今年の夏は「本当なら、今頃五輪だったんだな」と思いながら、不思議な感覚の中で過ごしました。来年には、きっとあると信じて、延期の1年間をしっかり乗り切っていきたいですね。1年前イベントで池江璃花子選手が言った「希望」という言葉は、すごく胸に刺さりました。希望があるからこそ頑張れる。私も12月の全日本選手権を当面の目標にしながら、与えられた環境で前に進みたいです。
最近は筑波大大学院での研究の一環で、過去の自分を振り返ることに時間を費やしています。ロンドン五輪前の11~12年、リオ五輪前の15~16年の練習日誌を全て見返して、データを取っているんです。率直に、昔はよくこんなに練習できていたな、と思いましたね。重量は数字ですから、何か読み取れるのではないか、と。練習の重量と試合での成功率の関係などを分析して、何か次世代に形として残せればと考えています。
私自身で言えば、これまで過去はあまり振り返らないようにしてきました。良かった感覚は成功体験として残っているけど、昔を追い求めても体もフォームも変わっている。今の体で、どう組み立てるかの方が大事だと考えています。食事の大切さも、最近は気にしますね。小松菜はビタミンAが豊富だから毎日必ず食べようとか、鶏肉はアミノ酸が多くて筋肉を形成するには重要だとか。覚えることはたくさんありますけど、食事を作ることも楽しみとして取り組んでいます。
今は、味噌汁を上手に作りたい。味噌の甘辛や、ダシの組み合わせで味は本当に変わりますから奥深いですよね。具材は、タマネギやエノキ、豚肉などを入れることが多いです。34歳になりましたし、今までは練習だけの生活でしたけど、いずれ結婚した時に何も作れないと大変なことになるという危機感があって…。まずはベースをおいしく作れるようになりたいですね。
◆三宅 宏実(みやけ・ひろみ)1985年11月18日、埼玉・新座市生まれ。34歳。初出場の2004年アテネ五輪女子48キロ級9位。12年ロンドン五輪同級で銀、16年リオ五輪同級で銅。父・義行さんは68年メキシコ市五輪フェザー級銅メダル、伯父・義信さんは64年東京、メキシコ市両五輪でフェザー級金メダル。147センチ。