高3・芦川うらら、進学せず東京五輪…地元・静岡から拠点変えず大舞台へ「直前に一気に環境を変えない」

スポーツ報知
143センチと小柄ながらのびやかな演技を見せる芦川

 体操種目別の平均台で、来年の東京五輪出場が決定的となっている芦川うらら(水鳥体操館、常葉大常葉高3年)が「進学せずに五輪を迎える」という代表選手としては異例の決断を下した。富士市出身の17歳は静岡拠点を変えずに大舞台に臨む。大きな決意の裏には、競技生活を支えてくれる周囲への感謝の思いがあった。(内田 拓希)

 ■昨年W杯初優勝から3連勝

 あどけない17歳の芦川が、強い意志を持って来年の大舞台を見据えている。

 「来年は進学せず、ここ(水鳥体操館)に残るつもりです」

 高校3年生で迎えるはずだった東京五輪はコロナ禍で1年延期。東京都の強豪大学に進学予定だったが、この秋に大きな決断を下した。大学に進まず、水鳥体操館所属の選手として五輪を迎える―。日本代表クラスの選手としては異例の選択だ。

 昨年6月の全日本種目別予選・平均台2位で国際大会への切符をつかむと、W杯第5戦(ドイツ・コトブス)での初優勝を皮切りに3連勝。W杯の種目別は、来年3月に延期になった第8戦(カタール・ドーハ)までで、成績が良かった3戦の結果で各競技トップの選手が五輪代表に選出される。東京五輪出場はほぼ確実だ。

 「五輪は小さい頃からの夢だった。日本だとみんな自分のことを知っているので緊張するけど、外国の試合はミスしても全員が拍手してくれたり、温かい雰囲気があるので好きです」

 ■小柄も存在感!寺本に憧れ

 海外での演技を楽しみながら好成績につなげる強さ。143センチと小柄だが、体を目いっぱい使ったのびやかな演技と、躍動感あふれる跳躍で見る者を引きつける。憧れは16年リオ五輪の女子個人総合で、日本勢52年ぶりの入賞(8位)を果たした寺本明日香(25、ミキハウス)。第一人者の演技から学ぶことも多い。

 「色んな人に『平均台から下りるとこんなに小さいんだね』ってよく言われます(笑い)。でも、自分にとっては褒め言葉なのでいつもうれしいです。寺本さんは身長が自分と変わらない(142センチ)のに、遠くから見てもすごく存在感がある」

 大きな決断をした背景には、競技を始めた1歳から静岡で成長してきた彼女ならではの2つの理由がある。1つ目は「環境を変えずに五輪を迎えたい」という思いだ。中学2年時、全日本ジュニア選抜の韓国合宿でバック転ができないほどの大スランプに陥った。レベルの高い選手に囲まれた不慣れな環境で、技の難度を上げたことによる恐怖心が原因。帰国後に基本に立ち返り、簡単な技の反復練習で克服した。

 「当時は頑張りすぎてしまった。大学に進めば寮生活になる。自分の性格を考えても、(小学2年時から通う水鳥体育館で練習を続け)五輪の直前に一気に環境を変えない方がいいと思いました」

 ■小2で入会の水鳥体操館から

 もう1つは、自身を支え続けてくれた人への感謝の思い。特に伝えたい人が2人いる。自宅のある富士市から静岡市まで迎えに来てくれる母・孝子さん(52)と、水鳥体操館入会時から指導を受け、海外遠征にも帯同する守屋舞夏コーチ(35)だ。1年間ほぼ休みなく練習する競技生活を支えてくれる人へ、思いを大舞台で示したい。

 「試合が終わっていい結果が出ても、一緒に喜んでくれる大切な人が隣にいないと意味がない。ずっと支えてもらってきた人と喜び合いたいんです。お母さんは去年のW杯のあとに『私はいつまでもうららの一番のファンだよ』って言ってくれて、本当にうれしかったし、励みになった。コーチは自分のことをすごく理解してくれて、いつでも支えてくれる。五輪に出るからには色々な人に対する思いを演技で示したい」

 10月の全日本高校選抜(福井・鯖江市総合体育館)では、D難度の技を増やした新プログラムを試し、平均台で14・950の高得点をマークしてV。現在は6月から抱えるという左座骨の痛みの治療を受けながら、12月10日に開幕する全日本選手権(群馬・高崎アリーナ)に向け、新構成の精度を高めている。

 「他の選手も成長していると思う。自分ももっと良い演技ができるようにならないと。試合の時に一番信じられるのは練習。一日一日を大切にしたいと思っています」

 東京五輪開幕まであと238日。体操女子の五輪メダルは1964年東京大会の団体銅が最後となっている。“変えない”勇気と“変える”勇気。2つの強さを兼ね備えた17歳が、57年ぶりの快挙に向け、華麗に舞う。

 ◆水鳥体操館 元体操選手の水鳥一夫さん、見香夫人が83年に創設。5男1女の6人きょうだいの内、5人が体操選手。長男・静馬さんと四男・一輝さんがコーチを務め、男子を指導。一夫さんの弟・政弘さんと節子夫人も体操選手で、長女の舞夏さんとともに女子を指導。アテネ五輪団体総合金メダルの次男・寿思氏(協会の男子強化本部長)らを輩出している。

 ◆守屋コーチ「『普段通り』に五輪でも思い切って」

 守屋コーチは芦川について「初めて見たときは『つま先がきれいで体が柔らかい子』という印象。昔から平均台は得意で、今やっているひねり3回の降り技も小6からやっている。(W杯3連勝は)驚きましたが、難度を下げて気持ちが楽になった部分もあると思う。度胸はある子なので『普段通り』を意識して五輪も思い切ってやってほしい」と話した。

 01、03年の世界体操に出場したが、04年のアテネ五輪を惜しくも逃した。大舞台に懸ける教え子の決断を「大学に進学するとなれば、1年生はすごく大変な思いをすることになる。体操という競技の特性を考えても(五輪は)何度も経験できる舞台ではない。本人が一番、力を発揮できる状態で行かせてあげたいと思っています」と経験も踏まえ、全力でサポートする。

 ◆芦川 うらら(あしかわ・うらら)2003年3月8日、富士市生まれ、17歳。1歳で体操を始め、小学2年時に水鳥体操館に入会。小学6年でU―12全国選手権平均台2位、個人総合4位。常葉大常葉中2年時と3年時に全日本選手権種目別の平均台で3位。143センチ。家族は両親と姉3人。A型。好物は焼肉。名前の由来はスピッツの「ロビンソン」の歌詞を3人の姉が聞き間違えたことから。

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