王輝 新十両場所で全敗の屈辱…乗り越えて欲しい「男の修行」

秋場所を15連敗で終えた王輝
秋場所を15連敗で終えた王輝

 正代(28)=時津風=が初優勝と大関昇進を決め、新入幕・翔猿(28)=追手風=の活躍もあり盛り上がりを見せた秋場所。その中、晴れ舞台で苦悩の15日間を過ごした力士もいる。新十両の王輝(24)=錣山=。15日間一度も白星を挙げることができず、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降では初めて、新十両の土俵で全敗した。

 序盤は緊張からか、足が動かなかった。初日を黒星発進すると、2日目から中日までの7敗のうち5敗が「はたき込み」と「引き落とし」。攻め込もうと前に出た所で引かれ、バタリと手をつく相撲が続いた。ストレートの負け越しが決まった8日目には、相手の強烈なおっつけで左腕を負傷。後半戦に入ると、患部に巻かれるテーピングは日に日に増えていった。

 ついに15敗目を喫した千秋楽。取組内容や今場所の成績について報道陣に問われると、「そうですね」と繰り返した。「今場所をどのような気持ちで過ごしたか」と問われると、「いつも通りです」。負傷した左腕についても「(状態は)分からないですね。大丈夫じゃないですか」と、表情を変えなかった。

 入門から7年。幕下2枚目だった7月場所で5勝を挙げ、悲願の新十両をつかんだ。部屋関係者に話を聞けば、誰もが認めるその努力。本場所に向け人一倍、いや二倍三倍は稽古場で汗を流す。「たまには休まないとダメだよ」「誰か止めないと、ずっと稽古とかトレーニングをやってますよ」。錣山部屋の朝稽古を取材したことは数度しかない。しかし王輝の稽古に対する姿勢に関しては、皆が口をそろえるのだ。

 15敗目を喫した取組後、その日NHK解説を務めていた押尾川親方(元関脇・豪風)は「これをただの負けにしたらダメ。一つプラスの経験と捉えて、頑張って欲しい。人として男として、肉体的にも精神的にも強くなって帰ってきてほしい」とエールを送った。王輝の悔しさは計り知れない。ただ押尾川親方の言葉を借りれば、王輝には「男として」の強さがあると信じている。

 錣山部屋では日々、昭和の連合艦隊司令長官・山本五十六の「男の修行」を唱和し、稽古をしめる。

 『苦しいこともあるだろう。 言いたいこともあるだろう。 不満なこともあるだろう。 腹の立つこともあるだろう。 泣きたいこともあるだろう。  これらをじっとこらえてゆくのが 男の修行である』

 王輝は本場所中、少なくとも公には一度も弱音を吐かなかった。中日から、左腕がどれほど痛かったかは分からない。苦しく、自分に腹が立ち、もしかしたら泣きたくもなったかもしれない。だが、どれだけ負けが込んでも、休場せずに15日間土俵に立ち相撲を取り続けた。大相撲ファンの胸には、その姿が焼き付いたはずだ。

 11月場所(同8日初日・両国国技館)では幕下に陥落する。関取の地位は、わずか1場所で失った。だが今は、じっとこらえる時。王輝の努力が実を結ぶ日は必ず来ると、私は信じている。再び関取として、土俵に立つ日まで。王輝にしか歩むことのできない相撲道の第一歩を、踏み出したばかりだ。(大谷 翔太)

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