◆第43回有馬記念(1998年12月27日、中山競馬場・芝2500メートル、良馬場)
1着 グラスワンダー(牡3歳) 的場 均騎手 美浦・尾形 充弘厩舎
2着 メジロブライト(牡4歳) 河内 洋騎手 栗東・浅見 秀一厩舎
3着 ステイゴールド(牡4歳) 熊沢 重文騎手 栗東・池江 泰郎厩舎
一年の総決算と言われる有馬記念。その年に活躍したスターホースが出そろうとしたものだが、今年は残念ながら「夢の共演」ジャパンCの上位3頭が参加しない。ただ、それを割り引いても、多彩な顔ぶれがそろっている。「馬券的にはおもしろい」と言う声が多いのもうなずける。
お祭りらしく、世相を反映させながら遊ぶファンも少なくないだろう。本来なら「五輪イヤーの有馬記念は…」などという「おもしろデータ」が出てくるはずだったが、延期されたので「なし」。そこで言われているのが日付。今年は27日開催である。何の因果関係もないのだが、過去7回行われた27日の有馬記念は荒れているのである。連対した14頭の中で1番人気は2009年のブエナビスタのみ。付け加えるのなら2番人気も同年のドリームジャーニーのみである。
1987年は、4枠に同居していた1着メジロデュレン(10番人気)、2着ユーワジェームス(7番人気)の「ユメ」馬券。1992年は、メジロパーマー(15番人気)が逃げ切り、2着にレガシーワールド(5番人気)の大波乱。馬券に絡んだ伏兵も名前を見ると、人気を下げていた、正確には人気にならなかった実力馬ばかりだった。
過去の「27日のグランプリ」のなかで、悔やんでも悔やみきれない年がある。本紙予想を担当していた1998年。優勝馬はグラスワンダーだった。あのグラスワンダーが4番人気だったのである。2着のメジロブライト(3番人気)に本命を打っていたので、グラスワンダーに印を回しておけば、馬連4430円をヒットできた。当時は馬単、3連単がない時代。十分に責任を果たせていたのに、本当に情けないというか、痛恨だった。
毎日王冠で戦列に復帰したが5着。続くアルゼンチン共和国杯も6着と、不振にあえいでいた。ステッキを連打して、これでもかと気合を付ける的場均のアクション。トレーナー尾形充弘の「ここまできたら、状態うんぬん言っておれない」という悲壮感さえ漂わせるコメント、信頼できる先輩記者の「良くなりきっていないかな」の言葉もあり、甘い判断につながった。
「サイレンススズカ、エルコンドルパサーと真っ向勝負で、どんなレースをするのかと言われた馬。印くらい入れておけよ」という周囲の叱責はごもっともだった。言い訳をするなら、他に印を打ちたい魅力的な馬が山ほどいる。有馬記念は、そんなレースである。ぼやいても仕方がないが、年の瀬が来るたびに思い出す。
今年は登録馬にG1ホースが8頭いる。ただし、JCの上位3頭が不在であることを念頭に置けば…ではないか。(敬称略)
(編集委員 吉田 哲也)