【G大阪】史上最少の得失点差でリーグ2位に 20年シーズンを担当の金川記者が「見た」

イレブンに指示を出すG大阪・宮本恒靖監督
イレブンに指示を出すG大阪・宮本恒靖監督

 1月1日の天皇杯決勝で川崎に敗れ、G大阪の2020年シーズンは終わった。5年ぶりのタイトルには届かなかったが、J1ではACL出場権を5年ぶりにつかむ2位。残留争いに片足を突っ込む時期が長かった過去2年から、大きな躍進をみせた1年となった。

 しかし正直に言うと、躍進の理由は説明が難しかった。その難解さを最も表す数字が、最終的にわずかプラス4となった得失点差だ。首位・川崎は衝撃のプラス57、3位の名古屋もプラス17と、G大阪は得失点差でいえばリーグ9位。過去1シーズン制の中で、得失点差のプラスひと桁のチームが2位となったのは初めてだ。

 宮本恒靖監督は「夏から秋の連戦でうまく勢いに乗れた。その要因は守備の安定。全員のハードワーク。試合を重ねるごとに身になっていった」と語っていた。「守備の安定」というキーワードは間違いなく導き出される。失点数42はリーグ5位タイ。得点数46は9位タイと迫力を出し切れなかった中で、たしかに守備の強みが目立ったシーズンだった。

 ではなぜ守備が安定したのか。今季加入したDF昌子源が大活躍、といった事象があればわかりやすかった。しかし負傷の影響で18試合の出場にとどまった昌子は、彼の能力からすれば十分なパフォーマンスとは言えなかった。

 だが昌子は、チームを変えるきっかけをつくっていた。9月5日のアウェー・仙台戦。MF倉田秋はDFラインが上がらず、ハイプレスを仕掛けられない状況にいら立っていた。「もっとライン上げろ!」DF陣に強く要求すると、反論の声が上がった。昌子だった。「前がもっと追わないと上げられない!」。こういった議論はピッチ上では当然だ。しかし近年のG大阪は、選手同士の議論が少ないチームだった。

 「前から試合中も意見は言っていたんですよ。でもこの試合で、それに反応してくれたのが(昌子)源やった。今までは、返しが少なかった。もっと前に出ろ、と言えば、わかりました、みたいな感じになっていた。源が意見をパンと返してくれたことが大きかった」。倉田は仙台戦での議論を、こう振り返っていた。

 試合後も2人を中心にこの議論は続いた。すると2人でスタートした議論は、やがて3、4人と輪が広がっていき、MF山本ら若手も積極的に意見を出すように。「サッカーの話が増えたのは確か。自分の意見を言うことによって、責任感が強くなっている。人に言うなら、自分はやらないといけない。きっかけを源が作ってくれた」と、倉田はこの出来事からチームが変化してきたことを感じていた。この後、9月19日の札幌戦から、チームは12戦負けなしと波に乗っていくことになる。

 昌子は加入直後から、G大阪にピッチ内外での会話が少ないことを懸念していた。しかし右足首の状態により、常時ピッチに立てる状況ではなく、ぐいぐいと自らの意見を主張してチームを引っ張っていく、ということは難しかった。そんな中でもタイミングを逃さず、チームリーダーの倉田への“反論”という形で、チーム内のコミュニケーションを活性化させた。これがG大阪の悪癖と言えた「集中力不足による、あっさりとした失点」の減少、僅差の試合をものにする、という勝負強さにつながったとみている。

 チームは今季からハイプレスを取り入れたが、これもコミュニケーションが増えた中で、ハイプレスを仕掛ける時間、引いて構える時間、と使い分けられるようになった。もちろんGK東口順昭や、DF金英権、MF井手口陽介(シーズン終盤は負傷離脱)など個人としての好調もあった。さらにFWパトリックの前線からのハードワークに引っ張られ、アタッカー陣の守備意識も向上した点も見逃せない。20勝のうち15勝は1点差での勝利だったが、守備に対する自信をつかんだことで、リードした試合終盤にもあわてず守り切った試合も多かった。

 就任3年目の宮本監督も、はっきりと自身のカラーとして「守備」を打ち出した1年になった。過去2年は守備へのこだわりを見せる中で、クラブのカラーでもある攻撃的なスタイルへの“遠慮”があるように見えていた。攻撃が持ち味の選手たちが多い中で、守備をベースにしたチームで結果を残していく中で、宮本監督も自信をつかんでいったように感じる。

 しかし2位となれば、来季は優勝への欲が出る。守備の強みだけで優勝できるほど、J1は甘くはない。宮本監督も「もっと点は取りたいとは思っている。今がベストではない。より攻撃的なアクションを増やすことはやっていきたい」と語っており、天皇杯決勝で川崎に敗れた選手たちも、攻撃面での変化が必要と話していた。作り上げた守備という土台の上に、クラブが掲げる攻撃的なスタイルをどう積み上げていくのか。2021年はタイトルを目指す、という目標の元で、困難な課題にも向き合っていくシーズンとなる。(G大阪担当・金川誉)

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