先天性難聴の長男のレスラーデビューを好アシスト…今井絵理子議員が見せた安堵の笑顔

デビュー戦後に手話でインタビューに答える今井礼夢と通訳する今井絵理子議員(カメラ・小泉 洋樹)
デビュー戦後に手話でインタビューに答える今井礼夢と通訳する今井絵理子議員(カメラ・小泉 洋樹)
デビュー戦でTAMURAに渾身のジャンピングエルボーをたたき込む今井礼夢
デビュー戦でTAMURAに渾身のジャンピングエルボーをたたき込む今井礼夢

 16年間支え合って生きてきた親子だけが持つ温かい空気感に包まれ、取材するこちらまで優しい気持ちになった。

 7日に行われたプロレスリング「HEAT UP(ヒートアップ)」の神奈川・新百合ケ丘トゥエンティワンホール大会。新型コロナ対策で観客数は通常の半分に抑えられた200人。全員にフェイスシールドが配られた“厳戒大会”で、元「SPEED」の今井絵理子参院議員(37)の長男・今井礼夢(らいむ=16)が先天性難聴という障害を乗り越え、堂々のレスラーデビューを飾った。

 開始1時間前に開場入りした私が驚かされたのが、グッズ売り場に立った礼夢の隣に公務の合間を縫って駆けつけた今井氏が寄り添っていたことだった。マスク越しでも隠せない元スーパーアイドルのオーラを放ちながら、ファンと接する礼夢の手話を笑顔で通訳。片手に持ったホワイトボードにサイン希望のファンの名前を書いて見せるなど、完全に黒子に徹していた。

 午後7時20分。今井氏が客席で目立たぬよう見守る中、白と紫のショートタイツで堂々と入場した礼夢。試合前には、母がアイドル時代からファンのディアナ・伊藤薫(49)と、今井氏とは07年に離婚した父でロックバンド「175R(イナゴライダー)」のボーカル・SHOGO(40)から花束が贈られた。

 そして、鳴り響いたゴング。「HEAT UP」代表で師匠のTAMURAこと田村和宏(40)との一戦。166センチ、67キロの小柄なボディーでスピードに乗った動きを見せた礼夢だったが、TAMURAのパワー抜群の攻めに序盤から圧倒されてしまう。

 顔面へのキック、バックエルボーの連打でフラフラに。ロープを使ってのクロスチョップ、ブレーンバスターで反撃したが、アックスボンバーからのPKと畳みかけられると、最後は逆エビ固めでギブアップ。13分28秒の戦いの末、デビュー戦白星を逃した。

 試合後、マイクを持ったTAMURAは「プロの練習を乗り越え、よくここまでたどり着いたね。本当に君は偉いよ。なにしろ、君のお母さんは俺に勇気を与えてくれたSPEEDだぜ。礼夢がデビューすることですごい反響がありました。今まで来なかったマスコミが、こんなに君を取材に来てくれました。チケットも完売。礼夢、良く聞け! どんどん夢、かなえようぜ!」と、用意した手紙を読み上げた。

 その言葉を汗まみれで、じっと聞いていた礼夢は続けて手話であいさつ。それをマイクを持った今井氏がリングの端で通訳する。

 「今日の試合、ありがとうございました。入会した後、いつも練習でたくさん教えてくれて、本当に楽しかったです。本当にありがとうございます。次はタッグ(マッチ)をお願いします」と、TAMURAにアピールした。

 都立立川ろう学校の3年間は野球部に所属するかたわら、ジム通いで体をつくった礼夢。10月、2度目の挑戦でスクワット500回、腕立て、腹筋、背筋を各50回3セット、縄跳び5分間で失敗3回までの課題をクリアし、入団テストに合格。生まれつき耳が聞こえないため、2か月にわたって、ホワイトボードを使って他の選手とコミュニケーションを図り、厳しいトレーニングを積んできた。

 全5試合が終了した後、囲み取材に応じた今井親子。今井氏の手話通訳のもと、礼夢は「悔しい気持ちもありますけど、楽しかったです。今日は60点だけど、もっと強くなって次は倒したいと思います」と、16歳のあどけない笑顔を見せた。

 今井氏も「いつもと表情が違って、顔つきも変わって正直、驚きました。ケガもなく、無事で本当に安心しました」と、一人の母の顔に戻ってニッコリ。

 元SPEEDだけに「エンターテインメントの先輩として、どう見た?」と言う質問も飛んだが、「先輩としては、楽しむことが大事だなと思います。それが大事かな」と答えた今井氏。

 試合前、「不安もあるし、怖いです」と言う今井氏の母親としての正直な思いも耳にしていたから、私も思わず質問していた。

 「礼夢さんの13分間の戦いを見届けて、母親としての怖さ、不安は少し薄れましたか?」―。

 大きな目でこちらを見て、ニッコリとほほえんだ今井氏は「今は無事終わって、ホッとしています」と正直にポツリ。さらに「試合中は何度も一歩(席から前へ)出ちゃうんだけど…。母として一歩出ちゃうんだけど、まあ、我慢しました。そこは何があっても、ケガがあっても見守るしかないなと思って、ぐっとこらえて観戦させていただきました」と笑顔で続けた。

 一夜明けた8日にも自身のインスタグラムに「夢が一つ叶いました。聞こえないことを知ったあのとき誓ったように、息子の夢の選択を受け入れ、母はどんな時でも笑顔でいようと、どんな時でも味方でいようと。今日がゴールではなく、今日からがスタートです。デビュー戦は負けたけど、これからも挑戦し続けて、多くの方々に笑顔と勇気を与えられる選手になってほしいと思います」と、つづった今井氏。

 そう、「笑顔と勇気」こそが、この母子のキーワードだ。今回の今井氏の行動に「5日に臨時国会が閉会になったとは言え、すぐにプライベートで息子の応援にかけつけるなんて…」という批判や、さらには3年前のスキャンダルを持ち出して議員失格と“口撃”する声まであるのを、私は知っている。

 だが、少しだけ優しくなって欲しい。障害を持って生まれた一人息子の勇気ある挑戦と、それをあくまで黒子に徹して、懸命に応援する母親の姿のどこに文句があるのか。あえて言うが、障害を持つ人も多かった観客の一人ひとりと完璧な手話を交えてコミュニケーションをとり続ける今井氏の姿を、私はこの日の会場で何度も見た。

 激闘を終え、時計も午後9時を回ったホールの外で手話を交えて笑顔で見つめ合った2人。母子の16年越しの夢がスタートした瞬間を見届けられた私は、心からホッとする温かさを感じ取っていた。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆今井 礼夢(いまい・らいむ) 2004年10月18日、東京生まれ。16歳。ロックバンド「175R(イナゴライダー)」のボーカル・SHOGO(40)と今井絵理子氏との長男として生まれる。両親は07年に離婚。生まれつき耳の聞こえない先天性難聴の障害を持つも都立立川ろう学校では野球部に所属。高等部には進学せず、小学生の頃からの夢だったプロレスラーを目指し、17年10月、2度目の挑戦で「HEAT UP」の入団テストに合格。12月7日の神奈川・新百合ヶ丘大会でのTAMURA戦でデビュー。166センチ、67キロ。

デビュー戦後に手話でインタビューに答える今井礼夢と通訳する今井絵理子議員(カメラ・小泉 洋樹)
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