「今年の顔 芸能記者イチオシ」の第2回はNHK連続テレビ小説「おちょやん」(月~土曜・前8時)で主人公・千代の継母・栗子役を演じて注目されている宮澤エマ(32)。デビュー当時は宮澤喜一元首相の孫としてバラエティー番組に出演していたが、ここ数年はミュージカルを中心に活躍。三谷幸喜氏(59)の作品にも多数起用されるなど女優としての才能を開花させている。(有野 博幸)
自身初の朝ドラ。宮澤は憂いを帯びた表情で三味線を弾く栗子役を好演した。登場シーンは決して多くないが、強烈な印象を残し「朝ドラの期待値がこんなにも大きいとは思わなかった。新たな一面を見せられてよかった」と予想以上の反響に驚いている。
三味線、大阪弁(河内弁)、着物の所作という3つの壁を乗り越えた。「言葉は何度も何度も方言指導の先生に教えていただいて、三味線は時代物の重い三味線を抱えて大阪まで稽古に通いました。細かい作法があるので、最初は三味線を持つことすら、ままならなかった」。撮影では「どこか憎めない人であるように。ただの嫌な女にならないように」と心掛けて演じた。
放送開始直後、NHKの情報番組「ごごナマ」にゲスト出演して、女優人生のターニングポイントを感じたという。「これまでテレビに出る時は、総理大臣の孫だったり、ミュージカル女優という役割があった。でも、今回初めて私を一人の人間として取り上げてもらった。人柄を掘り下げてくれて、私個人に興味を持ってもらえたことがうれしかった」
ミュージカル女優を夢見て2012年に芸能界デビューしたが、当初は「元総理の孫」として注目され、「正直、モヤモヤしたものがありましたね。この先に自分が求める仕事があるのかなって」。何度も挫折しながらもオーディションを受け続けて9年あまり。年2~3本のミュージカルに出演するまでに成長した。「アスリート並みにトレーニングを積まないとできない仕事。稽古期間が長いから、共同生活ができないと生き残れない。呼ばれなくなったら終わり」という厳しい世界で生き抜いてきた。
近年は映画「記憶にございません!」(19年)、Amazonオリジナルドラマ「誰かが、見ている」(20年)など三谷氏の作品でコメディーの才能も発揮。今年夏頃からは三谷氏が脚本を手掛ける来年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の撮影にも参加する。
飛躍の時を迎えても「一過性のブームにはなりたくない」と気を引き締めている。「ついにここまで来たと思うけど、ここからが勝負とも思う。細く長く、常に飽きられない存在でありたい」と末永い活躍を誓った。
◆キュートな見た目と対照的な反骨心…取材後記
デビュー当時は「元総理の孫」という肩書が独り歩きしていたが、「ミュージカル女優になりたい」という夢を信じてシビアな世界で自ら生きる道筋を切り開いてきた。その根底には、キュートな見た目とは対照的な反骨心がある。「セレブタレントが歌えるの?」「知名度でキャスティングされてるんでしょ?」と陰口をたたかれても、稽古に取り組む意欲に変換してきた。「元総理の孫」としてバラエティー番組に出演したことも「遠回りと言えば遠回りだけど、それも含めて自分。スキルを養うことができた」と前向きに捉えている。ぶれない信念が活躍の原動力だ。(有)
◆宮澤 エマ(みやざわ・えま)本名・ラフルアー宮澤エマ。1988年11月23日、東京都生まれ。32歳。母が宮澤喜一元首相の長女・啓子さんで父が元外交官の米国人。米カリフォルニア・オクシデンタル大卒。2012年に芸能界デビュー。「Endless SHOCK」「ラ・マンチャの男」「ウエスト・サイド・ストーリー」などミュージカルに多数出演。身長156センチ。血液型O。