取材ではなく自己アピール?…渡部建を責め立てた女性リポーターたちに感じた違和感

3日の会見で100分間に渡って謝罪の言葉を繰り返した「アンジャッシュ」渡部建
3日の会見で100分間に渡って謝罪の言葉を繰り返した「アンジャッシュ」渡部建
謝罪会見の場で渡部建を囲んだ女性リポーターたち
謝罪会見の場で渡部建を囲んだ女性リポーターたち

 私も取材記者の1人であることを棚に上げて書くことを許して欲しい。タレントへの敬意のかけらもない会見に大きな違和感を感じた100分間に、ロートル記者なりに声を上げたくなった。

 3日夜、多目的トイレなどでの複数の女性との不倫騒動で6月から活動を自粛していたお笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建(48)が騒動後半年を経て、ついに謝罪会見を開いた。新型コロナウイルスとの闘いが続く中、現場で取材ができる記者の数が制限されたため、私は社内での生中継画面で1時間40分に及んだ質疑応答の一部始終を見守った。

 確かに渡部の行動は女性の敵と言われてもしようがない最低のものだが、個人的には妻帯者であることを知りながら有名芸能人の誘いに応じて不貞行為に及び金銭も受け取った上、「週刊文春」に情報提供する―。女性たちの一連の行動も一概に“被害者”とは言えないと思っているが、この日の問題は、そこではなかった。

 「なぜ、(不倫の場所が多目的)トイレだったのかを、まだうかがってないんですけど」―

 「女性に1万円を手渡したのは、どういう意味か?」―

 「(不倫の)お相手が複数いるが、性的なことに依存しているということでしょうか?」―

 違和感の正体は「本当に、本当に」を連発。「すみません」と頭を下げ続け、大汗をかき、時には声を震わせて答え続けた渡部に浴びせかけられ続けた、あけすけな質問の数々だった。

 20年ほど前、芸能界のスキャンダルを追う遊軍記者をやっていた頃から、その顔を知る有名女性リポーターがソーシャルディスタンスもなんのその、渡部の周りをぐるりと囲み、“エグい”言葉を浴びせ続けた。

 「最低な行為でした。馬鹿なことをした」、「私のいいかげんな行動が…。本当に申し訳ない」と謝り続ける渡部に執拗に続いた問いかけ。中でも11月18日に日本テレビ系「ガキの使いやあらへんで!」の大みそか特番「絶対に笑ってはいけない大貧民 GoToラスベガス24時!」の収録に参加したか否かについては、謝罪会見が先か、番組復帰が先かの渡部の反省の度合いを測る重要ポイントとあって、執拗に質問が繰り出され続けた。

 回数にして20回以上か、何度聞かれても「私の口からは言えません」と答え続けた渡部の姿にはネット上で「まるでいじめ」、「レポーターたちはどれだけ偉いんだ」という疑問の声も浮上。さらに一夜明けたワイドショーでは、取材する側への怒りの声も噴出した。

 日本テレビ系「スッキリ」(月~金曜・午前8時)では、MCの加藤浩次(51)が「心ない質問というか、俺がイラッとしたのは渡部を小馬鹿にする質問があったこと。絶対、ダメだと思う。そこって何なんだよ。マウンティングしてねぇか。気持ち悪くないかって思ってて」と激怒した。

 フジテレビ系「バイキングMORE」(月~金曜・午前11時55分)でも、MCの坂上忍(53)があるリポーターの「(騒動後)多目的トイレは使ってますか?」という質問について、「まず、ここが引っ掛かっちゃって」とピシャリ。さらにある男性ディレクターが後方から投げつけた「我々も“ガキの使い”で来てるわけじゃないので」という言葉に「ああいうような形で渡部くんを嘲笑するようなやり方っていうのは、僕はあってはならないと思う」と怒りをあらわにした。

 「仲の良いスタッフとかに、僕ら演者は見られる側で、常に見られる意識を持っていないといけないと言うけど、あなたたちだって見られているんですよと。会見はリポーターさんも記者さんも見られている中で、ああいうような(番組)タイトルに引っかけて、使いどころを自力で作るみたいなやり方は許せなくなっちゃった」と続けた。

 スタジオゲストだった女性リポーターが「私たちも仕事でやっているので、(取材への批判は)悲しくなる」とつぶやくと、坂上が「俺も渡部も仕事でやっているんだよ! 仕事って言葉に甘えちゃダメだよ」と声を荒らげて叱責(しっせき)する場面まであった。

 水に落ちた犬はたたけとばかりに、渡部への敬意に欠けた質問が頻出したことは事実だ。画面を見ながら、私の頭には芸能記者時代に様々に教えを請うた2人の大物リポーター・梨元勝さん(2010年死去)と鬼沢慶一さん(88)の取材時の姿勢が浮かんだ。

 どんな大物にもズバズバと突っ込んだ質問で切り込んでいく2人だったが、その根底には芸能界でスターに登り詰めた、いわゆる“選ばれた人たち”である取材対象への敬意の念が常に横たわっていた。

 大手芸能事務所のスターのスキャンダルを報じようとしないテレビ局の姿勢に怒りの番組降板までした梨元さんは同乗させてもらった車の中で、事務所マンションの一室でこう言った。

 「中村君、俺たちはスターがいてこそ、仕事ができている。どんな不祥事があっても、相手への敬意は欠かしちゃダメだよ」。何度も言われたことを覚えている。

 そう、フェイスガードをして脂汗をダラダラと流し続けた渡部を囲んだリポーターたちに決定的に欠けていたのは敬意。渡部のプライベートでの所業はどうしようもない嫌悪感たっぷりのものだが、真摯(しんし)に謝罪しようとしている一人の男に「我々も“ガキの使い”で来てるわけじゃない」と、浴びせかけるのは、いくらなんでもないのではないか。

 芸能リポーターたちの事情も分かる。著名人がインスタグラム、ブログと言った自身のSNSでいくらでも自らの情報を発信してしまう現在。大型会見自体も減少する中、今回の渡部の会見のような大舞台で自らの存在感を示さなければ、それこそ、業界で“サバイバル”ができない。

 だからこそ、「私の声で発せられた、この質問を撮って!」とばかりに、自身の媒体のカメラに向かって、すでに出た質問であっても執拗(しつよう)に聞き続ける。なぜなら、それが「仕事」だから。

 ただし、会見の場の主役はあなたではない。自分の姿が画面に映り、自分の声が電波に乗るための問いかけは取材ではない。紙面の向こう、画面の向こうで待っている読者、視聴者が知りたいのは、時の主役の姿であり、生の叫びだ。

 私も一取材者として“勘違い”だけはしたくない―。坂上の「あなたたちだって見られているんですよ」という言葉を何度も、何度も反芻(はんすう)しながら、そう思った。(記者コラム・中村 健吾)

3日の会見で100分間に渡って謝罪の言葉を繰り返した「アンジャッシュ」渡部建
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