武田鉄矢、名曲「少年期」を語る…85年公開映画「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」主題歌

名曲「少年期」について語った武田鉄矢
名曲「少年期」について語った武田鉄矢

 来年3月5日に「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021」が封切られる。1985年に公開された同名映画のリメイク作となる。

 36年前の作品は現在もドラえもんファンの間で高い人気を誇るが、特に当時35歳の武田鉄矢が作詞・歌唱を担当した主題歌「少年期」は、ドラえもん史上に輝く屈指の名曲として今も多くの「隠れファン」を抱えている。

 7歳の少年が悲しみに暮れながら電信柱の光を見上げた時に去来する思い。遊び疲れて眠り、目覚めた時は夕暮れ時になっていた時の不思議な思い。自分はなぜ大人になるのか、いつ頃大人になるのか。誰もが少年期に抱いた感情を言葉にし、感傷的なメロディーに乗せた歌は、今も36年前と変わらない思いを聴き手に与えている。

 なぜ、どのようにして「少年期」は生まれたのか―。71歳になった武田に聞くと「話、長くなりますけど、いいですか?」と言って語り始めた。

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 私が生まれたのは戦後すぐの時代でした。あの頃、街中に灯りが灯っていたのは東京だけだったと思うんです。私が生まれた博多も含め、日本のローカルはまだ貧しゅうございました。子供心にも、まだ少し、生活のどこかに戦争の匂いが残っていたように感じていたと思うんです。

 私は今でも後遺症があるくらい、毎月の15日が嫌いでした。親父のね、給料日なんですよ。黙って給料袋を持って帰ってくればいいのに、親父は酒を飲んでくる。9時過ぎになって、ようやく帰ってきたと思ったら酒の匂いをさせているんです。で、お袋と凄絶な喧嘩を始める。その風景が私の貧しい少年時代の象徴なんです。

 生活に困窮する両親の争いを見ていると、子供にはもう行き場が無くなる。どうしたかと言うと、父ちゃんと母ちゃんの争う声が聞こえない公園まで行って、白熱灯の明かりを見つめるんです。すると、切なくて涙ぐんでしまうものですから、街灯の明かりに虹が架かるんです。断片的な万華鏡のように、まばたきをする度に見えるものが動くんですね。それを見る7つの自分は、自分を慰めてくれている現象なのではないか、と思ったんですね。

 そのような思い、なんと言えばいいんでしょうか、子供が持つ『生まれてきた哀しみ』のようなものを、ちょいと歌にしてみようかなあ、と思ったんです。それを1番の歌詞にしました。

 2番は…ですね、実際に遊び疲れて眠ってて、目を覚ました時、家に誰もいない時があったんです。母親が買い物か何かに出ていたんでしょうけど『…母ちゃん? …母ちゃん?』って。自分は捨てられてしまったんじゃないか、僕だけを一人、家に残してお袋が逃げちゃったんじゃないか、という寂しさを歌にしたんです。

 どうして大人になるのか、いつ頃大人になるのか、という詞は、成長していく自分の得体のしれなさですよね。早く大きくなりたい、と思うんだけど、子供でいたい、大人を拒否したいという二次成長期の願望に重なる思いですよね。そのような何かがドラえもんの世界と重なるんじゃないかな、と思ったんです。

 歌を作ったら、藤子不二雄先生にえらく喜んでいただきました。むやみに褒めてくださったんです。藤子先生も厳しい北陸の町にお生まれになって、どこか郷愁という部分で共振したのかもしれません。

 あの歌が生まれてからずっと後、東京でライブステージをやった日のことでした。開場を待つお客さんの列の中に不良2人がいて、ずっと語り合っていたらしいんです。「武田は今日、本当に『少年期』を歌うのか!? 歌わないんだったらオレは帰るぞ!」って言ってたのを見ていたスタッフが後で教えてくれました。おそらく、その不良の子たちにも涙色の少年期があり、あの歌がどこかで響き、共有してくれているんだな、と思ったんです。

 あの「どうして大人になるのか」「いつ頃大人になるのか」という思いは中学1年まで続きました。小学6年まで私服でランドセルだったのが、丸刈りと学生服と雑嚢(ざつのう)になって。女の子を見るとドキドキして、世界の広がりのときめきになって、少年期の哀しみのようなものを脱ぎ捨てたんです。

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 3月公開の「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」の主題歌は「Official髭男dism」の「Universe」に決まった。人気バンドの書き下ろし曲にももちろん期待したいが、少年期から「少年期」を愛し続けている者としては、映画のどこかにあの歌が流れてほしい、と願ってしまう。どうして大人になったのか、いつ頃大人になったのか、などと考えたりしつつ。

(記者コラム・北野 新太)

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