フジは坂上忍にすべてを賭けるのか…2年前の史上最大の改編に匹敵、10月改編の目玉は「バイキング」の1時間延長

2017年12月のインタビューで「天狗にはなれません」と言って笑った坂上忍
2017年12月のインタビューで「天狗にはなれません」と言って笑った坂上忍
勝負の10月改編で坂上忍MCの「バイキングMORE」に全てをかけるフジテレビ
勝負の10月改編で坂上忍MCの「バイキングMORE」に全てをかけるフジテレビ

 この改編を名付けるなら、ずばり「坂上改編」だな―。7日、東京・台場の本社で行われたフジテレビの10月期の番組改編会見。その中身を聞いた瞬間、そんなことを思った。

 今回の改編率は、全日帯(午前6時~深夜0時)33・1%、ゴールデン帯(午後7~10時)22・3%、プライム帯(午後7~11時)20・7%と大規模なもの。2018年4月、「みなさんのおかげでした」、「めちゃ×2イケてるッ!」といった看板バラエティー番組を一斉に終了させた「史上最大の改編」の際の全日28・2%、ゴールデン29・8%、プライム29・5%に匹敵する高い数字となった。

 改編のテーマは「プラスの改編」。今や新型コロナウイルスによって、日々の生活様式は一変。テレビとの接触時間が増えた視聴者に向けての情報源としての、不安や疲れを癒やすエンターテインメントとしての、テレビの役割について、改めてその重要性を考え抜いた編成となった。

 席上、発表された「情報、報道番組をプラス。明るく前向きになれるバラエティー番組をプラス」とスローガンのもと、高い改編率最大の要因となったのが、俳優・坂上忍(53)がMCを務める情報番組「バイキング」の1時間に渡って放送時間を拡大しての「バイキングMORE」(月~金曜・前11時55分)へのリニューアルだった。

 現在放送中のキャスター・安藤優子氏(61)と俳優・高橋克実(59)MCの「直撃LIVEグッディ!」(月~金曜・後1時45分)は今月25日の放送をもって終了。その時間もカバーし、放送時間はウイークデーすべてカバーの3時間。坂上が1枚看板の巨大情報番組が同28日からスタートすることになった。

 進行MCとして同局生え抜きのベテラン・伊藤利尋アナウンサー(48)が5年間務めた榎並大二郎アナ(34)に代わって加入。「曜日MC」として月曜はフリーアナウンサー・高橋真麻(38)、火曜は「ブラックマヨネーズ」、水曜は「おぎやはぎ」が加わる。

 会見に登場した伊藤アナは「コロナ禍の情報番組としてスタートしますので、まずは精いっぱい務めるということに尽きると思います。日々、起きているニュースについて生放送でしゃべる。テレビマンとして、こんなに楽しいことはないのかなと思っています」と決意表明。

 VTRで登場した坂上も「『バイキング』は最初は1時間だった。それが2時間になって3時間。意気込みの前に早寝早起き。遅刻しないでフジテレビに入る。それからです」と、2014年4月、「笑っていいとも!」の後番組としてスタートして以来6年間の番組の歴史を振り返って言った。

 坂上個人に大きな注目が集まる中でのリニューアル会見だった。3日発売の「週刊文春」で報じられた番組スタッフへのパワハラ騒動。坂上自身が同日の「バイキング」の生放送で「僕の正直な感想としては、パワハラっていうのを(記事の内容は)上回ってましたね」と話したほどの激しい記事。

 それでも、坂上は「僕が絶対権力者のようにキャスティング権もフジテレビさんの人事権も握っているかのような(書き方)。ワンマンな人というような描かれ方をしているんですが、言い訳がましい言い方はしたくないけど、一介のタレントがキャスティングはもちろん、大会社の人事権を掌握できるはずもなく…」と内容を否定した。

 しかし、依然として疑惑がくすぶる中で迎えた、この日の会見。番組自体、スタッフを一新。これまでのバラエティー班から情報制作局チームが制作を担当する形となることもまた発表された。

 席上、伊藤アナは坂上のパワハラ疑惑について、「特番などで、ご一緒した印象では感じていない。(アナウンス室の)担当部長の立場で言えば、(前任の)榎並アナは坂上さんのもとで相当育ててもらった部分はあると思う。坂上さんが変に丸くなられてもいやだな」と話し、斎藤翼編成部長も「いろいろな意見を交わし、それが時には激しい議論になったなどの報告は受けている。そんな中で坂上さんからおしかりを受けることもあれば、我々、スタッフ側が意見を申し上げることもある。パワハラに該当するようなものの認識はなかったと考えている」と“疑惑”を否定した。

 その上で「お昼の時間に何が望まれるか坂上さんと時間をかけて話し合った。坂上さんにしかできない建前なしの本音トーク&ニュースショーとして生まれ変わり、『バイキングMORE』としてお願いすることになった」と明かした斎藤部長。

