【巨人】原辰徳監督 独占手記 川上さんに並んだ球団最多1066勝目「V9追い続けたい」

通算1066勝で巨人歴代監督1位タイとなった原監督はサインを入れた大きなボールを手に笑顔を見せる(カメラ・橋口 真)
通算1066勝で巨人歴代監督1位タイとなった原監督はサインを入れた大きなボールを手に笑顔を見せる(カメラ・橋口 真)
巨人の監督別成績上位
巨人の監督別成績上位
川上監督と原監督のチーム成績
川上監督と原監督のチーム成績
原監督と川上監督の年度別成績
原監督と川上監督の年度別成績

◆JERAセ・リーグ 中日4―5巨人(9日・ナゴヤドーム)

 巨人が中日に5―4と競り勝ち、原監督が監督通算勝利数の球団最多記録1066勝目を挙げた。ついに名将・川上哲治氏に肩を並べ、スポーツ報知に独占手記を寄せた。14年間の長きにわたり指揮を執ることへの矜持(きょうじ)、監督に求められる要素、チーム作りでの信念など伝統の巨人軍を率いる指揮官としての胸の内を明かした。

 今回、川上さんと並んで巨人軍最多勝監督になるという栄誉に恵まれた。ただ、まだ戦い半ばという中で、感慨に浸るような余裕はない。今日のような苦しい試合ばかりだろうし、それは明日以降も変わらないのでないか、と思っている。

 東京ドームの監督室には、歴代監督のお写真と色紙を飾らせていただいている。巨人軍の監督経験者は、今年86年目を迎える中で12人しかいない。今回の記録も長く任せられたからできたことであり、そこは自分の中で誇れるところです。我々は求められる立場の人間。読売巨人軍、ファンの方に求めていただいたことには感謝しかない。

 監督としていくつかの節目を通過するたびに「忘れられない1勝とは」とよく質問を受けた。

 でも元来、振り返ることが苦手な性格と言おうか。言われてみれば、02年の監督1年目、3連敗からスタートした初勝利は「1つ勝つために、これだけ夜も眠れない日が来るのか」と思った。さらに幾度の優勝を決めた試合も深く心に刻み、ページをめくればそれぞれに思い出話はあるにしても、特別な1勝と言われると出てこない。それは、最初に記したとおり、まだ自分が戦っている最中だからだと思う。例えば、走ってる人は、後ろを振り返らない。振り返る時は負け、ギブアップする時でしょう。前への一歩を踏み出すことの方がはるかに大事。長くやってれば周囲が賛辞をくださる時もあるが、過去をたたえられても、今日の勝利を得られるものでもない。

 私が考える「監督に最も必要な要素」とは。まずは野球をよく知る、ということ。監督は野球博士でなければいけない。それが大前提。本を読み、評論家の意見を目にし、今は動画サイトでもメジャーがこんな戦術をやった、などいろんな情報が手に入る。ネットワークを広げておくことは常に意識している。加えて選手の性格も把握しておく。視野を広く観察し、対話を持つ。ラインでの“ひそひそ話”の中で褒め、時に叱咤(しった)する。それは多少の経験と年輪を重ねた私の武器だと思っている。

 チームを作ることにおいて目的は「勝つこと」その一点のみ。いいチーム、愛されるチームを目指すことも、目的として悪いことではないが、ジャイアンツは実力至上主義を貫き、必ず勝たねばならない。だから、例えばファームから選手が来たなら、比較的早く使う。それは2軍監督からの推薦を受け、こちらも求めた選手であるから。

 先日、野手の増田大を登板させたこともそう。連戦続きの過密日程となっている未曽有のペナントレースを勝つための最善策だ。今季は6月19日に開幕を迎えたが、正式に決まったのは5月下旬だった。スイッチを入れ直しての準備期間は1か月足らずで、どこかに急場仕上げで戦っている選手には尊敬の念すら感じている。我々ベンチができることは、選手の故障のリスクを最大限考慮してあげること。その信念に従って打った手に、何を言われようとブレるはずがない。

 采配の鉄則は覚悟と修正。「改むるに憚ること勿れ(あらたむるにはばかることなかれ)」という言葉をよく使う。100%成功する戦術、用兵はないものだが、それでいこうと決めた瞬間、心の中では100%だと思ってサインを出す。当然、成功もあれば、時に失敗もあり「あぁ、これは勇み足だったか」という反省も出るが、そんな自分も歓迎する。改める材料、つまり成長の余地が見つかったんだ。この年齢になっても、選手に頭を下げることだって平気だしね。プロ野球はオープン戦を含め年間160試合くらいを行う。選手、監督、コーチともマイナスの部分を肥やしにしないと、難しい職業だ。

 私は現役を引退する時に「私の夢には続きがあります」と言った。あの時、37歳。私は幼少期から、ずっと夢を追いかけて野球をしてきた。現役引退を迎えた時に「夢って終わるんだ」と思った。それがとても悲しかった。だから続きがありますって言ったんです。実は、あの時は「夢の続き」を、ハッキリ描いているわけではなかった。しかし、その後に指導者になりたいと野球を勉強し、巨人軍の監督になり、誰より多くの勝ち星を積み重ねることができたことは、夢をかなえたと言っても過言ではないでしょう。それでも…まだ私の夢には続きがあります。夢は、変わっていくものであり、追い求めることが原動力になる。永遠の夢追い人でありたいと思っている。

 それでは今の夢は何か。監督業を完全に終え、ユニホームを脱いだ時、野球から離れた時の自分がどうなるものか。その姿をひそかな楽しみとして、心の奥にお守りとしてしまってある。どういう生活を送れるのか。きっと新たな何かに挑戦するだろう。

 同じ監督という職業に就かせていただいて感じるものは、川上さんのV9という重さ。世界中の万物を味方にしなければできないのではないか、というくらいに燦(さん)然と輝く偉業であり、何て表現していいかわからないというのが正直なところです。ただ、どんなに困難であろうとも、前人の通った道であれば、追い続けたい。まずは今年のリーグ連覇、日本一奪回を目指して、邁(まい)進することを誓います。(巨人軍監督)

試合詳細
通算1066勝で巨人歴代監督1位タイとなった原監督はサインを入れた大きなボールを手に笑顔を見せる(カメラ・橋口 真)
巨人の監督別成績上位
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