競歩・鈴木雄介、“諦める”ことも大切…リレーコラム

鈴木雄介
鈴木雄介

 昨秋のドーハ世陸以降に抱えてきた慢性疲労について精密検査したところ、血液の状態があまり芳しくないことが分かりました。何らかの理由で(男性ホルモンの)テストステロン値が低くなることで、疲労が蓄積しやすく、運動しても常に疲労感がある中で体を動かすことになります。無理してやると再発の恐れがかなりあるということで、今は無理せず、体の状態を元に戻すことに努めています。何か月かかるか分からないので、いい意味で“諦めて”ほどよく休養する形です。

 正直、今の体の状態で五輪のことを考えると、すごく焦りは出ます。ただ、ストレスも慢性疲労に影響するので、「五輪に向けて何をしないといけないか」という考え自体を一度捨てなければいけません。32歳になって、陸上界ではベテランの領域ですが、まだまだトップレベルでやるのが私の目標でもあります。今の状態で無理しないことは必ずしもマイナスではない。“諦める”ことで、東京五輪に出られる状況、金メダルを目指せる状況にもなると思います。

 「五輪の金メダル」は現状の最高目標ですが、原点を振り返ると違った夢を抱いていました。それは「世界で輝く」こと。競歩を始める前はサッカーのクラブチームに入っていて、W杯や海外チームでプレーする自分を想像していた。中学生になって競歩を始めてからも、最初は単純に「世界一」になりたいと思っていた。それがいつの日か「金メダル」に変わり、またそれが「五輪の金メダル」へと変わっていたんですね。

 慢性疲労の状態になっていろいろと自分と向き合う中で、原点と今の夢には、キャリアを重ねていくにつれてズレが生じていたと気づきました。ただ楽しく単純に世界一を目指すことが、自分の目標であり競歩をやっている意味。何が幸せかといわれたら、世界一に向かって努力すること自体が幸せだから―。無理して体を壊すことなく、長くトップで競技人生を続けられるように。今は、ゆっくりと歩んでいきます。

 ◆鈴木 雄介(すずき・ゆうすけ)1988年1月2日、石川・能美市生まれ。32歳。辰口中1年で競歩を始め、小松高時代に全国高校総体制覇。順大を経て富士通入り。20キロは2011年大邱世陸8位入賞。15年3月の全日本能美大会でマークした1時間16分36秒は、現在男女通じて日本勢唯一の世界記録。50キロは19年秋のドーハ世陸で日本勢初となる金メダルを獲得し、東京五輪代表内定。171センチ、58キロ。

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