フェンシング・三宅諒、突き詰めるマルチな剣士…明かした五輪への思いと未来予想図

スポーツ報知
三宅諒

 2012年ロンドン五輪フェンシング男子フルーレ団体銀メダルの三宅諒(29)=フェンシングステージ=が、フードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」配達員のアルバイトなどで注目された新型コロナウイルス禍の自粛期間を振り返った。同種目の代表チームで最年長のベテランは、2大会ぶりとなる来夏の東京五輪出場への思いや未来予想図を明かした。

 新型コロナウイルスの影響で、フェンシングは3月に東京五輪の出場権に関わる国際大会が延期になった。五輪の1年延期も決定。4月には緊急事態宣言も出た。大会がなくなり試合に出場できない中で、三宅はアスリートとして過ごす日々に葛藤していた。

 「やっぱり試合がなくなり、スポンサーさんにお返しできる場がなくなって、嫌でも『何してんだろ』と自分の存在価値を考えた。“スポーツができないアスリート”になったわけだから、さまざまなことを考えさせられる期間となりました」

 コロナ禍の4月末、「note」で「Uber Eats」のアルバイトを開始し、17年からフリーで活動してきた三宅はスポンサー3社との契約も保留にしてもらったことを明かした。五輪メダリストの突然の発表は世間を驚かせた。バイトは2か月ほど続け、多い時で週に4回、1日3時間、4~5件ほど配達し、計約4万円の収入を得た。そして、何より新たにスポンサーを4社獲得した。

 「結果でスポンサーさんにお返しができない中、契約を継続してほしいというのはおこがましいと。でも、何か自分が前に進めることを始めないと、と思った。今回前向きに活動したことで、ありがたいことに新しく応援してくださる人が増えました」

 5月に自身のYouTubeチャンネルを開設。自粛期間にいろいろと挑戦をしてきた三宅への注目は高まり、多くのメディアに取り上げられた。

 「僕が発信したことに多くの人が応援や賛同をしてくれたことは不思議。巻き込んだつもりはないけど、リアクションは欲しいんです。グッドでもバッドでも。コロナで経済や企業もどうなるか分からない。アスリートも自分で発信しないと競技に興味も持ってもらえないんじゃないかと。この状況でスポーツが本当に必要かといったら、微妙なところだと思うから」

 8月1日には金融系の企業に勤める同い年の万里衣さん(30)と結婚。最愛の伴侶を得て、来夏の五輪を目指していく。

 「5月頃、共通の知人を介した“Zoom飲み”で出会いました。イマドキでしょ? スピード婚です。新婚生活は楽しい。すごく笑顔がすてきな方で、おなかがすくタイミングも同じ。一緒にいて安心できます。一層、頑張らないといけないです」

 9月の全日本選手権で、約8か月ぶりに試合に出場した。結婚後初戦にもなり注目を集めたが、1回戦で16歳の新鋭・飯村一輝に10―15で敗れた。

 「五輪代表選考には関わらないけど、これからの選考レースを占う大会だった。負けてしまったのは当然、反省しないといけない。スポンサーさんにも申し訳なく思います。でも、何より久々の実戦で“悔しい”という気持ちを思い出させてくれて、いい経験にはなりました」

 コロナ禍で凍結中の五輪ポイントでは「日本勢5番手」につける。自国開催で、フェンシングは地元・千葉の幕張メッセで開催。2大会ぶりの五輪出場へ強い思いがある。

 「五輪に出ることが今の僕の一番の目標。代表に選ばれることが自然であるかのように強くなっていかないといけない」

 5つ上の太田雄貴(現・日本協会会長)とは12年ロンドン五輪に団体チームで出場したが、16年に太田氏が現役引退後も関係性は変わらない。

 「太田先輩が現役の時は散々、一緒に試合に出ていたけど、いまだに憧れの先輩だし、連絡する時は緊張します。敷居の高い先輩に世間話はできないです。でも自分のフェンシングに関わる大きな決断をする時は太田先輩の力を借りたいなと思っていて、相談させていただきたいと思います」

 前回のロンドン五輪は男子フルーレ代表の最年少21歳で初出場したが、来夏の東京大会に向けては代表チームで最年長となった。

 「僕は今年30歳になりますが、僕以外はみんな20代前半。代表チームのみんなからは『おじいちゃん』と呼ばれています(笑い)。海外遠征時も彼らの話に耳を傾けるとTikTokの話をしていたり。普段の会話から若いなと思いますね」

 フェンシング以外のスポーツ経験はなく、「アスリートなのに運動が苦手なんです」と明かす。

 「特に水泳とか記録で勝負する競技はダメですね。他にもボールは投げられないし、蹴れない。これまでの人生で5キロ以上走ったことがなかった。でも結婚してから、妻は運動が好きなので、一緒に走ったり、テニスをしたり。あっ、この間、5キロ以上走れました!」

 10年に初めて日本代表チーム入り。海外遠征を含め、「よく食べる」のはファストフードのマクドナルドのハンバーガーだという。

 「海外で何か分からないものを食べるより、マックは全世界共通だから安心できるんです。炭水化物でたんぱく質を挟むものだから、必要な栄養も取れて、試合前にもよく食べる。いつも『ビッグマック』と『ダブルチーズバーガー』『オレンジジュース』という不動のメニューを注文します」

 17年にはファッション誌「VOGUE」でモデルのローラと共演した。競技では、昨年の全日本で音声解説を担当するなど活躍の幅を広げる。

 「所ジョージさんが僕の憧れなんです。所さんはミュージシャンだけど、司会もでき、いろいろな場面で活躍されている。僕もいろいろな顔を持ちながら、10年後、20年後も剣を持っていたら、それはすてきなことだなと思います」(ペン・宮下 京香、カメラ・相川 和寛)

 ◆三宅 諒(みやけ・りょう)1990年12月24日、千葉・市川市生まれ。29歳。5歳でフェンシングを始め、慶応高2年時の2007年世界ジュニア・カデ選手権男子フルーレ個人優勝。慶大4年時に出場した12年ロンドン五輪では太田雄貴らと組んで男子フルーレ団体銀メダルを獲得。マイブームは両刃カミソリでひげを整えること。左利き。178センチ、72キロ。家族は妻。

 ◆三宅の東京五輪への道

 コロナ禍で主要国際大会が延期になり、世界ランクに基づく五輪ポイントランクは凍結中。男子フルーレは開催国枠で出場する見通し。代表選手は団体に同枠をあてた場合、五輪ポイントランク個人で日本勢上位2人と日本協会の推薦で1人が選出される。三宅は敷根崇裕、西藤俊哉、松山恭助、昨年のW杯で団体メンバーだった鈴村健太に次ぐ「日本勢5番手」につける。再開後の国際大会でポイントを引き上げるか、同協会の推薦での出場を目指す。

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