の社会人チームで監督をやらないか」と記されていた。「最後のチャンス」と就いたJFL青森の監督から始まった青森県での単身生活は、8年目を迎える。

 「整ったチームより、八戸のようなクラブが今の自分には合っているが、今がいいとは思ってはいない。地に足がついたチームにして、上へ行くんだという波を築かないと。コロナの影響で卒業後の進路が決まってない子はたくさんいる。プロに行けるのはその中で選ばれた選手たちなんだから。八戸でやることにプライドを持った選手を作っていきたい」。高い志を持っての新たな戦いは、3月14日に幕を開ける。(砂田 秀人)

 ◆葛野 昌宏(くずの・まさひろ)1975年7月2日、札幌市生まれ。45歳。札幌三里塚小でサッカーを始め、札幌羊丘中から登別大谷高へ進学。3年時は主将、DFの中心として93年度全国選手権に初出場で3回戦進出し、優秀選手に選ばれた。94年に平塚(現J1湘南)に加入もリーグ戦出場なし。97年に北信越Lの新潟(現J2新潟)に移籍。99年からJFLジャトコ、04年からJFL佐川印刷でプレーし、06年に現役引退。現役時はDFを務めていた。佐川印刷コーチを経て、14年から17年まで青森監督を務め、18年から八戸に所属している。

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