躍進の翔猿 愛されキャラの裏には思いやりの心 「新入幕だから…」と後輩にお米600キロ

秋場所で敢闘賞を受賞した翔猿
秋場所で敢闘賞を受賞した翔猿

 正代(28)=時津風=の初優勝と大関昇進で幕を閉じた、大相撲秋場所(9月27日千秋楽)。千秋楽まで誰が優勝するか分からない混戦で盛り上がった。熱戦をさらに熱くした1人が、今場所新入幕で11勝を挙げた翔猿(28)=追手風=。175センチと体は決して大きくないが、真っ向勝負でファンを喜ばせた。

 相撲の取り口はもちろん、インタビューなどでその人柄にひかれたファンも多いのではないだろうか。今場所新調した締め込みは、世界的に医療従事者への感謝を表す色とされる青色。新型コロナ禍で医療の現場で汗を流す人々への、思いを込めたという。しこ名の「猿」は本人のこだわり。「動きが猿のようだし、申(さる)年生まれなので」。場所中には「体の小さい僕が勝てば盛り上がる」と話し、有言実行してみせた。

 本場所前には、母校の埼玉栄高相撲部の寮で暮らす後輩に、お米600キロを贈っていた。同校では、卒業生が新十両などの昇進の節目に、後輩へお米を贈ることがある。それでも山田道紀監督によると、今回は思わぬ差し入れだったようで「今度は『え?』という感じで。本人に聞いたら、『新入幕だから』と。翔猿は、そういうところがあるんですよ。『感謝の気持ちと思いやり』があるということです」。“感謝の気持ちと思いやり”は、相撲部の部訓でもある。在学中はキャプテンも務めたOBの男気と優しさに、同監督も目を細める。

 翔猿の“らしさ”に思わず笑顔になったのは、10勝目を挙げた12日目、取組後のNHKインタビュー。残り3日で、優勝争いのトップを並走。アナウンサーにV争いについて問われると、荒い呼吸のまま真剣な表情で「そうですね…。あと3連勝したら考えます!」と答えた。誰もが「それもう、場所終わってるじゃん」と、心の中でつっこんだはず。山田監督の「愛されキャラというか、憎めないところがある」という言葉を、少し理解した一場面だった。

 14日目には大関・貴景勝(千賀ノ浦)と白熱の相撲を展開し、負けたあとの晴れやかな表情も見ていてすがすがしかった。勝てば優勝決定戦に持ち込めた千秋楽の正代戦は、追い込んだ土俵際で逆転の突き落としを食らい黒星。立ち上がった後の悔しそうな表情には、グッときた。「力士人生で一番楽しかった」と本人は場所を総括したが、その楽しさは十二分に伝わってきた。大きく番付を上げる11月場所(同8日初日・両国国技館)では、どのような相撲を見せてくれるのか。再び本場所を湧かせてくれるに違いない。(大谷 翔太)

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