俳優の赤楚衛二(26)、町田啓太(30)が共演し、現在放送中のテレビ東京系連続ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(木曜・深夜1時)が、深夜帯で異例のヒットを記録している。通称「チェリまほ」と呼ばれる人気BL(ボーイズラブ)コミックの実写化。童貞のまま30歳を迎え「心が読める能力」を身につけた主人公・安達(赤楚)が、イケメン同期・黒沢(町田)の自分への恋心に気づいてしまうラブコメディーで、台湾やタイなど海外でも配信が始まっている。このほど赤楚がスポーツ報知のインタビューに応じ、国境を越えた快進撃について語った。
―連ドラ単独初主演作ですが、最初に作品のオファーをもらったときはどう感じましたか?
「もともとあまり目標を立てないタイプなんですが、それでも単独主演はひとつの目標でした。でもうれしさと同時に『童貞で、30歳で、BLで、魔法使いの役だよ』って言われて、情報量の多さに『何のこと?』って、一瞬戸惑いはありましたね」
―ここまでの反響は予想していましたか?
「台本を読んだ段階で、安達にも黒沢にも感情移入できて。それぞれの心情が丁寧に描かれていて、お互いの心に触れているような感覚で読みました。人が人を思うことで生まれる、ちょっとした喜びや寂しさ、うれしさ。この世界観が伝わったら、みんなそういう気持ちになれるんじゃないかなと思いました。でもさすがに国境を越えたときには、言語じゃなくても伝わるんだと感動しました」
―赤楚さんのインスタグラムには、海外のみなさんからの多言語のコメントが並んでいますね。
「ビックリしています。翻訳して読んでいますが、基本は『かわいい』って書いてくれているみたいです。人生でこんなにかわいいと言われたことはないです(笑い)」
―なぜここまで、視聴者を引きつけたんだと思いますか?
「とてつもないラブストーリーを見終わったときに、ふと日常に引き戻される感覚があるじゃないですか。でもこの作品は、愛だけじゃなくて、人生観とか、どこかしら人が引っかかるポイントがあるんじゃないかって思います。黒沢のように外見で評価されたり、六角(草川拓弥)のように夢を諦めながらも頑張っている姿だったり…」
―自分に自信が持てない、さえないキャラクターである安達役について、どうアプローチしましたか?
「僕自身も人見知りなところがある。人と接するのが怖いとか、他人とは比べず自分軸で生きてはいるけど、どこかで誰かにすくい上げて欲しいという安達の葛藤みたいなものは持ちながらやっていました。あとは、ヘアメイクさんがモッサリさせてくれたり、衣装でスーツをダボッとしたり、革靴の底を薄くしてくれたり。そういったことにも感謝ですし、あとは安達の部屋がすごく居心地が良くて。まわりから刺激を受けずに生きている安達の生活が、あの部屋から見えた気がしました」
―本間かなみプロデューサーから「赤楚さんは現場に入った瞬間、憑依したみたいに猫背になっていた」と聞きました。
「それ、やってました! 猫背になると、重心が下がって小さくなれる。(黒沢との身長差で)『あいつ、178センチも絶対ないだろ』と思われてそうだな、と自分でもドラマを見て思います。あと心がけていたのはリアル感。モノローグも、演技というより、普段のしゃべり方に近いようにしゃべっていました。自分の感覚を大事に、それに頼ってお芝居する。本当に楽しかったです」
―町田さんとの共演はいかがでしたか。
「初めて会ったとき『さわやかな人だな』と思ったんですが、本当に裏表のない人で。物事を考える深さだったり、お芝居も本当に『黒沢を超える黒沢』というぐらい徹底していて。まわりに気配りできる視野の広さや、どんなことでも真剣にむきあっている姿は、ああいう男になりたいという理想型です」
―ドラマでは心の声が聞こえる設定ですが、実際の撮影は、町田さんの声は聞こえてこない。苦労はありましたか。
「町田さんの顔をみれば大丈夫だったんです。本当に言っているように聞こえるんですけど、顔が見えないシーンのときは難しくて。お互いの『秘密の合図』みたいなのを決めて伝え合っていました」。
―ドキドキするシーンで思わず照れちゃうようなことはありましたか?
「役で照れくさくなったことはありますね。ウインクされたり、『口にクリームつけてるよ』とか言われると、これがキュンなのか? って(笑い)」
―ドラマも佳境になってきました。注目してほしいポイントはありますか?
「安達と黒沢の関係性の変化ですかね。黒沢の気遣いにだんだん安達が気づけるようになってきて、ちょっと人の心を読むことに慣れてきた、ってことが今後の肝になってくると思います」
―コロナ禍の大変な状況ですが、日本の視聴者や海外のファンにもメッセージをお願いします。
「いまのご時世、人とつながることが希薄になっている。でも人を思いやる優しい気持ちがこの作品の大事にしているところ。見終わったあと、絶対に幸せになれると思いますし、そういう人がひとりでも増えて、少しでも幸せになってほしいです」