2020年の映画賞発表近づく…行定勲監督作「劇場」は「『映画』じゃない」?

インタビューに応じた行定勲監督
インタビューに応じた行定勲監督

 今年も残り2か月を切り、映画賞のシーズンが訪れる。その先陣を切るのが、今年で45回目となる、伝統の「報知映画賞」。近日、ノミネート作品、受賞候補者が発表される。

 記者も映画担当時代の1998~2002年の5年間、選考に参加した経験があるが、平常時でさえ頭を悩ませたのに、コロナ禍の今年は試写の実施も少なくなり、選考は本当に大変な作業になるはず。熱心な映画ファンの読者投票に支えられ、どんな作品が候補に挙がるのか楽しみだ。

 恥ずかしながら、記者は今年の賞の対象作を数本しか見ていない。その1本が、ピース・又吉直樹(40)の同名小説が原作の「劇場」。映画館ではなく、Amazonプライムビデオで自宅のパソコンで鑑賞した。コロナの状況を鑑み、映画館とネットの同時配信になった作品。映画館先行の上映ではなかったため、業界のルール上、「映画」のカテゴリーから排除されてしまった。

 折しも行定勲監督(52)には、審査員を務める「関西演劇祭2020」(今月21~29日、クールジャパンパーク大阪TTホール)に関連してインタビューするタイミングがあった。「劇場」の排除について聞くと、こう嘆いた。「映連(日本映画製作者連盟)に『劇場』は映画じゃない、とはっきりと言われました。見てもないのだから腹が立つ(苦笑)。OTHERデジタルソースというらしい。シネマ歌舞伎とかゲキシネと同じ扱いですね。『俺は映画だと思ってる』と言ったら『勝手にすれば』、と」

 ゆえに映画各賞の対象になるのかにも注目している。「ノミネーションされないということになれば、映画賞は映連の言いなりなんだなと分かる。それが明確になるのが楽しい」とも。報知映画賞は候補対象を「2019年12月1日から20年11月30日までに有料で1週間以上一般公開」した作品としており、読者投票のリストにも明記した。行定監督は「ここには入れてくれるんだね」と笑顔をこぼした。

 当初は行定監督も「映画は劇場で見て欲しい。それは当たり前の話」とこだわりを持っていたが、映画館閉鎖の実情もあり、ネット配信による映画の可能性の広がりに賭けてみた。「これまでは劇場公開で一作品ごとに勝負させられていた。分かりやすいもの作れ、と。ヒットする映画を作らなければ次につながらず、監督はどんどん消えていくんです」

 結果、ヒットの法則に則った同じ傾向の作品ばかりが並ぶことになるのが、日本映画界の現状でもある。「一方で配信というところは多様性を持っている。いろんな思考の人たちが、一つ一つの映画を大切にして作る。例えば鈴木清順監督みたいな作品とか。配信数など内情は公表されないけど、『世界に向けて作れ』という(器の)大きさがある。それを『劇場』で試しにやってみた。一本の映画が犠牲になれば議論が起こるかなと思いましたが、みんな静観しています。(仲間から)省かれる可能性があるからです」。孤高の挑戦になったわけだが、「アフターコロナ」「ニューノーマル」の時代で、映画の鑑賞環境もさらに変わってくるはず。このチャレンジは大きな一歩になる。

 作品自体にも力があるのは間違いない。うだつのあがらない劇作家の主人公を演じた山崎賢人(26)は、いわば汚れ役で“脱・漫画実写化俳優”をアピール。彼女役の松岡茉優(25)が醸し出す、心が痛むような空気感もよかった。

 そして何より、原作にはない行定監督の独自の演出に驚く。ネタバレになるので書くのはやめるが、ラストが秀逸だ。「関西演劇祭」で行定監督とともに審査員を務める劇作家・演出家の西田シャトナー(55)は「確かにカテゴリー分けが役に立たない。ジャンルでくくれなくて、根源的な部分でぶち壊している。最高の“アレ”を、演劇ではなく映画にやられたという衝撃、悔しさがある」と舌を巻いた。「劇場」は、あらゆる意味での革命だったのだと、振り返る日が来るだろう。(記者コラム・筒井 政也)

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