遠藤が去ったG大阪で継承されるべきこと なぜ彼は車をゆっくり運転していたのか

G大阪から磐田へ移籍した元日本代表MF遠藤保仁
G大阪から磐田へ移籍した元日本代表MF遠藤保仁

 元日本代表MF遠藤保仁(40)がG大阪を離れて磐田へ期限付き移籍し、約1か月が経った。G大阪は遠藤移籍後も5試合で4勝1分けと好調をキープ。一方で磐田も遠藤加入後からいまだ無敗(3勝2分け)だ。遠藤自身も25日の群馬戦では直接FKで今季初ゴールをマークするなど、その健在ぶりを示している。

 G大阪の選手たちは個々がしっかりと役割をこなし、“遠藤ロス”を感じさせない戦いを見せている。そんな中で、G大阪U―23を率いる森下仁志監督(48)から遠藤の移籍直後に聞いた言葉を思い出した。「いなくなってから、(不在を)感じているようでは遅いと思う。ああいう選手を、若い選手たちはすごい、すごいというだけではなく、何か真似をしているか、学ぼうとしてきたか」。そう語っていた森下監督は、23歳以下の選手たちがプレーするセカンドチームで19年から若手を指導し、トップチームに数々の選手を送り出してきた。自身も指導者として、遠藤から学ぶ部分は多かったという。

 「若い選手には感情をコントロールする、という話をしているんですけど、ヤットは常に自分の感情を支配している。それが彼の一番の能力で、だからこそ最善の判断ができるんだと思う」。森下監督はミスが起こりやすいサッカーの特性上、メンタルのコントロールを重要視し、さまざまなアプローチで若い選手たちの才能を花開かせようとしてきた。昨季は時にピッチでいら立ちを見せるなどでプレーが不安定だったFW食野亮太郎=現ポルトガル1部・リオアヴェ=に、いかに自らの感情を操るかの重要性を伝えて、世界的ビッグクラブのマンチェスターCに引き抜かれるまでのブレークにつなげた。

 そんな森下監督が「これは僕個人の勝手な考えですけど…」として話してくれたのが、遠藤が「ゆっくり車を運転する理由」だ。マイペースな性格の遠藤は、車の運転も決して法定速度を超えるスピードを出すことがないという逸話は有名で、遠藤の後ろには渋滞ができる、といった“都市伝説”もある。森下監督は「それもわざとやっているんじゃないかと。G大阪の中で、一番負けん気が強いのは、実はヤットなんです。試合中、相手の足にがっと(削りに)いけるのもヤット。彼は本来、そういう自分も持っている。でも、普段から自分をコントロールするトレーニングをしているんじゃないかと、思っているんです」という。

 森下監督は、才能がありながらプレーに波がある若手たちに、遠藤から学ぶメンタルコントロールの重要性を説いてきたという。「例えば普段から、自分が運転しているところに、他の車が割り込んでくるとする。そしたら、そこでイラっとするのか、どうぞと思うかで全然違う。プロの世界ではそこがすごく大事で、ピッチでもうまくいかなくなった時に、その気持ちをどうコントロールして、どう矢印を自分に向けていくかが勝負所。ヤットは(人には)言わないだけで、そんなことを意識してやっているんだと思う」

 現在、好調のチームの中で存在感を増してきたMF福田やDF高尾を取材していると、若いながらに落ち着いたプレーや言動に、ふと背番号7の香りを感じることがある。車の運転をまねている選手がいるかどうかは定かではないが、多かれ少なかれG大阪でプレーするすべて選手が、遠藤から影響を受けているはずだ。

 遠藤が今回の移籍後、すぐに磐田で結果を出せたのも、試合に出られない間も自らをコントロールし、必要な調整を積み重ねてきた賜物だろう。森下監督は「うちはヤットのすごさを、(下部組織での)育成にも落とし込んでいかないといけないと思う。ヤットの感情コントロール、そこをガンバの遺伝子として残していかないといけない」とも話していた。今後は、遠藤とプレーしたことがない選手たちがG大阪にも現れる。それでも“ヤットイズム”が継承されていけば、クラブにとっては大きな財産となるはずだ。(記者コラム=G大阪担当・金川誉)

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