日本高野連と日本野球機構(NPB)が主催する「プロ志望高校生合同練習会」が30日、甲子園で開催され、29日に続いて西日本から77選手が参加した。今秋ドラフト1位候補の福岡大大濠・山下舜平大(しゅんぺいた)投手はシート打撃でただ1人、150キロを計測するなど3三振を奪った。帝京大可児(岐阜)の加藤翼投手は、直前の雷雨により室内練習場でシート打撃に登板。2三振を奪ったが、最初で最後の“甲子園”となった剛腕2人の明暗が分かれた。
非情のゲリラ豪雨だった。帝京大可児・加藤は、登板中の投手から数えて2人目にシート打撃のマウンドを予定していたが、午後3時15分頃、雷雨であっという間にグラウンドは水浸しに。1時間15分後に室内練習場で再開された。「甲子園で投げたい気持ちが強かった。室内でやるとなって気持ちは沈んだ。ダイヤモンドにすら入れなかったので悲しかった」。不運で夢はかなわなかったがシート打撃では最速153キロを誇る直球がうなりをあげた。
15球中13球が直球で、プロ注目の大阪桐蔭・西野力矢三塁手らから2三振を奪った。5人と対戦してヒット性の当たりは1本(1四球)のみ。「山下投手の直球が高校NO1と(記事で)読んだので、負けちゃいられないと思った。直球だけは誰にも負けないつもりで3年間やってきた」というプライドの発露だった。
各球団3人のスカウトは室内練習場に入ることができ、残りは球場のバックスクリーンで“リモート視察”した。日本ハムの大渕スカウト部長は「体のバランスがいい。躍動感やしなやかさがある」と高評価した。
元ヤクルト投手のユウキこと田中祐貴コーチに「楽しんでこい」と力水をつけられて臨んだ。「(今夏は)今日もこういうことになって、あまりいいことはなかったけど、プロ野球選手になってマウンドに立てるようにしたい」と加藤。その願いはきっと、かなうはずだ。(伊井 亮一)
◆加藤 翼(かとう・つばさ)2002年12月14日、岐阜・下呂市生まれ。17歳。東第一小2年から「金山クラブ」で野球を始め、金山中ではボーイズリーグの「岐阜可茂ボーイズ」でプレー。球種はナックルカーブ、スライダー、スラーブ、チェンジアップ。遠投125メートル、50メートル走は6秒1。憧れの選手は山本由伸(オリックス)。179センチ、76キロ。右投右打。
◆プロ志望高校生合同練習会 新型コロナウイルスの影響で実力を披露する場が減少した高校3年生の救済を目的に、今年初めて開催。18日までにプロ志望届と合同練習会参加届を提出した者が1回のみ参加できる。中京大中京・高橋宏斗、明石商・中森俊介両投手と同・来田涼斗外野手は、進学や社会人入りを検討していることもあり、参加しなかった。NPBスカウトのほか、大学、社会人、独立リーグの関係者も視察可能。東日本会場(東京D)は9月5、6日に行われ、41人が参加予定。