【オリックス】やんちゃな山岡泰輔に漂う“昭和感”…自身初の故障離脱乗り越えて得たものとは

山岡泰輔
山岡泰輔

 今季初めて、そしてようやく見た「背番号19」の笑顔だった。10月30日に札幌ドームで行われた、オリックス―日本ハム戦。オリックスの山岡泰輔が今季最多、プロ入り後では3番目に多い128球の熱投で7安打2失点の完投勝利を収めた。

 「調子は悪かった。ずっとしっくりこなくて、微調整しながら9回までいった感じ」。決して、満足なわけではない。それでも苦しみながらも今季初めて9回を投げきり、最少得点差でチームの連敗(4連敗中)を止めた1勝に価値を求めた。「いつも長い回を投げる時は点を取ってもらえるけど、今日は(あえて)1点差を守りたいなと思って投げていました。こういう試合で勝たないといけないって、ずっと、何年も思っていたので。ちょっと成長したかなと思います」。大黒柱としての責任を少しだけ果たせた安どが、言葉と表情ににじんだ。2年連続最下位の決まったチームの担当として、救いとなる瞬間だった。

 昨年末に担当となったが、昭和生まれの43歳のオッサン記者が外から見ていた山岡のイメージは「現代風な、やんちゃっ子」だった。実際取材に訪れて、チームメートとじゃれ合う姿や、オフの間に“七色”に変化する髪の色、オシャレな服装などはある意味、印象そのままだった。

 話し込むと違う。特に1対1の取材では礼儀正しく丁寧な敬語を使い、熟考された言葉を重ねて返してくる。特に強く感じたのは、チームを背負う責任感。言葉の節々にチームへの思いや、仲間への配慮をにじませる。「犠牲心」や「忍耐力」といったものには、昭和のにおいすら覚えた。人なつっこい笑顔と、真剣な表情。前記の印象通りな部分と、このギャップに戦国時代の天下人・豊臣秀吉のような(会ったことはないが…)「人たらし」たる要素を感じた。

 決意に満ちていた右腕を今季、プロ入り後、初体験の試練が一度に襲った。新型コロナウイルス感染拡大による開幕延期に始まり、登板2試合目で左脇腹痛を発症して自身初の故障による離脱。その期間には胃腸炎も患って体重を8キロも落とし、療養は約2か月に及んだ。嘆いたのは自らの苦境よりも、最下位に沈むチームに貢献できないジレンマ。復帰後、今季初勝利を手にした時も「帰ってくるのが遅かったですし、迷惑をかけた。今年(の残り登板)から来年にかけてまで、そのことを思いながらというか、投げられることのうれしさなどを考えながら投げていければ」と笑顔はなく、反省に近い言葉ばかり。個人としてより、チームの中での役割を自覚しているからこそだった。

 東京ガスから17年に入団し、1年目から先発陣の中心として働き8勝。昨季はオリックスとなった89年以降では最年少、そして09年の小松聖(現1軍投手コーチ)に並ぶ球団最速の3年目で初の開幕投手を務めた。結果的に登板回数170回、13勝ともにキャリアハイをマークし、自身初タイトルの最高勝率投手も獲得。名実ともに投手陣の柱となった。

 2年連続の開幕投手となった今季は正真正銘、投手陣のリーダーとして勝負の年だったはずだ。コロナによる開幕延期が決まった3月当初。雑談の中にも覚悟を明かした。「シーズンが短くなっても、結局(昨年と同じ)数字で見られる部分はあると思うんですよね。こういうシーズンだからこそ、結果を出さないといけないでしょ。プロは数字と結果だから」。結果的には、そのコロナの影響が右腕の今季を狂わせた。「ケガだけが一番、怖い」。危惧していたアクシデントが起きてしまった。

 自身の離脱中にチームをけん引したのは、同期入団の山本だった。昨季、最優秀防御率のタイトルを獲得するなど、山岡と二枚看板と評されるまでに成長した高卒右腕。山岡は今季開幕前に「今なら(山本)由伸と2人で引っ張っていければ、チームの勝利は増えていくと思う」と厚い信頼を明かしていた。普段から仲のいい同期だが、25歳の山岡が3歳年上。1人で背負わせた“弟分”へ、申し訳なさがあったはずだ。離脱から復帰した際、静かにこぼした。「由伸が頑張ってくれていた。ここからは僕も一緒にやっていきたい」

 面白い数字がある。山岡が復帰する8月27日まで、山本は10試合に登板してチームトップの3勝も、防御率は3・38だった。ただ復帰後は登板8試合で5勝、防御率0・90。もちろん山本が自ら修正を加えてシーズン終盤にギアを上げたわけだが、山岡が戻ってきたことで“負担”が軽減された面もあったかと思う。支え合う両右腕の関係性が、数字にも見て取れた。

 初めての故障離脱を振り返り、それによって得たものを尋ねられた山岡は「それはないですね。やっぱりしない方がいい。チームに迷惑をかけているのが事実。二度とケガをしたくはない」と強い口調で言い切る。逆境にさらされ続けたシーズン。結局、今回の登板が自身の今季最終戦に。最終登板でようやく果たせた「チームへの貢献」が、本人にとっても大きな1勝となった。

 「最後は完投したいなとずっと思っていて。勝って終わりたいから。でも、それ以上に来年のことを考えたら(9回まで)投げとくべきだなと思った。もう少し勝ちたかったけど、来年につながってくれたらいいかなと思います」。25歳には、悔しさを晴らす時間がたっぷり残っている。心からの笑顔を、来季はもっと多く見せてくれるはず。ファンもそれを待ち望んでいる。(記者コラム・宮崎 尚行)

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