【五輪の友】9秒台突入へ 山県亮太「満点」探しの禅問答

「満点」の走りを目指す山県亮太
「満点」の走りを目指す山県亮太

 100点満点は、何のテストでもうれしい。その「満点」が本当に難しいのが、短距離走という競技かもしれない。男子100メートルの山県亮太(28)=セイコー=は「10個ポイントがあるとしたら、自己ベストのレースでも二重丸がつくのは8個か9個。1個は絶対外しますよ」と明かす。タイム上は自身最速の一本でも、完璧ではない。だから伸びしろを感じる。自己記録10秒00の山県も、日本勢4人目の9秒台突入を目指して鍛錬の時期を過ごしている。

 今冬には、瞬発系のスプリンターとは対極とも思われる座禅にも取り組んだ。妙心寺壽聖院(京都)を訪れ、指導を仰いだ。戦国武将の石田三成一族の菩提(ぼだい)寺としても知られる由緒ある寺院で、静かに自分を見つめた。「けがを治すには姿勢から直さないといけない。1回30分を3~4セット。合計1時間半~2時間ほど座った。最初は筋力や精神力でやれたけど、最後は姿勢を維持できなかった。まだ弱いと思いました」

 それこそ禅問答のような話だが、山県は9秒台にほんのわずか足を踏み入れている。でも、9秒台は出していない。銅メダルに輝いた18年アジア大会決勝は9秒997(追い風0・8メートル)で走った。トラック競技の記録は、1000分の1秒を切り上げた数字が公式記録のため、タイムは10秒00になった。これが現在の自己ベスト。「今でも感覚は覚えているし、何を意識したか、何メートルで何が起きたかも、はっきり覚えている」という一本。0秒007、距離にして7センチ先の9秒990が公式記録9秒99=9秒台ホルダーの世界だ。

 12年ロンドン五輪では10秒07(追い風1・3メートル)で日本勢の五輪最高記録。16年リオ五輪も10秒05(追い風0・2メートル)を出して、五輪最高記録を更新した。本人は「たまたまじゃないですか?」と笑うが、大舞台に合わせる確かな力がある。肺気胸に泣いた19年、右膝違和感で不完全燃焼の20年。苦しみは無駄にならない。「けがから戻る時は一段、二段レベルアップして帰ってくるぞ、と」。まだ見ぬ「満点」を夢見て、勝負の東京イヤーが幕を開ける。

 ◆細野 友司(ほその・ゆうじ)1988年10月25日、千葉・八千代市生まれ。32歳。早大を経て11年入社。サッカー担当を経て、15年から五輪競技担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を現地取材した。夏季競技は陸上、バドミントン、重量挙げなどを担当し、冬季競技はジャンプを始めとしたノルディックスキーを担当。

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