新谷仁美、目標は女子トラック93年ぶり五輪メダル 世界を「ぎゃふんと言わせたい」単独インタビュー

「東京五輪でメダル獲得!」と目標を記した新谷仁美(カメラ・太田 涼)
「東京五輪でメダル獲得!」と目標を記した新谷仁美(カメラ・太田 涼)

 4日の陸上の日本選手権女子1万メートルで18年ぶりの日本新記録となる30分20秒44をマークして優勝し、東京五輪代表に内定した新谷仁美(32)=積水化学=が5日、大阪市内でスポーツ報知の単独インタビューに応じた。来夏の東京五輪では、1928年アムステルダム大会800メートル銀の人見絹枝さん以来、女子トラック種目93年ぶりのメダルを目標に掲げた。

 柔らかな笑みをたたえながら、新谷はゆっくりと口を開いた。02年に渋井陽子が樹立した30分48秒89を28秒45も上回る、驚異の日本新をマークしてから一夜。充実感と、少しの疲労感が漂う。

 「できるかも、とイメージしていたことを、少しずつ形にできている。もちろん、日本新が世界でのメダルとイコールにならないことは百も承知なんです。でも、まずはそこに行かないと見えない景色だから」

 スタート前に見せた泣きそうな表情とは打って変わって、明るい女王。東京五輪への目標を色紙にしたためてもらうと、「メダル獲得!!」と力強い言葉。28年アムステルダム五輪800メートル銀の人見絹枝さん以来、女子トラック種目93年ぶりの表彰台を宣言した。一度は競技を離れ、18年6月に現役復帰。描いた未来を着実に歩んできた自負がある。

 「少なくとも、30分30秒前後では走れないと、五輪の舞台には立てないと思っていました。できるところから段階的にクリアしてここまで来られた。やるからには迷わずに突き進む性格。自分が決めた以上、責任を持ってやり切ろうと取り組んで、1歩ずつ進めている」

 五輪5000メートルは96年アトランタの志水見千子の4位、1万メートルも同大会の千葉真子の5位が日本女子最高順位。マラソンでは2000年シドニーの高橋尚子と04年アテネの野口みずきの2大会連続金など輝かしい実績があるが、アフリカ勢による高速化に乗り遅れているのが現状だ。

 「現実的に考えたら、日本人は(メダルは)無理だろうと思われがち。そこを、私はどうしても、ぎゃふんと言わせたい。日本人でもやれるということを証明したいと思っています。今後は、五輪までに5000メートルやハーフマラソンで日本新というのが1つのターゲットになります」

 描く青写真は明確だ。まず5000メートル(14分53秒22)とハーフマラソン(1時間6分38秒)で日本新。それを経て東京五輪のメダル。その先に42・195キロへ挑むことも明かした。二人三脚で強化に取り組む横田真人コーチ(33)=TWOLAPS=は「ここまでは、ハイペースを刻む走りを求めてきた。これからは(スピードに)波のあるレースでどう戦うかを考えないと」と狙いを明かす。

 「1万メートルの強化という中で、コロナ禍が落ち着いたらマラソンにも挑戦するつもりです。もちろん、やるからには日本記録(2時間19分12秒)を狙う。トラックにつながる足作りですけど、日本新を出すレベルじゃないと世界と戦うには遠いですから」

 さまざまな挑戦は、あくまで1万メートルで勝負するため。平たんな道のりではないが、五輪メダルにたどりつくだろうと思わせる覚悟と走りが、新谷にはある。(太田 涼)

 ◆新谷のこれまで

 ▼13年8月 モスクワ世陸1万メートルで5位。残り1周まで先頭を引っ張る積極性を見せた。

 ▼14年1月 「全てを懸けた大会(モスクワ世陸)でメダルを取れなかった」と、25歳の若さで引退宣言。OLとして働き、ランナーとして走行距離はゼロ。

 ▼18年6月 約5年のブランクを経て日体大競技会3000メートルで現役復帰。

 ▼19年9月 ドーハ世陸1万メートルで11位に終わり涙。

 ▼20年1月 ヒューストンハーフ(米国)で1時間6分38秒の日本新記録を樹立。

 ▼同年9月 全日本実業団選手権5000メートルで日本歴代2位の14分55秒83で2位。

 ▼同年11月 8年ぶりの参戦となったクイーンズ駅伝3区で、区間記録を1分10秒更新する快走でチーム最高の2位に貢献。

 ▼同年12月 日本選手権1万メートルで18年ぶりの日本新となる30分20秒44で優勝し、東京五輪代表内定。

 ◆人見絹枝さん 日本女子として1928年アムステルダム五輪に初出場し、陸上800メートルで銀メダルを獲得。26年には大阪毎日新聞(現・毎日新聞社)に入社し、日本初の女性スポーツ記者としても活躍。病気のため31年に24歳の若さで死去。

 ◆女子1万メートルのライバルたち 世界記録はアルマズ・アヤナ(エチオピア)が16年リオ五輪で樹立した29分17秒45。新谷の30分20秒44は世界歴代22位だが、ここ10年の記録に絞ると8位に相当。アフリカ勢に加え、昨秋のドーハ世陸で1500メートルと1万メートルの2冠に輝いたシファン・ハッサン(オランダ)らが強力なライバルになりそうだ。

 ◆新谷 仁美(にいや・ひとみ)1988年2月26日、岡山・総社市生まれ。32歳。総社東中で陸上を始め、興譲館高時代には2005年世界ユース3000メートル3位。卒業後は豊田自動織機に進み、佐倉アスリートクラブ、ユニバーサルエンターテインメントなどに所属。07年東京マラソン優勝。12年ロンドン五輪1万メートル9位、13年モスクワ世界陸上同5位。14年に引退も、18年6月現役復帰。166センチ、43キロ。

 【取材後記】 レース翌日でも、新谷節は健在だった。フルマラソン挑戦を口にした後、「マラソンやるからって、そんな大ごとじゃないですよ」と言ってのける。さらに「出るからには日本新」と続けた。本当にその域に到達してしまいそうな雰囲気がある。

 意外だったのは、周囲の選手について言及することが多かったこと。2位の一山麻緒(ワコール)、3位でチームメートの佐藤早也伽について触れ、「一山さんも30分台は出そうだし、早也伽ちゃんもいい感じ」。陸上競技は自分との戦いになりがちだが、社会人を経験したことで視野が広がっているのだろう。レースはもちろん、陸上界を引っ張ってくれるに違いない。(陸上・長距離マラソン担当)

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