【五輪の倫】選手が肩身狭いなら五輪じゃない

五輪マークと国立競技場
五輪マークと国立競技場

 「オリンピックって…」と、友人がもっともなことを言うのである。「“もしやらないと日本は大変なことになる”みたいに言う人もいるけど。この先何年にこんな影響があって、発展がこのぐらい遅れて…みたいなことをきちんと説明してくれないと、今のご時世でオリンピックやるって言われても納得いかないよね」

 東京オリンピック・パラリンピック準備局は17年4月、五輪後10年までも見越し、経済効果を約32兆円と見積もった。仮に五輪が開かれなければ、この胸算用は水泡に帰す。関西大の宮本勝浩名誉教授は、中止時の経済的損失を約4兆5151億円とはじき出した。数字はまちまちだが、経済に大きな影響があるのは理論的にはもちろん分かる。

 ただし、「経済」に損失があっても「社会」や「生活」に打撃があるかは、また別の問題であろう。実際、日本は50年以上も―冬季大会は別として―五輪のない時間を過ごしてきた。64年東京五輪が高度経済成長に一役買ったが、きっかけではあっても全ての要因ではない。「今年五輪がなくても別に経済は回っているし、そんなに影響はないでしょう」という冷静な意見が一般的にあるのは、紛れもない事実である。

 大会関係者の開催へ向けた努力には頭が下がる。一方で、努力に見合うほど五輪への支持率が上昇しないのは、市井の人々の目線に立った説明がおろそかになっているからと感じる。綿密なコロナ対策や、「五輪は人類がウイルスに打ち勝った証し」「希望の光」という抽象的な概念の持つ説得力は限度がある。データや分析に基づいて、より現実に即した未来図や、国民へのメリットが提示できなくては、共感はいつまでたっても得られないだろう。

 選手が肩身の狭い思いをするような五輪は、もはや五輪ではない。アスリートファーストをうたうなら、選手が歓迎される空気をつくり出すために、国民へ世界へと発信するのが、今、主催者側(もちろんIOCもだ)のなすべきことだ。それを内村航平に言わせてはいけないのではないか。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年、青森県生まれ。43歳。横浜市立大から2000年入社。整理部などを経て、08年からプロ野球、18年から五輪担当となり、主に水泳競技、スケートボード、空手などを担当。

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