飯伏幸太、史上3人目の連覇でフィナーレ…秋開催の新日G1クライマックスがコロナ禍の日本列島に運んだ熱狂

SANADAに必殺のカミゴェを決め、史上3人目のG1連覇を飾った飯伏幸太(カメラ・泉 貫太)
SANADAに必殺のカミゴェを決め、史上3人目のG1連覇を飾った飯伏幸太(カメラ・泉 貫太)
G1優勝5回のレジェンド・蝶野正洋から優勝トロフィーを受け取った飯伏幸太
G1優勝5回のレジェンド・蝶野正洋から優勝トロフィーを受け取った飯伏幸太

 1か月に渡って日本列島を駆け抜けたプロレス界最大のお祭りは秋開催でも、やはり熱かった。

 例年なら8月開催。真夏のシングル最強決定リーグ戦として、新日本プロレス最大の集客を誇ってきた「G1クライマックス30」が今年は東京五輪(延期)のため、9月から10月にかけての開催に。9月19日、大阪府立体育館大会での開幕戦から北は北海道・北海きたえーる、南は香川・高松市総合体育館大会、そして、今月16、17、18日の東京・両国国技館での最終3連戦まで、選ばれしヘビー級20戦士が全19大会を駆け抜けた。

 今年最大の敵がもう一つ。いまだ収束しない新型コロナウイルスの感染対策として、A、Bブロックに10人ずつ分かれた選手たちを完全分離。例年なら公式戦を戦わないブロックの選手たちもタッグなどで各大会に参戦してきたが、今年はA、Bブロック戦を交互に行い、別ブロックの選手たちはその大会には参加しないファンにとって、少し寂しい形となった。

 両国国技館は最大収容人数1万1098人の26%に過ぎない2928人(18日)、大阪府立体育会館は同8000人の30%の2401人(9月19日)、東京・後楽園ホールも同2005人の35%の696人(9月29、30日)など各会場で厳格な入場制限が施され、入場時には消毒、検温を徹底。取材記者も選手との接触は厳禁。コメントスペースでの取材も団体側のオフィシャルカメラのみに限定された。

 そんな、例年と一変した逆境の中の戦いでも新日の精鋭たちは身を削って、いつもどおりの魅力的な戦いを提供し続けた。

 そして迎えた18日の優勝決定戦。G1決勝史上最長の35分12秒の激闘の末、蝶野正洋(57)、天山広吉(49)に次ぐ史上3人目の2連覇を果たしたのが、こちらは史上初めて3年連続の優勝決定戦進出の「ゴールデン☆スター」飯伏幸太(38)だった。

 初優勝を狙ったSANADA(32)との頂上決戦は、席間を一つずつ空けて座った観客たちの声を出しての応援は禁止。手拍子と足踏みのみでエールを送る緊迫した空気が流れた。抜群の身体能力が武器の2人は序盤からスピード抜群の戦いを展開。1か月でシングル戦10試合をこなすハードな戦いの中、左ももを痛め、テーピングをして臨んだ飯伏だったが、エルボー合戦からSANADAの顔面、胸板に強烈なキックをたたき込んでいった。

 「来い!」と強烈なエルボーを受け止め続け、ドロップキックもヒラリとかわす。STFで顔面を絞め上げ、その場跳びムーンサルトプレス、場外へのプランチャーと攻め立てた。

 SANADAも高角度のドロップキック、場外へのプランチャーと見せての豪快なエルボーで反撃したが、飯伏は決死のラウンディングボディプレスをかわすと、側頭部にハイキック。流れをつかむと、人でなしドライバーで追い詰め、頭部へのハイキック連発からのカミゴェ2連発でとどめを刺した。

 あまりの激闘に試合後も立ち上がれない飯伏。座り込んだまま、G1・5回優勝のレジェンド・蝶野から優勝トロフィーを受け取ると、思わず涙を流した。

 優勝旗を高々と掲げると、「本当にありがとうございました。3年連続の優勝決定戦で蝶野さん、天山さん以来の2連覇を果たしました。G1の歴史に名前を残した飯伏幸太です」と、なぜか自己紹介。「こういう時代にこんなにたくさん集まっていただいて、本当にありがとうございます。一刻も早く前のようなプロレスの時代が来ることを願っています。このG1をIWGPのベルトに変えたいです。逃げない、負けない、あきらめない、そして、裏切らなかった。僕は本当の神になる」と汗まみれの顔で堂々、宣言した。

 バックステージにフラフラの状態でたどり着くと、「何回でも言います。僕は最後まであきらめなかった。さすがにきついですよ、体はボロボロですよ」と、ポツリとつぶやいた飯伏。

 「G1で優勝したけど、IWGP(への挑戦)期間がいつもより今回は短いんです。いつも以上にチャンスはある。このテンションをキープしていきます。東京ドームまで」と、早くも来年1月4日の東京ドーム大会での実現が確実となったIWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王・内藤哲也(38)への挑戦を見据えて、ニヤリ。

 「プロレスラーなんで…。もう一度、原点に戻って、プロレスを頑張るだけです。来年もさ来年もずっと、プロレスを盛り上げていきますよ。このコロナの時代に東京ドームができるっていう…。これは最高にうれしいこと。こんな時代に東京ドームで2連戦できるイベントはない。それをプロレスができている。僕は(G1優勝で)発信できる力を得たので、後はIWGPヘビーを取るだけ。そうしたら、もっと僕の言っていた神に近づけると思う」と堂々と言い切った。

 19日、時節柄、オンラインで行われた一夜明け会見でも飯伏は「IWGPヘビーとインターコンチネンタルの2つのベルトを内藤哲也から取りたい、必ず」と同い年のライバル・内藤を名指しして断言。「内藤さん、それまで(ベルトを)持っていて下さい。内藤哲也じゃないとダメです。僕が挑戦します」と続けた。

 その言葉の端々から伝わってくるのは、たとえ逆境の中にあっても、プロレスを支え、盛り上げていこうという決意そのもの。そんな男を、蝶野はこう言って称えた。「彼がプロレスを背負わなきゃいけない」―。そう、プロレスというスポーツの魅力のすべてが、飯伏が口にした言葉の数々の中に凝縮されている―。私は、そう感じた。

 この1か月を象徴する言葉がある。

 18日のメインイベント前のリング上で「ミスターG1」蝶野は、こう口にした。「G1クライマックス開催おめでとうございます。今日の決勝戦は特別な試合です。2020年、新型コロナウイルスとの闘いの中、新日本プロレスはウイズ・コロナを選び、堂々と勇気を教えてくれました。新日とG1のOBを代表し、感謝します。ありがとうございます」―。

 1か月に渡って、新型コロナという見えない敵と戦い続けた日本最大のプロレス団体・新日と飯伏を筆頭としたトップレスラーたち。選手を鼓舞する観客たちの懸命の手拍子の響きも、マスクをしてリングに懸命の消毒を施す職員たちの姿も、そして、トロフィーを抱いた飯伏がこぼした涙も、この秋に起きたすべての出来事を、私は決して忘れない。(記者コラム・中村 健吾)

SANADAに必殺のカミゴェを決め、史上3人目のG1連覇を飾った飯伏幸太(カメラ・泉 貫太)
G1優勝5回のレジェンド・蝶野正洋から優勝トロフィーを受け取った飯伏幸太
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