巨人が菅野智之投手(31)のポスティング申請を行うことが3日、分かった。球団はメジャーへの夢を後押しするため、本人が同制度による大リーグ挑戦を希望した場合、容認する方針を示し、準備を進めていた。ただ、申請イコール移籍決定ではなく、大塚球団副代表は「残留の選択肢もある」と強調。コロナウイルスの感染拡大で来季の米球界の情勢は不透明で、申請後も菅野は慎重に検討を進めていく。
巨人が菅野のポスティング申請を決めた。球団は当初から、海外FA取得が早くても来年となるエースのメジャー挑戦について、夢を後押しする方針で一致。今オフ、同システムによる移籍を希望した場合、容認する方向で提出書類の準備などを進めてきた。球団の大塚副代表はこの日、申請する意向を示した。
その上で大塚副代表は「申請しても残留の選択肢もあります」と説明した。申請イコール移籍決定ではない。新型コロナウイルスの感染拡大により、来季のメジャーリーグは不透明な部分が多い。菅野と話して意思を確認し、申請後も巨人残留を視野に入れながら引き続き熟考していくという。
これまで菅野はメジャーについて「夢はあります。野球選手である以上、上のステージに行きたいと思うのは当たり前なことだと思いますし、そうやって思えない自分がいるほうが怖いです。行く行かないは別にして」などとコメントしてきた。高いレベルを目指すことを力に変えて進化し、巨人の絶対エースとしてチームの先頭に立ってきた。
国際大会では17年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝、米国戦(ロサンゼルス)に先発。大リーガーの強打者が並ぶスター軍団相手に敵地で6回1失点(自責点0)と快投し、相手のリーランド監督が「素晴らしい。彼はメジャーの投手だ」と最大級の賛辞を贈るなど、現地で大きな注目を集めた。
17、18年に2年連続沢村賞に輝き、今季は14勝2敗、防御率1・97で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。米大リーグの公式サイトでは、今オフのポスティング移籍の可能性とともに「過去8年で最も有能な投手の一人」と紹介されるなど、現地で「SUGANO」関連の報道が過熱している。
一方で、今年は新型コロナウイルスが世界的に大流行。メジャーは通常162試合制のシーズンが60試合制で行われる異例の一年となった。米国は現在も感染が拡大し、日本以上に深刻な状況。来シーズンの状況も不透明だ。昨オフはチームメートだった山口俊が球団史上初めてポスティング制度を使ってブルージェイズに移籍。申請を決めた時点でメジャー挑戦の会見を開いた。だが、今回の菅野は移籍決定ではなく、残留も選択肢にあるため、状況は異なる。
ポスティング申請は決まり、メジャー挑戦という夢への扉は開かれた。だが、さまざまな状況を慎重に検討しながら、菅野は米移籍か巨人残留かの決断を下す。
◆菅野 智之(すがの・ともゆき)1989年10月11日、神奈川県生まれ。31歳。東海大相模高から東海大へ。11年ドラフトでは日本ハムから1位指名されたが入団せず、12年ドラフト1位で巨人入り。14年にMVP。17、18年に沢村賞。最多勝3回、最優秀防御率4回、最多奪三振2回。186センチ、95キロ。右投右打。背番号18。
◇ポスティングシステム 海外FA権を持たない選手が、大リーグに移籍する際に利用する制度。当初は最高入札額を提示したメジャー球団が独占交渉権を得たが、18年オフからは、メジャー契約の場合、契約金や年俸などの総額(複数年の場合は総年数の総額)によって譲渡金の額が変わるシステムになった。
◇今オフのポスティングシステム日程 申請期間は11月8日から12月12日まで。協定に定められている申請期間は11月1日から12月5日だが、今年は新型コロナの影響でシーズン終了がずれこんだため、申請期間が変更された。申請が受理されてから1か月間、米球団との交渉が可能になる。