コロナ禍のボクシング興行で見えた名門ジム復活の兆し…グリーンツダ・本石会長の挑戦

興行を終えてリラックスするグリーンツダジムの(左から)本石昌也会長、矢田良太、下町俊貴
興行を終えてリラックスするグリーンツダジムの(左から)本石昌也会長、矢田良太、下町俊貴

 新型コロナウイルス感染拡大による国内ボクシング興行自粛が7月に明け、私が担当する関西でも8月9日、再開後初の客入れ興行が大阪・枚方市立総合体育館で開催された。主催は「西の名門」グリーンツダジム。本石昌也会長(44)は収容3500人の会場に観衆を850人にとどめるなど、コロナ対策に苦慮しながらも興行をやり遂げた。メインでは元日本ウエルター級王者・矢田良太(31)が藤井拓也(三迫)に5回TKO勝ちし、昨年のタイトル戦連敗から再起。翌日の紙面でお伝えできたのはここまでだが、このほか、共に地元大阪出身の若手サウスポー2選手の成長ぶりにも驚かされた。

 セミファイナルでは2017年スーパーバンタム級全日本新人王で日本ユース(24歳未満)同級王者の下町俊貴(しもまち・としき、23)が、無敗の挑戦者・18年同級全日本新人王の英洸貴(カシミ)に5回、長いリーチを生かした左ボディーアッパーを打ち込んでダウンさせ、立ち上がってきた直後の連打でTKO勝ち。圧巻のV1を決め、最新の日本ランキングでは王座挑戦資格(12位以内)のある同級10位に入った。

 また、58・5キロ契約6回戦では昨年フェザー級全日本新人王の前田稔輝(じんき、23)が、17年スーパーバンタム級東日本新人王でプロ7勝全KO勝ちの飯見嵐(ワタナベ)を相手に、左ストレートで3度ダウンを奪い2回TKO勝ち。大商大時代は日本拳法部で全国優勝の経験もある前田は、リング上でも距離感覚に優れ、鮮やかなダウンシーンを次々と演出した。

 興行の大トリを任され、快勝した矢田は「下町や前田ら下(後輩)からの突き上げを感じる。うかうかしていられない」とメインイベンターの座も安泰ではないと感じている。今夏には試合がなかったIBF世界スーパーフライ級9位の奥本貴之(28)や、タイ国籍のWBA世界ライトフライ級11位のタノムサック・シムシー(20)もおり、選手層は充実。取材を通して“名門復活”の兆しを感じた。

 1980年創設のグリーンツダジムは井岡弘樹氏、山口圭司氏、高山勝成の世界王者3人を輩出。初代会長の津田博明氏(故人)は“浪速のロッキー”赤井英和(現タレント)ら多くの名選手を育てた。だが、98年1月に津田氏が脳内出血で倒れた頃からジムは経営難に。07年2月、津田氏が62歳で死去。同年5月に高山へのファイトマネー未払い問題が発覚するなど、ジムは4000万円を超える負債を抱えていた。興行を担っていたプロモーション会社は倒産。ジムも解散寸前の危機だった。

 08年4月、グリーンツダジムは大阪市西成区のビルから立ち退きを余儀なくされ、現在の東成区へ。現会長の本石氏は、当時所属していた元東洋太平洋フライ級王者・小松則幸氏(故人)の個人マネジャーだったが、09年4月に小松氏が精神修業のため訪れた滝で事故死。「小松の代わりにこの世界で生きていく」と誓い、同ジムのマネジャーとなり、再建に全力を注いだ。14年4月、4代目会長に就任。川口裕(引退)を東洋太平洋王者に、奥本と矢田を日本王者に育てた。19年11月にはジムを株式会社化し、社長に就任。近い将来の世界戦興行を見すえ、テレビ局との交渉や銀行との取引をスムーズに進めるためだという。

 次回興行は12月に枚方市の同会場で予定。本石会長は「ボクシングの火は消さない。コロナ禍でも前を向いて進んでいく」と今後も感染対策を万全にしながら年3回の興行を開催する姿勢だ。取材記者としては是非、日本や東洋太平洋、アジアのベルトが増えていく様子や、06年の高山以来となる同ジム4人目の世界王者が誕生する“名門復活”の瞬間を見届けたい。(記者コラム・田村 龍一)

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