キラー・カーンの悲劇、自転車でひき逃げ送検…金曜8時のプロレスコラム

店内で涙を流すキラー・カン(カメラ・竹内 竜也)
店内で涙を流すキラー・カン(カメラ・竹内 竜也)

 元プロレスラーで「居酒屋カンちゃん」(東京・新宿区百人町)を経営、歌手でもあるキラー・カン(73、本名・小沢正志、現役時代はカーン表記)が9日、歩行者を自転車ではねて負傷させ、そのまま逃走したとして、警視庁新宿署にひき逃げなどの疑いで書類送検された。

 何度もこのコラムに登場してもらってきただけに、この話題を避けるわけにはいかない。新宿署によると、10月18日の夕方、同区内の路上で、自転車で走行中に女性とぶつかり、重傷を負わせたが、救護措置を取らずに走り去った疑い。

 現役時代は195センチ、140キロの巨漢で“蒙古の殺し屋”“アンドレの足を折った男”という異名を持つ悪役として日米で活躍したが、30年前から居酒屋を経営し、穏やかな語りで歌手としてもCDを3枚リリースしたカンちゃん。

 4回移転しながらも新宿にこだわり続けた。「サラリーマンの味方」を標ぼうし、「必ず本人がいる」というのが魅力だった。5軒すべてに通ってきただけに、フジテレビのニュースを見て、すぐに電話すると「出ましたか。店の前を自転車で通った時のことのようなんです。あれだけ人通りが多いから接触したかもしれません」と元気がなかった。

 「居酒屋カンちゃん」はJR新大久保駅近くで、このコロナ禍でも人通りが絶えず、車と歩行者のトラブルも多い地域で、途切れない通行人を自転車で横切って店を開けるのが日常だ。

 「警察に防犯カメラを見てもらって確認してもらってますが、これだけ体も大きくて、店の前だし逃げるなんてことはないんです。『(被害者の女性に)店に来てもらってください、ごちそうしますから』と警察に言っても会わせてくれない」と嘆く。「コロナで短時間営業になって苦しいながらもお客さんに励まされて何とかやってきたのに…」と気を落とした。

 このコロナ禍で大打撃を受け、今年も何回か顔を出したが、次に行く時にはもうないかもしれない、という覚悟はしていた。事故が公になっても“逃げずに”営業するというので、ニュートラルに書いてもらおうと格闘技担当ではなく、社会担当の記者を派遣したら、スポーツ紙のみならず、一般紙、テレビまでが店に詰めかけ、カン店主を取り囲んだ。店内で会見したのかと思うと、常連客が激励に集まっており、店外での囲みになったという。知人の芸能関係者が反省の文書を配布して収めるはずが、しゃべりすぎて恨み節をこぼしてしまう一幕も…。

 新日本プロレスの金曜夜8時中継「ワールドプロレスリング」(テレビ朝日)に登場していたキラー・カーン。全日本プロレスに参戦した時も土曜7時の「全日本プロレス中継」(日本テレビ)に出場していた。ゴールデンタイムに登場し、各社が現役時代の写真を所有していたから、ニュースが増幅される。「テレビスターの悲劇」は宿命だろう。

 坂口征二に反逆した時も、長州力を裏切った時も、巨体にどこかさみしげな哀愁があり、人の良さがにじみ出ていた。いきなり元“蒙古の怪人”が自転車に乗ってぶつかってきたという被害に遭われた女性には、お見舞い申し上げるが、キラー・カーンが、心優しき悪役だったということが示談交渉で伝わることを願う。(酒井 隆之)

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