FA杯第3回戦 1月9日 チョーリー2-0ダービー
天皇杯のモデルである世界最古のカップ戦。今季も10部までの736チームが参加して熱戦を繰り広げるのがイングランドのFA杯だ。年明けの3回戦からはプレミアリーグ所属のクラブも参加して、さらにヒートアップするが、やはり最大の見せ場は弱小クラブが強豪を撃破するジャイアント・キリングだ。
9日の3回戦で典型的なジャイアント・キリングが起こった。チョーリーはマンチェスターから約40キロ北西の小さな田舎町。そのサッカー・クラブは、小学校の校長先生が監督を務め、プレミアからは数えて6部にあたるノンプロリーグに所属。もちろん選手も他に正規の職を持つアマチュアだ。
対するダービーはプレミア昇格を狙うチャンピオンシップ(2部リーグ)の強豪。過去には1部リーグ優勝経験もある古豪で、現在は元イングランド代表主将のウェイン・ルーニーが代行監督を務めていることで有名だ。
もちろん、新型コロナウイルスのクラスターが発生して、ダービーがこの3回戦にユースチームを繰り出すしかなかったこともあるが、チョーリーが2-0完勝を飾る結果となった。
この勝利には、普段は小学校の校長先生を務めるジェイミー・ベルミリオ監督も大興奮。「恍惚としている。本当に誇らしい気分だ」と語り、その喜びを素直に表した。
しかしその”恍惚とした”気持ちにはもちろん理由がある。チョーリーはこれで4回戦に進出。賞金やテレビ放映権料が絡めば50万ポンド(約7250万円)の収益も夢ではない。
「(この収入は)我々のようなクラブにとっては本当に大きい。クラブが存続できるのは無論、これからさらに成長することもできる」
確かにプレミアのトップクラブにとっては中心選手一人の月給にも満たない額だが、6部のアマチュアチームにとっては莫大な金額。来季の5部昇格。そしてプロリーグ4部昇格と夢は広がる。
「ボランティアと一緒にここで夜明かしした甲斐があった。ヘアードライヤーと湯を沸かしたやかんでピッチが凍結しないようにして、試合が延期にならないようにした」
チョーリーの4回戦進出の陰には、こうしてダービーが新型コロナウイルスのクラスターに襲われた好機を逃さず、ピッチを凍結させなかった執念もあった。