飯伏幸太が、棚橋弘至が涙でファンに感謝…コロナ禍の中、史上最少観客数で決行の新日・東京ドーム大会の意義

コロナ禍の中、昨年より大幅減の1万2689人の観客が見守った4日の新日本プロレス・東京ドーム大会(カメラ・泉 貫太)
コロナ禍の中、昨年より大幅減の1万2689人の観客が見守った4日の新日本プロレス・東京ドーム大会(カメラ・泉 貫太)
1・4のメインイベントで内藤哲也(左)を破り、IWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王座に輝いた飯伏幸太
1・4のメインイベントで内藤哲也(左)を破り、IWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王座に輝いた飯伏幸太

 これが新型コロナウイルスとの闘いの中の新たな観戦形式となるのか―。新年早々、そんなことを考えさせられる大規模イベントが開催された。

 4日と5日、東京ドームで行われた新日本プロレス新年恒例の東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 15」。新型コロナウイルスの感染再拡大の中、新日は観客数を大幅に制限。1・4が1万2689人、1・5が7801人と動員数は東京D大会史上最少となった。

 東京ドーム大会と言えば、昨年1月4、5日に史上初めて2日間連続で開催され、4日4万8人、5日3万63人の計7万71人を動員。1・4の4万8人は2012年の4万3000人以来、8年ぶりに4万人突破だった。同大会の動員数は13年こそ2万9000人と落ち込んだものの、16年2万5204人、17年2万6192人、18年3万4995人、19年3万8162人と右肩上がりを続けてきた、まさにドル箱大会だった。

 今回、感染症対策を第一に考えた新日では昨年末、政府からの大規模イベントの入場制限の上限を5000人とする要望を受諾。その時点ですでに販売済みだったチケットのキャンセルは求められなかったが、新規販売で上限を超えないよう自粛要請を受けたため、12月29日で販売を終了。当日券の販売も見送った。

 昨年の1・4は11試合、1・5は9試合の計20試合が行われたが、今年は両日とも開始時間前に行われる「第0試合」を含め全7試合に絞り、選手も2日間に振り分けた。極力2日連続で出場するレスラーを減らしたため、2日連続で出場したのは、飯伏幸太(38)と高橋ヒロム(31)の2人だけだった。

 もちろん、両日とも37・5度以上の発熱など体調不良の観客は入場禁止の上、消毒、検温を徹底。コロナ追跡アプリのダウンロードを義務づけるなど感染症対策を施した。観客も試合中の声援を自粛。手拍子、足踏みでの応援となった。

 毎年、東京ドーム大会を取材してきた私から見ても、空席の目立つスタンドは寂しかった。それでも、声援をあくまで我慢し、懸命の手拍子を続ける観客の姿には感動すら覚えた。

 その熱さはリングに上がった選手たちにもストレートに伝わった。1・4で永遠のライバル・内藤哲也(38)を撃破、IWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王に輝き、1・5では、ジェイ・ホワイト(28)の挑戦を48分の死闘の末に退け、初防衛。今大会の主役となった飯伏は涙を隠さずに言った。

 「今、こういうコロナの状況で、あまり人数を入れられない中、やっぱり、こうやって集まってくれて…。僕は1人でもファンの方がいるのであれば、別に僕を見たいわけではなくて、プロレスを見たいという人が1人でもいるなら、どこでもタイトルマッチをやります。どこでも、なんでも、大丈夫です。もっと、もっと、プロレスを広めていきたい。2021年は飯伏幸太の年にしたいし、僕だけじゃなくて、プロレス界全体を盛り上げていきたい。そう思います」―。

 「1・4」で元付き人のグレート―O―カーン(29)を下し、エース復活への第一歩を踏み出した棚橋弘至(44)は「残酷な話、選手としてのピークは過ぎているかもしれない。けれども、もう一度っていう思いがあった中でのこういう(コロナの)状況で本当にどうしようかなと思った。新日本プロレスをね、もう一度、盛り上げて復活させてきたって、皆さんに言ってもらえるように残りのキャリアでベルトを狙うのはもちろんなんだけど、もう1回、プロレスを盛り上げます」と、きっぱり。

 「残りのキャリア全部使ってでも。それが今までプロレスで、たくさん応援してもらった俺の最後の…。最後って、言いたくないけど、俺の仕事だと思います」と声を震わせると、「まずはプロレスファンの皆さん、日々の生活に気をつけて。本当に(観戦に)行きたくても行けない状況っていうのはあると思うし、それは僕も理解している。だからこそ、感謝の気持ちを持っているし、今日来てくれたファンの方々にも、もちろん感謝の気持ちでいっぱいだし。絶対に、絶対にプロレスはなくさないから」と、ファンに感謝した。

 そして、どんな会場でもバックステージからファンの様子を観察し、本当に楽しんでいるかをチェックしている姿を何度も見てきた「レインメーカー」オカダ・カズチカ(33)は元弟分のウィル・オスプレイ(27)を下した1・4の試合後のバックステージで観客に向けて、こう言った。

 「やっぱり、こういうコロナ禍の中で少しでもね。元気になってもらわないと、僕たちが戦っている意味がないと思います。元気にしたり、勇気を与えられるような試合をしてですね。その中でも、こういう状況でもこれだけのお客さんが来てくれて、声も出せない中、しっかりと応援もしてもらって。僕たちもパワーはだいぶ、いただいているんで、そこは、しっかり返していきたいなと思います」―。

 さらに「プロレス関係者の皆さんもそうですし、ファンの人たちにも本当に、こういう状況でも、無事にこうやって大会ができて、ありがとうございました」と頭を下げた。

 2日間、東京ドームに通った立場から正直に言おう。2日間合計で昨年より5万人以上少なかったスタンドは寂しかったし、両日とも7試合しかなかった試合内容は物足りなかった。もっと見たかったし、冷静に見ると、今後の新日の財政に及ぼす負担も相当、大きいものになるだろう。

 8日、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に発出された緊急事態宣言のもと、さらに逆境は続く。2月7日までは大規模イベントは収容人数の50%を上限に観客数が最大5000人までに制限される。午後8時以降の外出自粛要請のもと、午後6時半開始が多かった新日の大会も今後、開始時間の繰り上げが必要となる。すでに無観客開催や中止を決めたスポーツイベントも多いのが現状だ。

 それでも、東京ドームでの2日間、声を出さずに手が痛くなるほどの手拍子で懸命の応援を続けた観客の姿と、それに熱い戦いで応えたレスラーたちの姿は本当に美しくて尊いものだった。決して感染症なんかが邪魔できないほどに―。

 コロナ禍が覆った暗雲を切り裂くためにプロレスの神様がそっと降りてきたかのような声援の禁じられた2日間。この48時間、私は全く新しいプロレス観戦の形が生まれた瞬間を体感した。プロレスは、スポーツは、どんな逆境でも決してコロナなんかに負けない―。私はそう思う。(記者コラム・中村 健吾)

コロナ禍の中、昨年より大幅減の1万2689人の観客が見守った4日の新日本プロレス・東京ドーム大会(カメラ・泉 貫太)
1・4のメインイベントで内藤哲也(左)を破り、IWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王座に輝いた飯伏幸太
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