松原聖弥と和田康士朗に「希望」を見た真夏の午後 巨人3軍・BC富山戦…日本シリーズでの“再会”はあるか

俊足を武器に2番のスタメンに定着した松原聖弥
俊足を武器に2番のスタメンに定着した松原聖弥

 セミの鳴き声が絶え間なく響く。強烈な太陽光線が容赦なく照りつける。

 2017年8月23日。午後のジャイアンツ球場は猛暑に襲われていた。

 遠く離れた甲子園球場では花咲徳栄と広陵が深紅の優勝旗を懸け、決勝を争っている同時刻。私はG球場の放送席にいた。新聞社のデスクではあるが、巨人軍公式サイトで動画配信される、巨人3軍とBC富山の交流戦の実況を担当していたのだ。

 未来の扉をこじ開けるために、必死に白球へと食らいつく両チームの姿勢は高校球児と変わらなかった。ひたむきなプレーに心を奪われた。金の卵たちをファンの皆さんに知ってもらおうと事前取材を重ね、マイクに向かって言葉を繰り出した。

 中でもピカイチに魅力的に映る若者がいた。育成ドラフト5位で巨人に入団したばかりの22歳。松原聖弥だった。

 3軍とはいえ、巨人のスタメンオーダーは強豪校で揉まれた男たちがほとんどである。松原は仙台育英に一般入試で合格したが、最後の夏はベンチ外。甲子園ではアルプス席で応援していたという。大学は首都大学リーグ2部の明星大。ここで俊足を生かして頭角を現し、5季連続ベストナインに輝いた。育成制度がなければ、プロ野球選手にはなれなかったかもしれない。

 練習終わりに問いかけた。足、速いねえ。すると笑顔で語ってくれた。

 「高校までは長距離の方が得意だったんです。短距離より自信がありましたから。高校では野球部を引退してから、陸上部の駅伝部門に転部したんですよ」

 私は夢想した。今は粗削りかもしれないけれど、こんなに思い切りが良くて俊足の選手が1軍の大舞台で躍動したら、今は補欠に甘んじる、多くの高校球児たちの希望になるんじゃないだろうか。

 松原君を、早く東京ドームで見たいよ。すると、表情を引き締めてこう言った。

 「まだまだです。まずは2軍に上がらないと。2軍で結果を残さないと、支配下は見えてこないので」

 ヤフー路線情報で検索すると、京王よみうりランド駅から水道橋駅までの距離は26キロ。しかしG球場から東京ドームまでの“道のり”は、果てしなく遠かった。

 * * *

 常人離れしたスピードを見せる男は、BC富山にもいた。普段は地方球場でプレーする彼らにとって、プロのスカウトが集結し、目を光らせるG球場での交流戦はいわば「オーディション」。中でも突出して際立つ選手が、入団1年目の和田康士朗だった。

 なんですか、あの速さは。試合後、BCリーグの村山哲二社長に聞くと、待ってましたとばかりに答えてくれた。

 「和田はね、高校野球を未経験なんです。埼玉の小川高校では陸上部だった。でもクラブチームを経て、去年のトライアウトを受けてくれたんですよ。吉岡雄二監督がべた惚れでね、1位指名で入団したんです」

 驚異のベースランニングと思い切りの良いマン振りが頭から離れなかった。試合後、直撃した。

 「野球はもう、中学で終わりにしようと思っていたんです」。高校の専門は走り幅跳び。ベストは6メートル45センチの好成績だ。しかし1年夏、テレビ埼玉でオンエアされる同世代の熱闘に目を奪われた。やっぱり野球がやりたい-。

 都幾川倶楽部硬式野球団で牙を研ぎ、BC富山入り。吉岡監督の辛抱強い指導もあり、打撃は開花した。「GIANTS」のユニホームを相手にもフルスイングを貫き、果敢に次の塁を狙った。

 「次に取材するときは、NPBの選手になっているかな」と話して、取材を終えた。同年秋のドラフト。育成1位で指名したのはロッテだった。

 * * *

 3年前の夏、G球場で懸命に未来をつかもうとしていた松原と和田は、「特別なシーズン」と呼ばれた今季の球界に、鮮烈な風を吹かせた。

 ともに初めて1軍の舞台に立ち、松原は2番のスタメンに定着。和田は規格外の俊足でファンの度肝を抜いた。

 気が早いかもしれないが。

 日本シリーズという、普段野球に触れない人も地上波中継で見るような特別な舞台で、暴れ回る松原と和田が見たい。

 パの優勝はおそらくホークス。だが今季のロッテ対ソフトバンクは11勝6敗1分け。CSでは何が起こるか分からない。

 秋は深まりゆくけれども、二人のプレーを見るたび、暑いG球場のセミの鳴き声がリフレインする。

 人知れず努力を重ねた松原と和田の3年間に思いを致し、今シーズン最後の戦いを見届けたい。

 成りあがり。大好きだね、この言葉。素晴らしいじゃないか-。(デジタル編集デスク・加藤 弘士)

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 連覇へカウントダウンに突入したジャイアンツ。スポーツ報知デジタル編集部員が、今季の巨人への思いをリレー形式でつづります。=随時掲載=

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