自分で自分をマーケティングする「ラランド」サーヤに見る高学歴女性芸人の光と陰

文化放送でのラジオパーソナリティー・デビューに笑顔を見せる「ラランド」のサーヤ
文化放送でのラジオパーソナリティー・デビューに笑顔を見せる「ラランド」のサーヤ
アイドル顔負けのキュートなルックスで微笑むサーヤ
アイドル顔負けのキュートなルックスで微笑むサーヤ

 実力主義かと思いきや、まだまだ学歴信仰の根強い日本。女性芸人の中にも高学歴という点でも注目される存在がいる。

 最近、エッセーで「独身で私を必要としてくれる人がそばにいません」などと生きづらさをつづって話題の「オアシズ」光浦靖子(49)は東京外語大、相方で、あえての負け犬キャラで人気の大久保佳代子(49)は千葉大。「ハリセンボン」箕輪はるか(40)、「相席スタート」山崎ケイ(38)、「にゃんこスター」アンゴラ村長(26)は3人とも早大。まだまだいるインテリ女性芸人の系譜にまったく新しいタイプが現れた。

 20日、東京・浜松町の文化放送で開かれた上口宏社長の定例会見。ゲストとして登場したのが、11月3日スタートの新番組「卒業アルバムに1人はいそうな人を探すラジオ」(火曜~金曜・後7時)の金曜パーソナリィティーとして、ラジオ・デビューする男女コンビ「ラランド」のサーヤ(24)だった。

 上智大外国語学部在学中の2014年、同大のお笑いサークル「SCS」で同級生だったニシダ(26)とコンビ結成。昨年12月の「M―1グランプリ」で出場全5040組中、敗者復活戦に唯一のアマチュアとして進出。新人お笑いタレントの登竜門的番組「新春おもしろ荘」にも出演。Youtube登録者数は3か月で5万人超え。単独ライブを開けば、900枚のチケットが1分で完売と一躍、人気者となった。

 M―1登場時からアイドル顔負けのルックスで話題を呼んだサーヤはこの日もキュートなワンピース姿で登場。文化放送13階の会見場を一気に明るくした。

 ラジオ・デビューについて、「私はフリーで活動している芸人なのでパーソナリティーをやらせてもらえると思ってなくて…。本当に驚きました。相方もいないし、ソロの仕事だし、いろいろな初めてが重なったと思っています」と、まずは緊張した表情で話すと、「ラジオは自分にとって、対話。子どもの頃に聞いていた時もベッドの上で本当に1人で聞いている感じ。パーソナリティーの人と2人で話している感じでした」と、24歳ながらラジオっ子であったことを告白。

 今回の番組についても「ジャンルを問わず、いろんな人と話せそうだなと。(新型コロナでの)自粛期間に入って、テレビとかより人と話せるメディアだなと思ってます。寂しいな、誰かと話したいなと思った時に聞いてもらえたらと思います」と続け、「今まで携わったことのない業種の人に話を聞いてみたいですね。タクシーの運転手さんにも女性の方が増えてきたり、オリンピックの新種目になった人とか占い師の人とか。変わった職業に就いた人に話を聞いてみたいですね」と笑顔を見せた。

 ネタ同様、だらしないプライベートで知られる相方・ニシダいじりも全開。「(ニシダ不在は)非常にやりやすいですね。相方は生放送で言っちゃいけないことを言ったり、普通に親不孝だったり、退学を2回していたり、ちゃんとしてない人間なので切り離して、自分の不安を取り除いて100の状態で臨める。ありがたいなとしか思ってないです」とバッサリ。

 さらに「相方は遅刻癖とか無断欠席とか多いので、1人の仕事を増やしたいと思っていました。だから、本当にありがたいです。『このままだと1人で行っちゃうよ』と相方を冷や冷やさせたいな」とまで言い切って、笑わせた。

 ニシダも大のラジオ・ファンということで「言葉にこそしなかったけど、(悔しさが)顔にはすごく出ていて、マネジャーに『コンビのラジオはねえのか?』と詰め寄っていました」と明かしたサーヤ。

 いまだニートのニシダとは対照的に自身は18年、大学を卒業すると、TOEIC900点の語学力などを生かし、東京・港区の広告代理店に就職。一OLとして企業のPR・広告業務に携わり、お笑いタレントとしてだけでなく、それを支える広告業界の目線も取り入れつつ、自身が作るネタに生かしている。

 そんな、アド・ウーマンでもあるサーヤの真骨頂が発揮されたのは、この直後。父親、母親世代のアラフィフの記者たちから多分、デビュー以来、10回、いや100回近く聞かれてきただろう質問が出た時だった。

 「OLとの二足のわらじをお笑いにどう生かしている? 芸人一本は考えていないのか?」―

 意地悪な見方かも知れないが、前列に座っていた私には、その瞬間、サーヤの目が待ってましたとばかりに輝いたように見えた。そして、自身のプレゼンの順番を待っていた広告マンの如く、立て板に水のように話し始めた。

