2年ぶりの優勝に王手をかけている川崎は20日、空路で大分入りし、21日の大分戦に備えた。5試合を残しての史上最速優勝を目前にしており、歴代最強の呼び声もある今季のチーム。スポーツ報知ではデータ分析会社「InStat(インスタット)」の協力の下、データ(15日終了時点)から強さをひもとく。また本紙評論家の山本昌邦氏(62)は「次元の違うサッカー」と絶賛した。
歴史的なシーズンになろうとしている。チームは川崎市内で練習後、決戦の地である大分へ移動。21日の大分戦で勝利すれば、無条件で2年ぶりの優勝が決定。引き分け以下でも、22日に2位・G大阪が浦和に引き分け以下であれば優勝が決まる。鬼木達監督(46)が「年間の積み重ねではありますけど、やはり勝って決めたい」と19日に話した通り、自力Vをつかむつもりだ。
ここまで28試合消化時点で、すでに年間34試合の1ステージ制では歴代最多タイとなる勝ち点72を記録。総得点も74で、自らが06年に記録した最多得点記録の84まであと10点に迫っている。残り6試合あり、十分射程圏にある。
今季は4―2―3―1から、より攻撃に人数を掛けられる4―3―3にチャレンジ。攻撃が注目されるが、今季の特長は守備にも表れている。1試合あたりのタックル成功数は18で、鹿島と並んでトップ。またボールを奪った時の相手ゴールまでの平均距離は71・2メートルで、最も高い位置でボール奪取に成功しているチームとなっている。それだけ前線からプレスにいけている証拠であり、鬼木監督が常々口にする「アグレッシブさ」を体現している。
個人に目を向けると、ルーキーMF三笘薫(23)のデータが突出している。スンスタット社が独自に算出するパフォーマンスの評価指標、インスタット・インデックス(I・I)は230~50が平均。その中で、三笘は1200分以上出場している選手の中で、唯一の300超えとなる304を記録している。
目を引くのがドリブルのデータ。出場時間が少ないため総数では全体の4位だが、90分換算だと10回で最も多く、成功率も61%と高い。さらに得点(11)とアシスト(5)の合計は16で、90分あたりで1・2点を生み出している計算。チームが志向するサッカーにも左右されるが、驚異的な数字をたたき出している。
またI・Iで三笘に次ぐ2位に入ったのが、今季湘南から加入したDF山根視来(みき、26)。昨季は固まらなかった右サイドバックのポジションが埋まったことも大きい。指揮官も「勢いは新戦力(三笘や山根など)から生まれたなと思う。彼らの勢いがあって、元からいる選手とのバランスも取れていった」と評価。データが歴史に残るシーズンを物語っている。(井上 信太郎)
◆InStat(インスタット) 2007年にモスクワで設立。独自分析した映像、データ提供を行うスポーツパフォーマンス分析会社。クライアントは主にクラブ、各国協会などでドイツ1部バイエルンやドルトムントのほか、名古屋などJクラブも使用。日本では株式会社Jリーグから、Jリーグ公式試合についてアーカイブ映像の二次利用許諾を得ている。
◆インスタット・インデックス(I・I) インスタット社が独自に算出するパフォーマンス総合値の評価指標。チーム、個人ともに、数々のデータを基に導き出され、プロクラブが選手獲得の際に参考にする例もある。平均値は230~250。