【川崎】中村憲剛の意志を継ぐ大島僚太「初めて心の底から憧れた選手。僕がサッカー選手を続けられているのは、憲剛さんがいたから」

最速優勝を果たし歓喜する中村(左)と大島
最速優勝を果たし歓喜する中村(左)と大島

◆明治安田生命J1リーグ▽第29節 川崎5―0G大阪(25日・等々力陸上競技場)

 優勝を確信したスタジアムが、さらに沸いた。後半41分。大島僚太が左腕に巻いた主将マークを外しながら、タッチライン際に立つ中村憲剛に歩み寄った。

 中村は「(副主将の)守田に渡せよ」と笑ったが、大島は「付けてください」と中村の左腕に巻き付けた。約10秒間。笑顔で交わした2人だけの空間だった。

 中村の18年には及ばないが、大島も川崎一筋で10年目を迎えた。そのキャリアは、背番号14を追いかけてきた時間といえる。

 2011年にプロ入りした直後の大島の中村評は「うますぎて、神々しい」。だからこそ、1年目のキャンプでは風呂に誘われながらも「いや、いいです」と思わず断ってしまった。主力に定着した2年目からはボランチを組むことが増えた。中村は「とにかくうまい」と高い技術にほれ込みつつ、「もっと怖さを身に着けてほしい。自分が持つ技術や経験、全てを伝えていく」。ピッチの内外で、多くの言葉を交わしてきた。

 2人の会話によく登場した単語の1つが「飛ばせ」。「各停ではなく、飛ばせ」。大島は長らく真意がつかめなかったが、17年5月の鹿島戦だった。間が開いた中村、谷口、大島、小林と流れるようにつながり、得点に結びついた。後方から起点となった中村の姿を見た大島は「憲剛さんがパスした瞬間に点が入ると思った。憲剛さんが言っていることが、ようやく理解できるようになってきた」。2人の距離や感覚は、さらに重なった。今では、中村が「日本で一番うまい」と即答できる存在になった。

 中村から引退を告げられたのは、正式発表の数日前。初めて聞いた時の心境を、大島は「自分本位になりますけど」と前置きした上でこう表現する。

大島「悲しかった。去年のけがから復帰してプレーする姿は、本当に格好良かったし、初めて心の底から憧れたサッカー選手だから、それを告げられた時は悲しかった。まだまだその背中を追いかけていたかった」

 前節の大分戦で谷口が退場したこともあり、G大阪戦は主将マークを巻いた。アップでは先頭を走り、試合中は声を張り上げ、エキサイティングしたシーンでは仲裁にも入った。人見知りで寡黙だった一昔前からは想像できない姿があった。

 「自分の全てを注ぎ込んだ」大島から、主将マークを託された中村は言った。「ニクいことするなと思いました。ちょっと、泣きそうになりました。僚太が入ってきた頃のことを思い出したし、彼が成長する姿も見てきたので感動した。僚太、ちゃんと育ったなって。彼がいるからこそ、ここ5年くらい輝けたし、感謝しています」。それに対し、大島は「僕がサッカー選手として続けられているのは、憲剛さんに出会えたからこそ。本当に感謝してます」。歓喜の瞬間、並んでシャーレとトロフィーを掲げた「14」と「10」。クラブの伝統は、「最高」の形で継承されている。(田中 雄己)

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