役の数だけ「顔」を持つ女優・瀧内公美の素顔…25日公開「蒲田前奏曲」でも存在感

表情の豊かさも魅力の瀧内公美(カメラ・小泉 洋樹)
表情の豊かさも魅力の瀧内公美(カメラ・小泉 洋樹)

 若手の実力派女優・瀧内公美(30)が出演する映画「蒲田前奏曲」が25日、公開される。瀧内といえば、昨年「火口のふたり」でヒロインを好演し、キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞をはじめ賞レースで一気に評価され、注目を集めた。大胆な濡(ぬ)れ場など多くの女優が物おじする度胸のいる難役もいとわない。どうして30歳で肝の据わった役者になり得たのか、その理由を探ってみたい。(内野 小百美)

  • 「蒲田前奏曲」の「行き止まりの人々」より。瀧内(左)と松林うらら
  • 「蒲田前奏曲」の「行き止まりの人々」より。瀧内(左)と松林うらら

 瀧内が18歳で富山から上京したのは、教員を志したからだった。教育実習の期間中、通り道の神保町で映画「僕等がいた」(2012年公開)の撮影現場に遭遇した。地元で少しグラビア活動をしたことがあるが、気持ち的に区切りをつけていた。

 「子供の時、母とよく映画館に行きました。ずっとスクリーンに対する夢というか憧れが。自分は本当にこのまま教員になるのか。ちょうど将来への不安が膨らんだ時期と重なったんです」。夢の世界が、目の前にまぶしく広がっている現実。この瞬間、新たな人生が動き始める。

 「そのまま本屋さんに飛び込み、月刊『デビュー』(オーディション情報誌)を買い、準備を始めました」。何かに突き動かされ、導かれるような運命的なフットワーク。22歳での決断。日本では遅い方に入るかもしれない。しかしその分、自然と自分を客観的に見つめることができた。「個」が埋没する制服を着る群像劇的な作品への出演は「控えたい」。マネジャーにそう伝えると理解してくれた。

 「早くにデビューし、25歳くらいで淘汰(とうた)されていく人をずいぶん見てきました。これが現実の一面だと思う。取り立てて実績のない者が自分の意思を言うと生意気にも映ったでしょう。でも私はとにかく、ずっと長くこの仕事を続けたい。その一心だったので」。スタートが遅い分、揺るぎないものを持っていた。出世作となった白石一文原作「火口のふたり」(荒井晴彦監督)。共演の柄本佑(33)との大胆な濡れ場は、不可欠で避けられない。先に廣木隆一監督「彼女の人生は間違いじゃない」(17年)では報知映画賞主演女優賞にノミネート。福島の仮設住宅から東京に週末だけ風俗のアルバイトに行く市役所職員という役だった。相当な覚悟を要する役が続く。

 「皆さん、まず役のハードさに関心を示される。でも私の中で一番大事なのは監督の考えであり、脚本。いただいた台本が面白ければ、ぜひやってみたい!と思うものです」。脚本に描かれている人物に命を吹き込み「生きてみたい」と思えるかどうかに懸かっている。

 「蒲田前奏曲」は4つの連作。瀧内は3番目の「行き止まりの人々」に出演している。ある映画のオーディション。#MeTooの実体験を話すように、と命じられる。瀧内が演じた黒川という女優だけが、記憶から消し去りたい悪夢を赤裸々に語り始める。

 「このテーマを真剣に考えたことが、あまりなくて。自分にやれるのか不安もあった。でも中立的な立場で物事を見た時を想定し、自分のできる役割を果たせれば、と思い直しました」。黒川が登場した途端、この映画の空気は一変。破壊力を持った存在感を放つ。

 「撮影開始まで時間が短く、準備不足も心配でした。でも役に指名していただいた。そのことがうれしく、ありがたいことです」。不思議な人だ。インタ中の素顔といくつか見た映画のどの作品とも顔つきが違って見える。幼く見えたり、人生経験の豊富な大人の女性に見えたり。演じた役の数だけ「顔」を増やし続ける人なのかもしれない。

 ◆蒲田前奏曲 出演も兼ねる大田区出身の松林うららがプロデュース。売れない女優、蒲田マチ子(松林)のまなざしを通じ、女性たちのさまざまな交流を4つの連作「蒲田哀歌」「呑川ラプソディ」「行き止まりの人々」「シーラカンスどこへ行く」で描く。監督も4人でそれぞれ中川龍太郎、穐(あき)山茉由、安川有果、渡辺紘文の各氏がメガホン。タイトルは松林が好きな邦画の名作「蒲田行進曲」を意識してつけられた。第15回大阪アジアン映画祭クロージング作品。117分。

 ◆瀧内 公美(たきうち・くみ)1989年10月21日、富山県生まれ。30歳。高校時代に富山でグラビア活動の経験あり。大妻女子大児童教育学部を卒業後、女優活動を開始。2014年映画「グレイトフルデッド」で初主演。主な出演作に白石和彌監督「日本で一番悪い奴ら」(16年)、廣木隆一監督「彼女の人生は間違いじゃない」(17年)など。特技はバトントワリング、水泳。身長167センチ。

表情の豊かさも魅力の瀧内公美(カメラ・小泉 洋樹)
「蒲田前奏曲」の「行き止まりの人々」より。瀧内(左)と松林うらら
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