元巨人の青山誠さん、競輪選手を目指し必死の奮闘…18年に戦力外通告も「もう一度、スポーツで勝負したい」

2次試験に向け気合が入る青山さん
2次試験に向け気合が入る青山さん
鋼の肉体をさらに鍛えあげる
鋼の肉体をさらに鍛えあげる
師匠の佐々木コーチ(右)、元ヤクルトで兄デシの松谷(左)と
師匠の佐々木コーチ(右)、元ヤクルトで兄デシの松谷(左)と
巨人時代の青山さん。期待されていたがケガに泣いた
巨人時代の青山さん。期待されていたがケガに泣いた

 プロ野球元巨人の青山誠さん(29)が、競輪選手を目指して奮闘している。日本競輪選手養成所(静岡・伊豆市)第121期生を適性(自転車経験なし)で受験。1次試験は他競技での実績が考慮され、免除。2次試験は12月2、3日の2日間、同養成所で行われる。最終試験を前に必死にもがく青山さんを取材した。(永井 順一郎)

 滴り落ちる汗。もうろうとする意識の中、青山さんは必死の形相でペダルをこぎ続ける。もう後がない。自分には競輪しかない。その気持ちが体全体から出ている。横浜市内にある自転車ナショナルチーム・佐々木龍也コーチの自宅。そのトレーニングルームで青山さんは夢を追いかけている。

 13年のプロ野球ドラフト会議。日大4年の青山さんは、巨人から育成1位で指名された。兵庫・育英高時代、甲子園には届かず、進学した日大でも4年生になるまでは目立った存在ではなかった。4年秋、東都大学リーグ2部で3割1分9厘の高打率を残し、ドラフト候補に。支度金100万円。背番号は「008」。夢への第一歩を踏み出した。

 翌年5月、悪夢が襲った。試合中、右翼の守備についていた青山さんは、打球を追ってフェンスに激突。「右膝大腿四頭筋筋断裂の大けがでした。手術、そしてリハビリ。プロ1年目から挫折を味わいました」。15年5月には、同じ箇所を再手術。この年も出番はなかった。グラウンドに立てたのは16年。そして17年、ついに支配下登録を勝ち取り、背番号も「99」に。「うれしかったですね。これからが本当の勝負だと思いました」。この時一緒に支配下登録されたのは足のスペシャリスト・増田大輝。

 プロとしてのスタートは散々だったが、やっと勝負できるステージに立てた。支配下の次は1軍。が、そんなに甘い世界ではなかった。スポットライトを浴びることなく、18年に戦力外通告。社会人野球のJX―ENEOSに入団したが、結果を残せず1年で退団。野球から離れた。「やることはやったし、悔いはない」と振り返った。

 競輪との出会いは偶然だった。知人の紹介で(株)ワイズエンターテインメントファクトリーに就職。そこで競輪のネット投票などを無料で楽しめるサービス、TIPSTARの製作進行管理を行っている。そして通っていた接骨院に元ヤクルトで、現在はS級のトップで活躍する松谷秀幸(38)がいて紹介された。「もう一度、スポーツで勝負したい」。6月、松谷の師匠である佐々木氏に弟子入りした。

 まだ、競技用の自転車には乗っていない。適性で受験したため、その対策として毎日、固定式の自転車でパワーアップを図っている。45秒間、全力でこぐと「寝転べないし、立つこともできない。乳酸がたまって本当にしんどい」。佐々木氏に言わせれば、立つことができないのは、競輪選手として恥ずかしいことだそうだ。それでも日々、青山さんの体は進化している。「足が太くなったと言われます」。一歩一歩、着実に野球選手から競輪選手への道をたどっている。

 2次試験まであとわずか。佐々木氏は「努力を怠らないし言ったことをすぐ理解できる。学習能力はあるし楽しみ」と評した。過去、プロ野球から競輪に転向した選手は何人もいるが、大成したのは松谷くらい。「苦闘こそ己の自信に」を胸に、人生をかけて2次試験に挑む。合格発表は来年1月14日。

 ◆青山 誠(あおやま・まこと)1991年11月1日、神戸市生まれ。29歳。育英高から日大に進み、13年ドラフト育成1位で巨人に入団。この時の1位は小林誠司、3位は田口麗斗。座右の銘は「苦闘こそ己の自信に」。趣味、特技はなし。肉が好きで嫌いな食べ物はない。185センチ、83キロ。血液型O

 ◆競輪選手の人数とランク 競輪選手は約2200人。ランクはS級S班、S級1班、S級2班、A級1班、A級2班、A級3班。S級S班は、前年のKEIRINグランプリに出場した9人。S級1班は約220人、同2班は約450人。A級1、2班はそれぞれ約550人。同3班は約450人。プロ野球に例えるならS級S班はスーパースターで、1班は1軍のレギュラークラス。2班は1軍だがレギュラーではない。A級1、2班は2軍。3班は育成といったところ。

 ◆プロ野球から競輪に転向した主な選手◆

 西野 忠臣(静岡・20期、引退)=1959年巨人

 石本 龍臣(岡山・60期、引退)=83年広島ドラフト5位

 塚本 善之(広島・72期、引退)=87年広島ドラフト5位

 川口 正(山口・76期、引退)=88年大洋(横浜DeNA)ドラフト外

 兵動 秀治(広島・97期、A級3班)=97年広島ドラフト2位

 宮崎 一彰(高知・99期、A級1班)=99年巨人ドラフト7位

 松谷 秀幸(神奈川・96期、S級1班)=2000年ヤクルトドラフト3位

 北野 良栄(愛知・95期、S級2班)=01年ダイエー(ソフトバンク)ドラフト5位

 萱島 大介(大分・99期、S級2班)=02年阪神ドラフト11位

 伊代野 貴照(奈良・101期、S級2班)=02年阪神ドラフト10位

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