「応援したいから、応援に行かない」 箱根駅伝テレビ観戦は「紙の辞書」を引くということ

ニューイヤー駅伝を制した富士通のアンカー・浦野の力走を見ようと、沿道に人が集まる場面も
ニューイヤー駅伝を制した富士通のアンカー・浦野の力走を見ようと、沿道に人が集まる場面も

 応援したいから、応援に行かない。コロナ禍での箱根路。テレビ越しに見守る、と聞いて真っ先にイメージしたのは「紙の辞書を引く」ということだった。

 話は高校時代までさかのぼる。福島県立福島高校という、自宅から近く、勉強と陸上にちょっと力を入れていた私の母校。英語や現代文、古文といった語学系の授業で一番最初に言い渡されたのは「電子辞書禁止」。先生たちの言うことはみんな同じだった。

 「紙の辞書を引きなさい。世界が広がります」

 最初は何のことかさっぱりだった。それでも当時、真面目なフリをしていた私は、分厚く重い辞書を背負って登下校していた。分からない単語があれば、辞書を開いた。肩がこる。面倒くさい。それでも使い続けると、1つ、気付いたことがあった。

 「こんな言葉もあるんだ」

 ある単語を探そうとすると、嫌でも他の言葉が目に入る。ちょっとした爽快感と記憶の積み重ね。次第に、言葉の海を「探す」のではなく「発見する」という行為になりつつあった。

 テレビで応援するというのは、色んな選手の走りを見ることができるということに他ならない。この日行われたニューイヤー駅伝でも、テレビを通して応援した多くの人が、いろいろな選手の魅力に気付いたのではないだろうか。ひいきのチームはもちろん、知らない選手、知らない大学、様々な情報にあふれている。その走りや思い、表情に初めて触れて、惹かれていくかもしれない。

 本来は現地応援=アナログであり、テレビ観戦=デジタルな文化。しかし、視野の広さで考えると現地応援は「電子辞書」のようなもので、ピンポイントな思いを届ける。その熱や感動は何物にも代えがたいが、今回はどうかテレビ観戦、全体を見回せる「紙の辞書」を引いて欲しい。210人のランナー、それを支える人も含めれば数え切れないほどの物語がある217・1キロ。新たな発見や「推し」が見つかるはずだ。

 私たち記者も、生で選手の走りを見ることはできない。それでも、いつか必ず、沿道から力一杯の声援を届けられるレースがやってくる。そんな日のために、もっと箱根駅伝を好きになるチャンス。こたつにみかん、願わくばそこに本紙も添えて、学生ランナーの激走を画面越しに見守って欲しい。(箱根駅伝担当・太田 涼)

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