 「パラレル・キャリアみたいな感じで、引き続き広告系の仕事の脳も使いつつ、芸人もできればいいかなって。広告で得た知識が芸人の活動に生きていたり、演者として現場で感じたことを、そのまま、広告に生かしたりと、どちらもやっていて、デメリットがないというか。相乗効果があるので、なるべく、どっちの脳も使っていたいと思います」―。

 昨年のM―1での快進撃についても、「私たちはずっと、M―1も2回戦止まりくらいで2、3年やっていたんですけど、準決勝まで進んだタイミングっていうのは、自分たちの見え方みたいなのを改めて話し合った後に準決勝まで進んで。それは社会人になって、私が広告関係の仕事について、この商品を売り出す時に、まずターゲットを決めて、そのターゲットに刺さる言葉とか、キャッチコピーを考えるという逆算で考えるというのを広告の仕事で学んで。それは芸人にも当てはまるな、今までが自分たちが素人過ぎる見え方だったなって気づいて」と一気に話した。

 さらに「それこそ、ちゃんと衣装をそろえるとか、ワードも、もうちょっと一般的な人に刺さるワードにしようとか。M―1の客層、広告で言うターゲットを逆算してネタを考えるという逆算の考え方みたいなのをネタに生かしたっていうのがありますし。私のパラレルワーカーというか、会社員をやっている芸人みたいな肩書というのがメディアの方にとっては、フックになって出してもらえるから、その肩書になるものを増やそうという。相方は競馬好きみたいな、キャラで、どうやったら、もっとテレビに出してもらえるかな、そういう視点にも及んでいったのは社会人になってからかな」と続けた。

 ニシダと2人、特定の事務所には所属せず、フリーで活動を続けている点についても「もう、どこか既存の事務所に入ることはなくて…。学生芸人の頃から大会で優勝すると、いろいろな事務所が(誘いに)来てくれたけど、相方がいつ卒業するか分からないし、私も家にお金入れるので、就職しなくてはと。だから、事務所に入らないと決めて」と明かし、「今、学生芸人時代のライバルがマネージメントしてくれて、『ラランドチーム』みたいな感じで3人態勢ですごく、うまく回っている。今から事務所に入ると、逆にご迷惑をかけてしまう感じで、今、すごく自由ですので、既存の事務所入りはないです」と立て板に水の如く答えた。

 どうだろう。まるでマーケティング会社のやり手社員のプレゼンのようにスラスラと流れるサーヤの言葉を体感してほしくて、長々と書いてみた。

 特に「会社員をやっている芸人みたいな肩書というのがメディアの方にとっては、フックになって出してもらえる」という言葉に、今年、既に80本以上のメディアに出演している人気者の、したたかな計算も感じ取った。

 自分で自分をマーケティングし、マスコミに受ける「フック」の部分を身につけ、大きくなっていく。自己プロデュースの究極のような言葉を聞いていて、「全く新しいインテリ芸人が出てきたな」と思った反面、あまりに現代風の芸人像に寂しさを感じもした。

 何しろお笑い芸人と言えば、泥酔して生番組に出て不規則発言を連発した故・横山やすしさんや写真誌「フライデー」の交際女性への乱暴な取材に腹を立て、講談社に殴り込んで現行犯逮捕されたビートたけし(73)など破天荒なエピソードが付きもの。

 スケールの小さいところでは「アンジャッシュ」渡部建(48)の多目的トイレ不倫なんていうのもあった。そんな世間の常識とは、はるかにかけ離れた言動に芸人としての魅力を感じてしまう部分があるのは事実だ。

 しかし、そんな型破りな言動など決して許されない「不寛容の時代」が今、訪れている。

 自らをマーケティングし、プロデュースし、幅広く売っていくサーヤのような芸人こそが、現代の最先端なのだとも思う。だが、一方で脳内での計算ずくで生み出されるものが、果たしてイレギュラーな爆笑を呼べるのか? 果たして、それを「お笑い」と呼べるのか? そんな疑問も、また持つ。

 高学歴女性芸人の人生だってさまざまだ。50歳目前にして、「笑われる苦痛」を正直に明かした光浦。慶大大学院修了後、NHKにディレクター職で入局も2年で辞めて自身の会社を立ち上げた、たかまつなな(27)。同じく慶大卒でタイツ芸の「モエヤン」として活躍した池辺愛(40)は今、ラジオパーソナリティー、絵本作家に転身。2児の母でもある。

 まだ、女性芸人として第一歩を踏み出したばかりのサーヤの明るい笑顔を見ながら、「考え抜いた、そのマーケティングが時代にはまって、マッチし続けると、いいな」―。これは父親目線なのか。思わず、そんなことを願っていた。(記者コラム・中村 健吾)

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