 そう、番組制作にあたり、編成幹部が顔と顔を突き合わせて意見交換するほど、“フジの顔”になっているのが、今の坂上だ。

 今回の改編で「直撃!シンソウ坂上」(木曜・後9時)こそ終了するものの、ウイークデー出ずっぱりの「バイキングMORE」に加え、メインMCを務める「坂上どうぶつ王国」(金曜・後7時)に「本音でハシゴ酒」コーナーのナビゲーターを務める「ダウンタウンなう」(金曜・後9時55分)と、同局の“坂上銘柄”の人気番組は数多い。

 2年前の時点で、坂上はすでにテレビ界の“モンスター”だった。民放キー局4局で全9つのレギュラー番組を持つ(当時)売れっ子ぶりに、私は「テレビ局編成トップはMC力を絶賛も視聴者は『高圧的で苦手』…坂上忍とは何者なのか」と題したコラムを書いた。

 当時の各局編成幹部に聞いた「それほど使いたくなる坂上の魅力は?」という質問への共通した答え「卓越したMC力」という言葉への分析中心につづったコラムだったが、2年を経過しても、坂上への一部スタッフや視聴者の「高圧的で苦手」という印象は変わっていないように思う。

 いや、今回の「週刊文春」の記事を見る限り、その“王様化”は、より進んでいるのかも知れない。しかし、記者は自分の目で見たものがすべて。私自身はただ1回、1対1で話した際の坂上の印象を信じたいと思う。私の感じたこと―。それは「良きにつけ悪しきにつけ自分の番組に、収録のその瞬間に、命をかけている男」ということに尽きる。

 それは17年12月、フジテレビ6階のスタジオで行われた「バイキング」5時間特番の収録直後にセッティングしてもらった坂上へのインタビューでのこと。坂上流の番組作りをじっくり観察させてもらった上で直接、話を聞くというぜいたくな時間だった。

 その直前に坂上と並ぶテレビ界のモンスターに聞いた言葉があった。「芸能界で一番すごいと思うのは坂上忍さん。私も結構、いろんなものを犠牲にしてテレビに向き合っていますけど、あの覚悟の仕方を見ていると、この人にはかなわないなと思う」―。レギュラー番組8本の人気者・マツコ・デラックス(47)が坂上を評して言った、このコメントが、ずっと頭にあったから聞いた。

 「今日の収録でも坂上さんの覚悟の強さを感じた。過去には『明日やめてもいいという思いでやっている』とも発言している。その覚悟は、ずっと持ち続けているものなのか?」

 「変わらないですね、はい」。こちらの目を正面から見つめた坂上は、その時、そう言い切った。「いい意味で、よそ者であることを利用させていただいている。よそからバラエティーの世界に来させていただいているんで、そこで当たり前のようにしがみついてもしようがないというか」―。

 4歳での子役デビューから数えると芸歴49年のベテラン俳優だが、バラエティー、情報番組のMCは専門外。だからこそ、「よそ者」として、番組にしがみつくことなく、毎日勝負をしている。一見、乱暴に響くコメント、態度だって、へっちゃらだ。この世界にしがみつこうと思っていないから失うものもないのだろう。

 3年前のインタビューでも、10時間以上の収録を終えた坂上が「すみません。いつもありがとうございます。なにとぞ一つ、よろしくお願い致します」と頭を下げて言ったので、こちらも思わず言った。

 「一見(いちげん)の記者にもそういう感謝の姿勢で接し、本気で番組を続ける限り、『バイキング』の視聴率は落ちないんじゃないですか?」―。

 その時、ニヤリと笑った坂上の答えは「そんな天狗にはなれません。はい」だったのを、くっきりと覚えている。

 そう、腰の低い、その時の対応は私の後ろにいる読者を意識しての計算づくのものだったかも知れない。その反面、自分の近未来も、じっと、冷静に見つめているゾクリとするほどの体温の低さ、冷たさも、ダイレクトに伝わってきたのを覚えている。

 坂上の行動原理、その言動の全ては自分が関わる番組をより良くするためにだけ発動している。あの日の坂上の笑顔からは「本物」だけが持つ殺気を感じ取ったし、このプロ意識こそが現場のテレビ制作者を強引なまでに惹きつけているのだと思う。

 いつでもやめてやる―。そんな思いで命がけで日々、番組作りに臨んでいるから、スタッフにも、共演者にも厳しい言葉や態度が飛び出す。そして傷つける―。私はそう思う。

 ただ、坂上も53歳。もう少しだけ、人に優しくなれればいいのにな―。僭越ながら、同世代の一個人として、そんなことも思う。なにしろ今回、フジは最大規模の改編で、坂上忍という才能に局としての未来をかけたのだから―。(記者コラム・中村 健吾)

2017年12月のインタビューで「天狗にはなれません」と言って笑った坂上忍
勝負の10月改編で坂上忍MCの「バイキングMORE」に全てをかけるフジテレビ
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請