「関西演劇祭2020 お前ら、芝居たろか!」劇作家で演出家・西田シャトナー氏と映画監督の行定勲氏が審査員を務める…11月21~29日クールジャパンパーク大阪TTホールで開催

「関西演劇祭」で2年連続で審査員を務める行定勲氏(左)と西田シャトナー氏
「関西演劇祭」で2年連続で審査員を務める行定勲氏(左)と西田シャトナー氏

 関西を中心に活動する若き演劇人が集結する「関西演劇祭2020 お前ら、芝居たろか!」が11月21~29日に大阪市中央区のクールジャパンパーク大阪TTホールで開催される。劇作家で演出家の西田シャトナー氏(55)と映画監督の行定勲氏(52)が昨年の第1回に続き、スペシャルサポーターとして審査員を務める。演劇界、映画界のトップランナー2人に“表現者を育てる”という立ち位置でインタビュー。コロナ禍でのエンタメの在り方についても尋ねた。(筒井 政也)

 同演劇祭は吉本興業が主催し、「演劇を通して関西をもっと元気に!」をスローガンに10劇団が参加する。昨年は漫才コンビ「令和喜多みな実」の野村尚平(32)が率いる「劇団コケコッコー」がベスト脚本賞と演出賞などに輝き、新たな才覚が見いだされた。活動の幅を広げるチャンスでもある。

 行定「吉本さんから最初に聞いたのは、これからの人たちにとって、才能はあっても披露する場所がない、ということ。東京なら『君と組みたい』と前を歩く人が新しい人に手を差し伸べることがあるんですが、関西ではなかなか起こらない。インディーズの頃って叫び声を上げても誰も気付いてくれない。でも、世の中は開いている。『場をつくる』ということですね。ただ、優劣を付けるだけでは残酷。この演劇祭は違う。衝撃を発見する場所かな」

 西田「才能あるクリエイターが『営業もお前らで頑張れ』と言われても、それはなかなかできない。賞をあげるから後は頑張ってね、ではなく、アドバイスはするし、声もかけますよという思いが強い。スタッフの熱さもすごい」

 とは言え、厳しい世界には違いない。今年公開された行定監督の映画「劇場」(動画配信中)は、うだつの上がらない劇作家・永田(山崎賢人)が主人公だ。

 行定「いきり立って『俺のことを誰も分かってくれない』『世の中が俺と向き合わない』なんて思ってはダメ。主人公の永田と同じで、ねじ曲がってしまう。僕が、育てたいと思うような才能に出会ったとしたら、言いたいのは『自己評価しないでね』。評価は他人がするもの。評価をされる=自分を知る。多くの他人にさらしてあげたい」

 一方の西田は後進に対し、「一緒に育とう」という意識を持っている。

 西田「ここ数年で、モラルや常識の問題で、僕らや親の時代は相当ひどかったことが分かってきた。先輩たちが価値観をアップデートしないといけない時代になった。若者も、あまり先輩の意見をあてにしていてはダメ。自分のことをよく考えていこう。一緒に育たなアカン、というのはそれもあるんです」

“土いじる”時期 それでも2人は演劇のワークショップやティーチインの経験が豊富。表現者を目指す最近の若者は「いい子が多い」と口をそろえる。

 西田「めちゃくちゃハンサムなのに普通にちゃんと努力してるとか。僕の時代やったら、こいつ、結構エエ気になってるやろなぁと思う(笑い)」

 行定「謙虚でビッグマウスがいないですよね。インパクトを残そうとカマして来たり。食いついてこないんですね。ウザいと思われないかと距離を取る。そうすると、みんなどんぐりの背比べに見える。実はそういう所に才能が埋もれているので、場をつくり、発表させないと」

 だが新型コロナウイルスの影響でエンタメ界は大ダメージを受け、自粛が明けても手探りの状況が続く。

 西田「僕は割と、あわてふためいている人たちより、じっとしている人たちにシンパシーを感じています。そんなに頑張らず、ゆっくり、次のために“土をいじる”時期と思えばいいのでは。演劇界はこの50年、『こんな花ができました』という競争ばかりして、土をやせさせてきたから」

 行定「映画監督として僕は別の立場。演劇は『生の物を見る』という魅力は変わりようがなく、それを配信しても…という(視聴数が伸びない)結果もほぼ出た。一方で映画は、変わることができる兆しが見えてきた。劇場が封鎖されていた中、配信で作品の多様性が出てきた。劇場でヒット作を生まないと次の映画が撮れず、万人受けする作品ばかりになると、つまらなくなるのは当たり前です」

演劇で上がって ピンチをチャンスに変えれば、間隙を縫うように次世代を担う表現者が飛び出す可能性も秘めている。演劇祭もその場の一つだろう。

 行定「僕が組んできた脚本家は、ほとんどが演劇人。彼らのイマジネーション、インプットしているものは僕とは違うので、合わせてアウトプットすることで、想像を凌駕(りょうが)する作品になる。これからの若い人たちの中にもいると期待します。でも気になるのは最近、『最終的には映画を作りたい』と言う人が多いこと。演劇で上がって言ってほしい。映画界でも『シネコンで僕の作品がかかるなんて感動』っていう若手がいる。ミニシアターの方がずっと育ててくれるのに。『売れたいんです』っていうのはカワイイなと思うけど(笑い)」

 西田「演劇界でも『大劇場に行きたかった』と言う人間がいる。それがアガリの方向だと思っている。大量生産されたいんでしょうね。みんなでお金を出し合い、遠い席からでも芝居を見ようという大劇場は、いわば廉価版。本当のぜいたくはマイケル・ジャクソンが喫茶店で歌っているのを一人で見ることですよ。今回の演劇祭は客席も絞るし、廉価版とは真逆。見る側も演じる側もありがたい」

 劇場という磁場から発信される新鮮なエネルギーが「ニューノーマル」の時代を動かすかもしれない。

◆関西演劇祭2020

 大阪・森ノ宮のクールジャパンパーク大阪TTホールで11月21~28日に演劇祭を開催し(25、26日は休演)、同29日に結果を発表する。「Artist Unit イカスケ」「安住の地」「キミノアオハル」「くによし組」「劇団アンサングヒーロー」「劇団 右脳爆発」「劇団The Timeless Letter×ラビット番長」「劇団乱れ桜」「ばぶれるりぐる」「May」(50音順)の10劇団が参加。実行委員長・羽野晶紀、フェスティバルディレクター・板尾創路。

 ◆西田 シャトナー(にしだ・しゃとなー)1965年8月13日生まれ。55歳。大阪府出身。神戸大学在学中の90年に佐々木蔵之介らと劇団「惑星ピスタチオ」を旗揚げ(00年解散)。12年から漫画原作の舞台「弱虫ペダル」シリーズの脚本・演出を担当し「2・5次元演劇」と称される潮流となる。14年「SHATNER of WONDER」をスタート。名前の由来はSFドラマ「スタートレック」でカーク船長を演じた俳優ウィリアム・シャトナーから。折り紙作家としても知られる。

 ◆行定 勲(ゆきさだ・いさお)1968年8月3日生まれ。52歳。熊本市出身。岩井俊二監督作「Love Letter」(95年)、「スワロウテイル」(96年)の助監督などを経て、「OPEN HOUSE」(97年)で長編映画監督デビュー。窪塚洋介主演「GO」(01年)で報知映画賞作品賞など主要映画賞を総なめにする。主な監督作に「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)、「パレード」(10年)、「リバーズ・エッジ(18年)など。最新作は9月に公開された「窮鼠はチーズの夢を見る」。

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