【川崎】中村憲剛「物事は終わりがあるから美しいんだよ」引退決意し長男に送った手紙…元日現役ラストマッチ

スポーツ報知
12月21日、笑顔で引退セレモニーに登場した川崎・中村憲剛(カメラ・宮崎 亮太)

 川崎の元日本代表MF中村憲剛(40)が1日、現役最後の試合となる天皇杯サッカー全日本選手権の決勝を迎える。40歳の誕生日を迎えた昨年10月31日のF東京戦で決勝点を挙げた翌日にオンラインで会見を開き、電撃発表となった。2010年には南アフリカW杯に日本代表として出場。16年には最年長でJリーグMVPにも輝いた。川崎一筋18年の希代の司令塔が、ついにユニホームを脱ぐ。ラストマッチを前に、記者が憲剛との思い出をつづる。(昨年11月の再掲)

 憲剛と加奈子夫人が、5年前から約束していた引退だった。中大サッカー部の主将とマネジャーが結婚して16年。私を含めた3人のグループLINEがあり、そこでのやりとりから何度もうらやましいと思ったほど仲がいい。2人と1時間近く電話で話した。「決めていたことなんだ」(憲剛)、「そう、35歳の時に決めていたの」(加奈子夫人)。「毎年、あと何年かなと数えてやってきたよね」と声をそろえた。口調は穏やかだった。

 35歳は尊敬する川崎の寺田周平さん(現コーチ)、伊藤宏樹さん(現強化部)が引退した年齢。5年前に「まだ体は動く」と40歳をゴールにして、「戦力のまま引退したい」とハードルを設定した。練習生から入団した2003年、30歳までできるか不安だった。南アW杯に出場した10年も「あと3年ぐらいかな」と思ったという。それが、JリーグMVPに歴代最年長の36歳で輝き、37歳からJ1初制覇、連覇。特に足が速いわけでもなく、体が大きいわけでもない。頭脳と技術で国際Aマッチ68試合6得点。エリートでなくても日本代表になれる。サッカー少年に夢を与える成長曲線には毎年の覚悟があった。

 憲剛との付き合いは13年近くになる。普段からピッチ同様、視野が広く、判断もさえる。一番感じるのは、加奈子夫人と共に人を喜ばせることが好きだ。「羽ちゃんには幸せになってほしい」。独身の私に女性を紹介してくれたことが2度ほどある。「性分なんだよね。人が幸せになってくれると自分も幸せになる」。ピッチでは伝家の宝刀・スルーパスでアシストし、チームメートを笑顔にする。「人を生かし、自分も生きる」。憲剛のプレースタイルは、彼の優しさからも作られたと思う。

 10月26日、2人は長男の龍剛くん(12)、長女の桂奈ちゃん(10)、次女の里衣那ちゃん(4)にそれぞれ手紙を書いた。引退を口頭で説明すると泣いてしまう。しっかり思いを伝えたくてペンを執った。印象的なのは龍剛くんに送った一文。「物事は終わりがあるから美しいんだよ」。サッカーをやっており、ずっとプレーを続けてとお願いされていた。納得してもらうだけでなく、心に響く言葉だった。手紙を渡した時、やはり夫婦の目に涙があふれた。(08~10年担当、編成部デスク・羽田 智之)

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