【王手報知】最強の刺客・加藤女流三段、最強・里見女流名人に挑む…元奨励会員9戦全勝で挑戦権

スポーツ報知
挑戦権獲得後、スカーフ一体型マスクの奥から笑顔をほころばせる加藤桃子女流三段

 将棋の第47期岡田美術館杯女流名人戦の女流名人リーグ最終一斉対局が16日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、加藤桃子女流三段(25)が加藤圭女流初段(29)に勝利し、リーグ9戦全勝で挑戦権を獲得した。来年1月17日に開幕する5番勝負で里見香奈女流名人(28)=清麗、女流王位、倉敷藤花=に挑み、初の女流名人獲得を目指す思いとは。女流棋界最難関リーグで最後まで挑戦・残留を争った精鋭たちの声も併せて紹介する。(北野 新太)

 桃色の花柄が麗しく揺れていた。挑戦権獲得直後、加藤はスカーフ一体型マスクの奥で破顔一笑した。「緊張しましたし、最近は成績が良くなかった(過去4戦2勝2敗)ので不安要素はありました。里見女流名人とまた対局する権利を得られたことをうれしく思います」。9戦全勝。最難関リーグで圧倒的な力を見せつけて女流名人への挑戦切符を得た。

 覇者・里見の独走に待ったをかけるべく、史上最強と評しても過言ではない挑戦者が5番勝負の舞台に躍り出る。「名人という言葉は、ある道における第一人者を示すと同時に将棋界の看板でもあります。挑戦できることに感慨深さと重みを感じます」。昨年3月まで棋士養成機関「奨励会」に在籍していた加藤は同4月に女流棋士デビュー。「新人」とはいえ、女性奨励会員に参加資格を与えている女子オープンと女流王座戦では各4期計8期のタイトルを獲得。実力者中の実力者でもある。

 女流名人戦は今期が初参戦だったが、前評判から挑戦権争いの本命だった。予選トーナメントから13戦無敗で駆け抜けた1年を「安定した力を求められる長期リーグを勝ち抜けたことは非常に尊いものだと思います」と振り返った。

 立ちはだかる壁は大きい。過去、里見とタイトル戦で6度激突したが、5度屈している。対戦成績は6勝18敗。今期の女流王位戦5番勝負でも0勝3敗とスイープされた。「一方的にやられてしまいました…。力を出し切れる展開にはさせてくれないので、しがみつきたいです」。カギを握るのは中飛車対策。女流王位戦では全3局で里見の中飛車・加藤の居飛車穴熊の対抗形だった。新たな武器、周到な準備が求められる。

 以前から里見への敬意を語ってきた。「里見さんは清く正しく、挑み続けている人。大切にしていること、譲れないことを持っていて将棋の道を生きるにふさわしい人です。昔も今も、里見さんと戦えることはとても素晴らしいことです」

 前人未到の12連覇を目指す里見は、現在挑戦中の女流王座戦5番勝負で西山朋佳女流王座からタイトルを奪還すれば、清水市代女流七段が保持するタイトル獲得歴代最多43期に並ぶ。女流名人戦5番勝負は新記録樹立へのシリーズになる可能性がある。「女流名人イコール里見さんという印象で、私は初挑戦ですけど、思い切りぶつかって取りに行きたいです」

 絶対王者に死角はあるか。最強の刺客は今、撃破への資格を手にしている。

 ◆加藤 桃子(かとう・ももこ)1995年3月9日、静岡県牧之原市生まれ。25歳。安恵照剛八段門下。元奨励会員の父・康次さん(故人)に教わり、5歳で将棋を始める。2006年に棋士養成機関「奨励会」入会。14年、女性として3人目の初段に昇段した。19年3月退会。女流タイトル戦には15度登場し、8期獲得。居飛車党。日本将棋連盟東京本部所属。愛称は「カトモモちゃん」。

 ◆女流名人リーグを終えて◆

 ▲室谷由紀女流三段(陥落)「(6期守ったリーグから陥落し)前期挑戦者として恥ずかしいですが、一度落ちて自分を見つめ直した方がいいと思うような今期の内容でした。結果は受け入れるしかないです。すぐ予選も始まるし、落ち込んでいる暇はないです」

 △伊藤沙恵女流三段(残留)「1敗すると挑戦が厳しいリーグで(加藤との)直接対決で負けたのは自分ですから…。今期は勝てた将棋も、もちろん負けた将棋も課題が残ります。今日(最終戦)みたいなひどすぎる将棋を減らして頑張っていくしかないです」

 △香川愛生女流三段(残留)「開幕の頃は将棋を指せるかどうか分からない時期でしたけど、対局させていただけたことに感謝の気持ちを忘れずに指そうと。8期連続の残留でしたが、初めて負け越して…。来期は早々と挑戦争いから脱落しないようにします」

 △渡部愛女流三段(残留)「連敗スタートで早々に挑戦権争いから脱落して残留争いになったことは残念でした。大局観のズレが課題です。将棋ファンの皆さまの期待に応えられていないので自分への向き合い方や体調管理などをもっと考えていかなきゃ、と思います」

 △鈴木環那女流三段(残留)「表を見るたびに『1勝するのは大変』と思うメンバーですけど前期より1勝多かったのは上出来でした。30代になっても成長を感じています。森内俊之九段に精神面や持ち時間の使い方の助言を頂いていることが力になっています」

 ▲上田初美女流四段(陥落)「今期の星取りが今の上限で、挑戦とかいうレベルじゃないです。正直、コロナの影響は育児世帯にダイレクトで…体力が削られます。次女がまだ小さいので神経使いますし…。(6期ぶりの陥落だが)目の前の一局を指すしかないです」

 ▲千葉涼子女流四段(陥落)「正直に言うと…良い状態で戦いたかったな、という思いはあります…。子供の体調が悪くなったりもして…。育児と将棋の両立はとてもハードですけど、諦めずにもうちょっと勇気を持って、アグレッシブに強く生きたいと思います」

 ▲山根ことみ女流二段(陥落)「一局ごとの反省を生かしたり、精神面も成長できたと思います。(3期連続で予選突破中も)残留できたことがなく、実力不足ですけど、まだ伸びしろはあると思うので、今期学んだことを生かしてまたリーグ入りを目指したいです」

 △加藤圭女流初段(残留)「(初参加で)1勝も難しいと思っていたので残留はうれしいですが、負けた将棋の内容がひどいので喜んでばかりもいられません。間違いなく棋力はリーグ最低でしたし…。来期も残留を目指したいです。勝率6割くらいの力になれたら…」

将棋・囲碁

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請
×