“持ってない男”から“持ってる男”へ…「雨垂れ石を穿つ」精神で挑戦し続ける日本ハム6位指名・今川優馬

日本ハムから6位指名を受けたJFE東日本・今川優馬
日本ハムから6位指名を受けたJFE東日本・今川優馬

 今川くん、あの時はごめんなさい。そして本当におめでとう。

 26日に行われたプロ野球ドラフト会議。JFE東日本・今川優馬外野手(23)が日本ハムから6位指名を受けた。札幌市出身のスラッガーは指名後の記者会見で「地元の球団で小学校の時からファン。今でもファンクラブに入っている。意中の球団に入れて最高に幸せです」。プロ入りという小さい頃からの夢を叶え、人目もはばからず涙を流した。今川が東海大四高と東海大北海道に在学していた頃、私は北海道支局で勤務しており、2014年夏の甲子園出場時もチームに帯同。無名だった頃の今川を知っているだけに、本当にうれしかった。

 冒頭、謝罪したのには理由がある。昨年7月、私は「“持ってない男”の挑戦 JFE東日本・今川優馬が夢見るプロの舞台」というタイトルでコラムを執筆。失礼を承知で「10年ほど前に流行した言葉で表現すれば、彼は間違いなく“持ってない男”になるだろう」と文章を書き始めた。その時のコラムを簡単にまとめると次のようになる。

 高校入学時のポジションはショート。しかし、送球難があり、すぐに外野手へコンバートされた。2年秋に補欠で初めてベンチ入りし、3年春には背番号8をつかんだ。しかし、大会開幕直前の練習試合でダイビングキャッチを試みて左手首を骨折し、無念のベンチ外になる。甲子園に出場した夏は2ケタ背番号。2回戦で安打を放つが、同級生に超スローカーブを投げて話題になった西嶋亮太がおり、全く注目されなかった。10月の国体で1本塁打と2本の二塁打を放つが、やはり話題は初回の初球に超スローカーブを投げた西嶋に集中。その試合で敗れたため、日の目を見ないまま今川の高校野球は幕を閉じてしまった。

 東海大北海道に進学すると2年生まではベンチ外でリーグ戦のボールボーイをするかスタンドで応援の日々。3年生の時に指導者からアッパーに近いスイングを指導されると本塁打を量産した。4年春のリーグ戦では5本塁打を放ち、札幌学生リーグ記録を樹立。チームも優勝を飾り、全日本選手権へ駒を進めた。しかし開会式翌日、春季リーグ戦開幕直前に未成年部員が飲酒していた事実が発覚し、大学側は出場辞退を決定。今川の“就活の場”は突然、奪われてしまった。

 …という感じで「持ってない」と表現するのに十分なくらいのエピソードを持っていた。そんな今川と私は10月6日、プロアマ交流戦の巨人2軍戦・JFE東日本戦で約4年ぶりの再会を果たすことになった。試合前、素振りをしている今川に「覚えているかな…」と少し不安になりながら近づいてみると、すぐに「お久しぶりです!お元気でしたか?」と声をかけてくれた。本塁打を放つなど2安打2打点と活躍した試合後、「去年、コラムで『持ってない』って書いてごめんね」と謝罪すると「いえいえ、むしろ書いていただいてありがとうございました」と笑顔で返してくれた。

 6人きょうだいの長兄である今川。大学時代は家計に負担をかけないようにするため、自宅から自転車で大学へ通い、夜は焼き肉店で皿洗いのアルバイトをしながら野球に打ち込んだ。2年前のドラフト会議では無念の指名漏れ。「何年かかってもプロを目指す」という強いハングリー精神で、ここまで這い上がってきた。

 「雨垂れ石を穿つ」―。小さな努力でも根気よく続けてやれば、最後には成功するという意味で、今川が好きな言葉だ。だが、プロ入りしたことを「成功」ということで終わらせてほしくない。今川にとってプロ入りはスタートライン。これからどんな「成功」を描いていくのかに注目していきたい。そして、かつての今川少年がファンクラブに入ったように、今の子供たちが今川の豪快なスイングを見て「日本ハムのファンクラブに入りたい」と思うような魅力ある選手になってほしい。

(記者コラム 写真部・相川 和寛)

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