◆JERAセ・リーグ DeNA0―5巨人(20日・横浜)
緊急先発の畠が3連敗中だった巨人を救った。左肘違和感のメルセデスに代わり約1か月ぶりの1軍マウンドとなったDeNA戦で6回2安打無失点と快投。今季5試合目の登板で、先発では1099日ぶりとなる待望の白星を手にした。2位阪神が敗れたため優勝マジックは2つ減って「32」。21日からは、1万9000人に入場制限が緩和される本拠・東京Dに、広島を迎え撃つ。
夢見心地で、畠は勝利の感慨にふけった。ヒーローインタビューの冒頭で、帽子を取って一礼。苦悩や感謝…思いの丈を口にした。
「正直、もうこうやってしゃべることができないかなって思うくらい何回もけがをしてた。トレーナー、トレーニングコーチに支えられて戻ってくることができました。本当にありがとうございました」
18年10月9日の阪神戦(甲子園)以来712日ぶりの白星。先発としては17年9月17日のDeNA戦(東京D)以来、実に1099日ぶりだ。今季5試合目でつかんだ1勝に「ずっと勝てなくて歯がゆい思い(だった)。ほっとしています」と胸をなで下ろした。
メルセデスが左肘の違和感で登板を回避。G球場で2軍戦を見ていた時に急きょ1軍での先発を告げられた。「『やってやるぞ』と。失うものはないくらいの気持ちで行きました」。唯一のピンチだった2回1死一、二塁も自慢の直球で倉本を左飛、柴田を見逃し三振に仕留めた。味方の好守にも助けられ、6回をわずか2安打で無失点。原監督も「悔しい思いもしながら、組み立てという部分はできていた」と評した。
前回登板した8月22日の広島戦(マツダ)。初回に鈴木誠に死球を与えると、外角の変化球でかわす投球に変わった。3回途中で2安打ながら5四死球と自滅し5失点KO。才能を高く評価する原監督にとっては、その「びびった」姿勢が何より残念に映った。
そして登板後。登録抹消が決まると、畠のもとに指揮官からLINEでメッセージが送られてきた。「プロ野球選手として奥さんと子供を幸せにするのに、そんなんでびびっていては恥ずかしいよ」
昨年の契約更改で結婚を発表し、一家の大黒柱となった右腕が、この言葉に奮い立たないはずがなかった。強打のDeNA打線を恐れず内角を突いていった。
今年は昨年受けた右肘手術から復活を目指しスタート。だが、春季キャンプ終盤に右肩周辺の肉離れで離脱し、勝ち星にも恵まれなかった。そんな苦しい時、妻の何げない一言が力になった。この日は「楽しんで」と送り出され、結婚後初勝利。ウィニングボールはもちろん「嫁に渡します」と照れ笑いを浮かべた。
ここまで先発投手で3連敗以上を止めたのは菅野だけだったが、この日は畠が救世主となった。2位の阪神が敗れ、優勝マジックは2つ減り「32」に。「これからも多く投げられるように頑張っていきたい」。畠の止まっていた時計の針が、再び動き出した。(河原崎 功治)