ラスベガスでKO勝利の中谷正義 引退を翻意させた大先輩と同じ道を歩め

ラスベガスから帰国した中谷正義(帝拳ジム提供)
ラスベガスから帰国した中谷正義(帝拳ジム提供)

 プロボクシング前東洋太平洋ライト級王者でWBO世界同級14位の中谷正義(31)=帝拳=が、日本時間13日に米ラスベガスのリゾート施設、MGMグランドで臨んだ一戦で、IBF世界同級5位フェリックス・ベルデホ(27)=プエルトリコ=とダウンの応酬の末、逆転の9回TKO勝利を収めた。ボクシングの聖地での劇的な結末は、既視感がある光景だが、久々に胸が躍る思いがした。

 14日に帰国した中谷は「勝ててホッとしました。一度は引退を決めたけど、ここまで来るには色んな人たちの励ましがありましたから」と、右まぶたを腫らせながら静かに語った。

 東洋太平洋ライト級王座の11度防衛の実績。日本人選手にはなかなか巡って来ないライト級での世界戦の機会を待っているうちに5年も防衛を続けていた。そこに昨年7月、IBF世界同級王座への挑戦権をつかめるチャンスが舞い込んだ。相手はのちに統一ライト級世界王者となるテオフィモ・ロペス(米国)。敵地での大一番で食い下がったものの、判定負け。18試合目でプロ初黒星を喫した。

 当時の胸中を「世界王者を目指すには、また日本や東洋太平洋タイトルを取るところからやり直しになる。そうなれば2、3年ぐらいはかかるから、もう潮時かなと思い、引退を決めました」と振り返った。だが、ボクサーとして老け込むにはあまりに早い年齢。傷心の中谷を目覚めさせた一人が、元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者・石田順裕氏(45、現・寝屋川石田ジム会長)だ。

 母校・興国高(大阪)、近大の先輩にあたる石田氏の「まだまだチャンスはあるぞ」という助言に心が奮い立った。大阪を飛び出し、12月に東京の帝拳ジムへ移籍し、心機一転を図った。中谷を励ました石田氏のプロボクサー人生の“第2章”も実は聖地から始まった。

 世界王座を失った後の2011年4月に復帰戦に臨んだ。試合会場は中谷と同じMGMグランド。大観衆が集ったガーデンアリーナで行われた試合で、当時「未来の世界王者」とも称された強豪のジェームス・カークランド(米国)から3度のダウンを奪い、初回TKO勝利を飾った。ラスベガスでの初めての試合で番狂わせを演じると、その後はIBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)など2度の世界挑戦や大物選手との試合にも恵まれた。

 1年5か月ぶりの再起戦だった中谷は、世界ランクで格上の選手をなぎ倒した。無観客興行だったが、全米のメディアや関係者、そしてファンに強いインパクトを残せたはずだ。私の興奮の根っこは、9年前の波乱から巻き返した石田氏の雄姿に中谷を重ねたことにあったようだ。

 本人は「石田さんもそうですし、復帰するにあたって、いろんな人たちを巻き込んだ。支えてくれた人たちのおかげで勝つことができました」と言葉は控えめ。それでも、自力で道を切り開いた大先輩と似た一歩を踏み出した中谷に、期待せずにはいられない。(記者コラム・飯塚 康博)

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