コロナで失った夏 それでも受け継がれる「感謝の気持ちと思いやり」 埼玉栄高相撲部

埼玉栄高校の相撲部員と山田道紀監督(2列目左端、2列目右から3番目は早苗夫人)=山田監督提供=
埼玉栄高校の相撲部員と山田道紀監督(2列目左端、2列目右から3番目は早苗夫人)=山田監督提供=

 新型コロナウイルスの感染拡大は、部活動に励む多くの高校生の「夏」を奪った。4月に中止が決まった夏のインターハイを始め次々と大会がなくなっていく状況に、いたたまれない気持ちでいっぱいだった。3年生にとっては、高校最後の晴れ舞台だから。

 インターハイの高校相撲団体戦で優勝10回を誇る強豪・埼玉栄高。相撲部主将の北野颯馬(3年)は「今年はインターハイ、国体で団体優勝して、先生と早苗さんを胴上げすることを目標にしていました」と明かす。共に過ごす寮生活、そして3年間の高校相撲を支えてくれる山田道紀監督と早苗夫人。全国大会を制し2人を胴上げするというのは、代々受け継がれる同校相撲部の目標だ。それだけに「部としての目標を果たせなくなって、自分としてもとてもショックでした」と、素直な思いが口をつく。

 インターハイの中止は、一度寮が解散し栃木の自宅に戻った時に知った。「試合がなくなって、一生懸命やってきたことが果たせない…」。昨年の団体戦はベスト32。この1年、「悔しい思いがあって、また一から頑張ろうという思いでやってきた」という。気持ちが落ちても不思議ではない。ただ山田監督からは、電話で「試合がなくなっても、やるべき事は一つ。自分の目標を持って、変わらず稽古に励もう」と諭された。自宅で過ごした約2か月間、1日5キロのランニングと朝・昼・夜のトレーニングは欠かさなかった。

 選手が再び寮に集まったのは6月下旬。目指す試合がない中の再始動。主将は「コロナで試合ができないのはしょうがない。でも、自分達がやってきたことはこれからも生かせる。しっかり切り替えて頑張ろう」とチームを鼓舞した。寮生活を送る上で、感染予防も欠かせない。手洗い、うがいは徹底。学校以外の外出も禁止で、選手1人1人が小型のアルコール消毒液を携帯し生活しているという。

 コロナは、高校最後の1年という青春を奪っていった。だが北野は「今回3年生として、悔しい思いのまま終わってしまう。でもこうやってまた稽古ができて、ふつう通りの生活が送れるのも周りの方々のおかげ。家族、山田先生や早苗さんの支えがある。感謝を忘れずに、これからも頑張りたい」と周囲への思いを忘れない。同校の先輩大関・貴景勝(千賀ノ浦)は、大関昇進の口上に「感謝の気持ちと思いやり」という言葉を込めた。相撲部の部訓でもあるこの精神は、変わらず受け継がれているのだ。

 山田監督も「やっぱりインターハイがなくなったというのは、かわいそう。俺も悔しいし、さみしい」と息子同然の選手を思いやる。ただ「これで腐るなと。先に進むんだから。腐らずにコツコツやってる人は、どこかで花が咲くんだ」と、生徒には伝える。

 主将の北野は、大学でも相撲を続けるという。「たくさんのことを先生と早苗さんに、そして卒業していった先輩達にも教えてもらったので。それはこれからにも絶対生かせると思う。あと半年間しっかりやって、いい形で次の代につなげられるように頑張りたい」。3年間への感謝、そして相撲部への思いやり。コロナ禍にあっても、栄の伝統は確かに次の世代へと継承されていく。(大谷 翔太)

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